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【無料記事/対鳥栖戦第7報(最終)】現時点で確実なものは唯一、森重の掲げる現実主義だけ。ここに足していくしかない(2016/05/14)

いまの時点でFC東京の戦いにある確実なものとはなんだろうか。ビン・ズオンと湘南ベルマーレに勝利した直近の試合と同じサッカーを再現できなかった時点で、伸びしろを含まない現状の期待値は、森重真人の言葉から想像できるものに集約される。
「きょうの試合はベースになる試合だった」
「現実的なところを見ながらやっていかないといけない」
「土台を二年間つくって、ことしまたその上にプラスアルファをつくることがそうかんたんではないというのは、観ている方々にもわかったと思う」
まず失点をゼロに抑えること。ただし昨年のサッカーをそのまま引き継いでいるわけでもないので、守備の成功は、ここ数年続けて在籍している徳永悠平、森重真人、丸山祐市、高橋秀人の経験値に負うところが大きい。属人的な保証をベースに新加入選手を含むチーム全体に浸透させていかないといけないので、昨年の最終段階より、やや退歩していると言ってもいい。ここまで四カ月間の取り組みで、土台の上に積み上げていったらどうなるかという世界を垣間見はしたが、そこに踏みとどまることはできず出発点に戻り、いままた、一度は踏んできた数十メートル先の世界を眺めている状況だ。あるいは、踊り場的な停滞なのかもしれない。城福浩監督が言う振れ幅の喩えにも当てはまる。
得点の保証がないだけに、完封を目標にしないといけない。そのくらいの覚悟で取り組み、万が一事故的な失点があったとしてもその1失点に抑えるという試合運びをしないと、勝てる試合を引き分け、引き分けられる試合を負けることになる。いまの時点で確実なものは、失点したら勝点を獲れない、だから失点を防ぐという、森重の掲げる現実的な試合運びだけだろう。

攻撃に目を移すと、確実ではないにしろ、少し期待できる要素はある。サイドから崩すやり方でチャンスをつくれることは、対鳥栖戦後半44分から45分にかけての場面などで確認できた。ただこれも、前からプレッシャーをかけてよく走るサッカーができているときでも水沼宏太がいたベトナムの対ビン・ズオン戦と対湘南戦ではサイドをえぐっていったときの脅威に差があったように、未知数な部分が多い。攻撃の発展を考える最初の取っ掛かりにはなるので、継続してやっていくしかない。ムリキのコンディションが上がってスーパーになるかどうかは夏の到来を待たないとはっきりしないが、そうなったときのために、できるだけ土台を築いておく必要がある。

気になるのはクラブ全体の覇気だ。いまはACLラウンド16が控えているのでファンも緊張を解いていないが、二巡めの対全北現代モータース戦、対ヴァンフォーレ甲府戦、対アビスパ福岡戦、そして対サガン鳥栖戦と、不安になる試合を見守りつづけてきて、かなり疲弊しているはず。前述の守備と攻撃の最低限の部分を確かなものにしていくだけでもそれなりの時間が必要なのに、今後の結果次第では、そこまで見守っていくだけの気力を保てなくなる。
もし戦い方を根拠に監督を決めたのなら、一時的にせよ戦い方を変えている現状は、論理矛盾になりかねない。しかし、戦い方にかぎらず人物を信頼して決めたのであれば、そこに矛盾はない。一度現体制で行くと決めたのなら、ファンの猛反対に遭ったとしても守りきるくらいの覚悟がないと、土台を築く地点までも進めないかもしれない。この危機を乗り越えられるか否かは、いかにクラブメンバー間の齟齬を減らせるかにかかっているように思う。

 

 

 

 

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