バングーナガンデ佳史扶、ついにA代表初招集。「A代表経由パリ五輪」という大岩剛監督の言葉を胸に、次回ワールドカップをめざす第二期森保ジャパン初期メンバーに【コメントあり/無料公開】

撮影:後藤勝
3月15日、キリンチャレンジカップ2023(3/24ウルグアイ戦、3/28コロンビア戦)に臨む最新の日本代表メンバーが発表され、FC東京からは左サイドバックのバングーナガンデ佳史扶が選出された。A代表への招集はこれが初めて。今回の親善試合が昨年のワールドカップ後、森保一監督率いる日本代表の初陣となる。
森保監督は会見の席上、各選手の特長を問われ、佳史扶について「左利きでFC東京のレギュラーで存在感を放っている。本人のいい特長を持って攻撃に参加出来る、セットプレーのキッカーとしても配球出来る。守備の部分は同じFC東京の長友佑都選手と比べてまだ足りないところがあるが、国際試合で培ってもらえれば代表とFC東京の戦力アップにつながる」という評価を与えた。
今回集められた26人の顔ぶれを考えれば、2試合のうちどこかで出場機会を得られる可能性はゼロではない。果たしてA代表初キャップはなるのだろうか。
◆バングーナガンデ佳史扶の立ち位置、可能性

撮影:後藤勝
佳史扶は所属の東京で昨年のワールドカップに出場した長友と直接、左サイドバックのポジションを競い、先発メンバーの座を獲得している。これが評価を高め、A代表選出に影響したことは想像に難くない。会見に於ける言葉を聞くかぎり、森保監督はパリ五輪をめざすU-22日本代表候補の世代にも、オリンピックではなくワールドカップ出場を目標としてほしいと考えていて、年齢に関係なくベストのメンバーを選んでいるものと思われる。透けて見えるのは、長期的にワールドカップ優勝という目標を掲げ、その目標に少しでも近づいていくために、2026年のワールドカップに向けて現行の代表チームを常時アップデートしていこうという狙いだ。つまり現時点で長友よりも守備の強度では下回る佳史扶を選んだことに、攻撃面での上積みがチーム力の向上につながるという考えがうかがえ、その攻撃力を発揮するかぎりは、代表に選出されつづける可能性があるということになる。

撮影:後藤勝
フィールドプレーヤー23人中、Jクラブ所属選手は5人のみ。その狭き門を通った理由のひとつに、おそらく左利きの左サイドバックという希少性がある。素材としては申し分ない。
ただ、素材のままではいられない。東京のトップチームに昇格後、現在、京都サンガF.C.ヘッドコーチを務める長澤徹コーチ(当時)、そして佐藤由紀彦コーチのもとでクロスのトレーニングを積み、攻撃面の技術を向上させてきたが、それだけで伍していけるほど世界は甘くない。A代表の場も含めて「スペイン、ポルトガルとの試合で衝撃を受けた」という世界基準の強度に近づいていくことが、今後の進路を大きく左右しそうだ。
◆代表選出囲み取材

撮影:後藤勝
──どのようなシチュエーションで代表入りの話を聞いたのか。
今日の練習前に、(長友)佑都さんに「頑張ってこいよ」と言われてなんのことかわからなかった。ちょっとは(代表選出かと)思ったんですけど、それでなんだろうなと思って練習後に小原さん(GM)からみんなの前で発表されて、ぼくも知るというかたちでした。
──どう思ったか。
正直U-22のほうに入れるかなと思って過ごしていたので……考えていなかったので、いまもびっくりしています。
──A代表への挑戦で高まる想いは。
日頃からワールドカップの舞台で活躍した佑都さんの隣で練習させてもらっていて、こういう人が行ける舞台だと見て思っていました。行ったらそういう人たちがたくさんいると思うので、楽しみです。
──どんなプレーを見せたいか。
チームでやっているプレーが評価されて選出されたと思っているので、守備をやるのは当たり前なんですけど、攻撃のところでガツガツ行って自分の特長を出していきたいと思います。
──代表入りを聞いたあと、長友選手と話したか。
そのまま「さっき言っていたのはこういうことなんですね」と話して、すごくありがたい言葉をいただきました。
──代表の場からどんなことを持ち帰りたいか?
本当に呼ばれるからには、行くだけというのは、いちばんやっちゃいけないこと。本当に消極的にならずに、積極的にどんどん結果を出すことにフォーカスしてガツガツしていきたいと思います。
──長友選手も21歳で初代表。同じ年齢でたどり着いたが。
キャンプのときに佑都さんからその話をされて「俺は21で代表入ったから。おまえも今年入らなきゃな」と言われていました。(A代表入りを)言われたときに、真っ先にそれを思い浮かべました。
──ギラギラしているか。
行くからには。いまは驚きもあるんですが、緊張はあまりないですけど、呼ばれたからにはやってやろうという気持ちでいます。
──今年、A代表に呼ばれるかなという予感はあったのか。
予感というより、U-22のほうもそうですけど、チーム(FC東京)でしっかり結果を出していればそういうふうに評価してもらえると思っていたので、チーム、チームという想いでやっていました。
──代表に選ばれるための前段階には、東京でレギュラーを獲るというのが第一だった?
そうですね。
本当に、それこそ去年ワールドカップで活躍した同じポジションの選手が眼の前にいるので、その選手から獲ることだけを考えてやっていました。
──U-20ワールドカップが中止になった段階でパリ五輪に照準を合わせたが、五輪代表とA代表の間の距離をどう感じていたのか。
まあでも、前回の東京オリンピック(2021)を見ていて、そのオリンピックで活躍した選手がそのまま前回のワールドカップ(2022、カタール)で活躍していたので、そういうのを見ていると(近いと感じた)。
日頃から大岩(剛)監督が「A代表経由パリ五輪」という話をみんな(U-22代表選手)の前でしていたので、オリンピックに出る選手はそういうレベルの選手にならないといけないんだなと思ってやっていました。
──日本代表に左利きの左サイドバックがいない状態でこれから世界と戦うとなると比較対象も世界の選手になってくるが、この世界の舞台への想いとはどのようなものか。
本当にもう、それこそワールドカップと同じ期間にぼくもU-21日本代表の活動でスペイン、ポルトガルと試合をさせてもらって自分のなかではけっこう衝撃を受けました。
それを基準にして、それからここまでキャンプも含めてやってきているんですけど、その基準に対して自分はまだまだだなと思っていますし、そっちに基準を合わせないと世界の舞台では(長友)佑都さんみたいに戦っていけないと思うので、そこは日頃から意識しています。

撮影:後藤勝
──長友選手に言われた言葉は。
まだ中にしまっておきます。
──長友選手の代表デビュー戦を見たか。
初代表の佑都さんの映像なのかわからないですけど、若いときのたぶん初代表の時の映像は見たことあります。
──どんな印象を受けたか。
自分はガツガツ行くしかないので。消極的がいちばんもったいないので、呼ばれたからには、失うものは何もないと思って、奪い取る側だと思ってガツガツ行きたいです。
──昨年の欧州遠征で受けた衝撃とは、具体的には。
具体的なことで言うと、フィジカルだったり、はめられたとしても、あっちの選手は1対1で目の前の局面を剥がせるからいいでしょという感覚でやっていて。そういうところの基準はすごい自分の中で変わりましたね。
──穏やかな印象を受けるが、今年は「ガツガツ」であったり強い言葉がある。そういう思いは強いか。
そうですね。積極性っていうところは、今年自分の中での課題としてやっていうところなので、どんどん見せていけたらと思います。
──性格を自己分析すると「穏やか」であったりするか。
そうですね、多分。そう、みんなに思われてると思うので、でもまあ、自分の中にここは絶対ってのはあるんで。そういうところは出していきたいと思います。
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