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【無料記事/対サガン鳥栖戦第5報】アサリシステム?ヒデトシステム?青赤の伝統に基づき、職人が不振を払拭する(2016/05/14)

振り向けば浅利、という時代があった。
かつてのFC東京は、調子が悪くなると浅利悟を中盤の底に起き、守備力を上げて成績を安定させていた。ファーストチョイスではないのにいつの間にか「浅利システム」を操る主役になり、己をサブに置いてきた監督に対する愚痴ひとつなくチームを助ける姿が恰好よかった。

いま、時代は下って「秀人システム」がおおいに機能している。
アギーレジャパンに招集された森重真人がアンカーを任されたとき、ポジションの印象を問われて「高橋秀人がやっているポジション」と答えたことが記憶に新しいが、けだし名言だ。ここが務まる選手はなかなかいない。

4-4-2と4-3-3を併用しながら結局は4-4-2に落ち着いた城福東京、ボランチは米本拓司とハ デソンの構想でスタートした。ハ デソンの負傷離脱を境に、ACLグループステージとJ1の初戦を落としたあと、ACL第2戦の対ビン・ズオン戦で高橋秀人に出場機会がめぐってきた。「ACL要員」が大半を占めたメンバーが何気なく勝ち、チームを軌道に乗せると、高橋の居所はベンチやJ3になった。

いよいよ後がなくなったベトナムで、再び高橋に出番がめぐってきた。またもビン・ズオン。役どころはかつての浅利のように、ドイスボランチの一角に入りながら守備を基調にバランスをとることである。ここで危機を未然に防ぎまくった高橋はつづく湘南ベルマーレとの試合でついにアンカーとしてバイタルエリアを締めた。直近の対サガン鳥栖戦にも先発し、これでスターティングメンバーに名を連ねてから三試合負けなしだ。

しかし英雄視する意見には同調しない。「高橋選手が出始めてから2勝1分けだが、何か変わったところは?」という質問が導き出そうとした答えは、チーム全員の努力を訴える言葉に取って代わられる。
「個人的には特に感じないのですけれども、選手たち、スタッフ全員が、いま厳しい状況を踏まえたうえで戦う姿勢を見せていこうということが、記者のみなさんにはそう映っているのかもしれません」
自己アピールもほどほどに、チームに貢献する。職人気質と言ったらいいのだろうか。この男はJ3でも若者たちを気にかけていた。

それまでも中盤守備に冴えを見せていた高橋を“ワンツー大好き/攻撃マン”ランコ ポポヴィッチがフォアリベロとして再発掘し、“ひたすら対策/守備マン”マッシモ フィッカデンティ監督がアンカーに据えた高橋秀人。4-4-2フラットのドイスボランチで出場機会がなくなりかけたが、ことしも気がつけばアンカーが定位置となり、昨年の光景に回帰している。

「FC東京として結果を残していくことが第一の目標だと思うので、そういう現実的なところを見ながらやっていかないといけない」
「きょうみたいな現実的なサッカーをベースにやっていかないと、いつまで経ってもいつものFC東京になってしまうのではないかと思っています」
森重の言葉である。勝点1を積み重ねるといつの間にか上位にいるという現象なら、既に経験済みだ。職人たちの堅守が綻びを見せないなら、このあとのV字回復も夢ではないのかもしれない。

 

 

 

 

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