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対浦和戦最後の20分間、10分間について【レビュー/コメント】長谷川アーリアジャスール、三田啓貴、ランコ ポポヴィッチ監督_2013 Jリーグディビジョン1 第15節 浦和レッズ対FC東京_第2報(07/10)[3,651文字](2013/07/11)

J1第14節の対サンフレッチェ広島戦と第15節対浦和レッズ戦にかぎっては、「バテてるなら単純にパーツ交換の意味で疲れている選手を替えればよかったじゃん」という意味で、選手交替を敗因だと言うことはできるだろう。
選手交替とは関係なしにできることはあったはずだから、100%選手交替が原因だとは言いづらいと思うが、それでも説得力はある。

ただ、中位を脱却できない原因はどこにあるのかを書いた記事にまで「原因は選手交替」という反応がかえっている様子をみると、いよいよFC東京ファンの心も壊れてきてしまったのではないかと心配になる。さすがにすべての試合の敗因を選手交替に求めることは不可能だ。

そもそも論として、サッカーの試合で、選手交替で勝敗を左右できる割合は、かなりかぎられている。
一球ごとにセットプレーになる野球ならば、選手が駒、監督が棋士となり、監督の指示や選手交替が将棋のように作用するかもしれない。
しかしサッカーではパス一本を送る度に試合を停めることはできないし、パサーとレシーバーが互いを見つめているあいだにもほかの20人が少しずつ動いている。
サッカーの采配とは、ピッチに選手たちを送り込むまでのトレーニングでやっておくべきことが大部分だ。

初期の『サカつく』なら、試合結果が気に入らなければリセットして選手交替のパターンを何度も変えることでいつかは勝利を手にすることができたが、現実のサッカーはリセット技が効く『サカつく』ではない。

東京の戦い方の骨は、いかにラインを上げて前方向にコンパクトにし、プレッシャーをかけてボールを奪い、攻めきるかにある。
対浦和戦にサスペンションで出場できなかった加賀健一は、ラインを上げて前から行く守備のほうが、自分の持ち味が活きると言っている。
まさに韋駄天、ものすごく速い加賀の脚力なら、最終ラインのウラの広大なスペースにボールを出されても、ヨーイドンの駆けっこで追いつくことができ、つまり最後は個人勝負でなんとかできてしまう。
だから加賀を組み込んだメンバーでのハイライン/ハイプレッシャーは、かなり機能しやすい。
三田啓貴は試合後「引くのか、行くのかというところで、はっきりできていなかったところがあると思う」と言っていたが、そういう曖昧さもなくすことができる。

もちろんそのうえで体力の問題があると、選手交替を叫ぶひとも多いだろう。
対浦和戦に感しては徳永悠平の問題(後段のポポヴィッチ監督の談話を参照)があり、ベンチが動きにくかったことで、交替が遅れたのは事実だ。
しかしピッチ内に強力なリーダーがいて、いまからがんばってつないで相手をいなすぞ、最後の10分間をそれで耐えきるぞと言えば、交替カードをきらなくとも凌ぎきれたのではないだろうか。

5月25日の対鹿島アントラーズ戦での逆転負けの反省から、時間帯や試合のなりゆきによっては、戦い方を変えてもよいのではないかと、試合運びについての意見が出ていた。
だからこそ、最後の20分間を引いて守ろうとしたのだが、そこでうまく意思統一ができなかったことも、2失点して同点に追いつかれた原因のひとつだ。

対浦和戦後はミックスゾーンで得点者の話を訊いたが、のんきにコメントを起こしているような状況でもない。
ここでは勝負の分かれめについての箇所を拾っていく。

長谷川アーリアジャスールは、端的に、的確に、試合の内容を言いあらわした。

点を決めてもチームが勝たないと意味がない。
守備に関してはうまくはまっていたと思う。
攻撃もしっかりつなげるところはつないでいたし、前に行くところは行っていた。
前半も含めて自分たちのペースでやれていたかなと思う。
相手にボールを持たせる時間もありましたけど、そんなに怖いシーンはなかったかと思います。
ただね、やっぱり、いつも言っていますけれども、勝ちきれるところで勝ちきれなかったり、こういうもったいない試合はきょうだけではないので。そこはまったく成長していないと思う。もっとみんなが高い意識を持ってやらないといけないと思います。――長谷川アーリアジャスール

前半、浦和のパスコースをきるディフェンスがことごとくうまくいき、インターセプトして攻撃に結びつけていたところは見事だった。
しかし勝つことはできなかった。

90分間を通してリードを保つことができなかった点こそが問題だ。そこにはまずどういう策を施すか、どのようにして施すかという判断があり、判断の結果、遂行すべきことを遂行するにはどうしたらよいかという段になってはじめて選手交替が出てくる。

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