デイリーホーリーホック

「クラブの歴史を紡いだOB選手らが続々登場!秘話とともに当時を振り返る『レジェンドトークイベント』」【HHレポート】※無料記事

【写真 米村優子】

クラブは創設30周年に記念して、これまでの軌跡を辿る「レジェンドシリーズ」を実施中。
その一環として、3月のホームゲームで歴史を紡いだOB選手らによる「レジェンドトークイベント」が開催されています。
2012~2021年まで水戸の選手として在籍し、クラブやチームの内情をよく知る細川淳矢CRCの軽妙なトークとともに、激動の時代を駆け抜けたOB選手らの秘話が明かされる注目のイベントとなっています。

【写真 米村優子】

3月16日の徳島戦でトップバッターとして登壇したのは、2019~2020年にセンターバックとして活躍したDF瀧澤修平さん。
瀧澤さんと言えば、プレーオフ進出が懸かった2019年の最終戦での得点シーンや涙のヒーローインタビュー。
当時のセンターバックコンビによって白熱した大一番の舞台裏が明かされる、またとない機会でしたが、なんと細川CRCが移動車のガス欠で到着が遅れるアクシデントが発生。
急遽、スタジアムDJの寺田忍さんがMCの代役を務めるというイレギュラーな状況の中、イベントがスタートしました。

取手市出身の瀧澤さんは小学生時代、ホーリーホックの選手にスクールで教わった経験があり、「このチームに入れるんだ。このエンブレムを付けられるんだとすごく嬉しかったです」と加入が決定したときの喜びを語ります。
たとえサブメンバーだったとしてもチームの勝利を心底から願い、一体感を持って戦った2019シーズン最終戦。
待望の先制点を獲得した後、印籠を掲げるゴールパフォーマンスで会場を盛り上げましたが、「細さんに言われて、よく分からないままやっていました」と実際は戸惑っていた裏話で会場の笑いを誘います。
同試合で心に残ったシーンは、「試合終盤のザワザワ感」。
「勝っているけれども、プレーオフに行けるかどうかという状況が選手にも伝わってきました。ああいう雰囲気は、あの一戦しかありませんでした」と回顧します。
激戦を終え、他会場の結果待ちをした後、ピッチレポーターから7位になったことを伝えられた瀧澤さん。
気持ちの整理がつかぬままインタビューが始まり、込み上げる涙によって言葉に詰まっていましたが、「サポーターから『泣くな!馬鹿野郎!』と叫ばれて、涙がスンッと引っ込んで喋れるようになりました」と冷静さを取り戻せたようです。

【写真 米村優子】

そして話題は、「尊敬する先輩の一人」という細川CRCのエピソードへ。
沖縄キャンプで同部屋となった細川CRCが浜崎琢磨選手(ヴェルスパ大分所属)と一緒に仲睦まじく寝ていたことや、茂木駿佑選手(愛媛FC所属)が細川CRCの携帯電話を天井に貼り付けて隠すイタズラをしていた話などから、当時から愛されキャラであったことがよく分かります。

瀧澤さんは2022年にテゲバジャーロ宮崎へ移籍し、2023年はつくばFCに所属。
2020年から膝の故障が続き、さまざまな手を尽くしましたが、昨シーズン終了と同時に現役引退をしました。
「『これだけやったんだから』と納得して、スパッと辞められました」と清々しい表情で語ります。
現在は営業職のサラリーマンに転身。毎日スーツ姿で渋谷のセンター街を走って、妻と愛娘が待つ家路についているそうです。
「思った以上に大変。これまでサッカー選手として接すると喜ばれていたので、テレフォンアポイントで迷惑がられることが新鮮」と元プロ選手ならではの会社員一年目の印象を述べていました。

【写真 米村優子】

楽しいイベントが終盤に差し掛かると、細川CRCが平謝りしながら到着。
残された時間内で少しでも秘話を喋ろうとする細川CRCは、キャンプ中に瀧澤さんの魚のように口をパクパク開く独特の就寝姿が伝染したこと、本の速読が得意なことを早口で披露。
トークの合間に自身のガス欠についての余談を入れると、「その話、もういいよ!」と瀧澤さんに突っ込まれて、会場の爆笑をさらいました。

最後は、城里町民と共同使用するアツマーレのジムで生まれた、常連の町民との思い出話となり、移籍後も野菜を送ってもらったり、シーズンオフ中は黒川淳史選手(町田ゼルビア所属)と一緒に自宅で食事をご馳走になるなど、温かな交流が続いていると述べていました。
瀧澤さんは「レジェンドと呼ばれるのは畏れ多いですが、ここで引退の挨拶ができるのは良い機会。2019年は忘れられないシーズンですし、サッカー人生で一番濃い時間を過ごしたチーム。最後に挨拶ができて幸せです。水戸ホーリーホックをこれからもよろしくします!」と笑顔で締め括りました。

【写真 米村優子】

3月24日は、2016~2018年に所属し、細川CRCとセンターバックを組んだ福井諒司さんが登場。
細川CRCが「マブダチ」と呼ぶほどプライベートでも親交が深い二人は、福井元選手が左、細川CRCが右とセンターバック時のポジションで着席。息の合ったトークを繰り広げました。

自宅が近所だった水戸在籍時、一日置きに交互で車を出し、アツマーレまで相乗りしていた二人。
福井さんの車内ではドラえもんのオープニング曲、細川CRCは福井さんの姉が持っていた英会話のMDが流れていたことを懐かしそうに振り返ります。

【写真 米村優子】

そして、水戸市内の飲食店などで昼食を食べていたホーリーピッチ時代は選手の中で勝ち飯があったことを明かし、「『絶対に勝たなければいけない試合』の前は、麺屋むじゃき(水戸市東台)のラーメンをみんなでこっそり並んで食べていました。本当に8試合ぐらい負けなかった。是非みなさんも試合前に食べてみてください」と勧めていました。

オフ前は二人で一緒に飲んだ後、カラオケで点数を競うのが定番コース。
福井さんの十八番は細川たかしさんの「北酒場」や美川憲一さんの「さそり座の女」で、「顔も声もめっちゃ似てるんすよ」と細川CRCが振ると、顔真似をしながらワンフレーズを歌い上げ、会場は拍手と笑いに包まれました。

2021シーズンで12年間のプロ生活に終止符を打った福井さん。そのセカンドキャリアは学校の教師です。
「これまでサッカーで成長させてもらったものを生かしたい、サッカーしかして来なかったから違うことをしてみたかった。子どもたちに何か与えられるかなと思って学校の先生になりました」と教育の場を第二の人生に選んだ理由を語ります。
細川CRCは当時、その選択に驚いたようで、「『嘘でしょ!?』と言ったら、『グレートティーチャーフクイや』って(笑)。絶対にGTOに憧れてただけでしょ?」と指摘すると会場は爆笑。
「働き始めた頃は何にも分からなくて申し訳なかったけれど、周りの人がみんな助けてくれます。ミスしてもみんなで奪い返す。サッカーと一緒です」と教師生活を評していました。

【写真 米村優子】

水戸時代の印象深い試合は、2018年アウェイのアビスパ福岡戦。
「左サイドバックで出場し、絶不調でミスばかりが目立った」という試合で相手のスローインをヘディングしようと試みたところ、細川CRCの顎に7針の怪我を負わせ、自身も頭頂部から出血。
包帯を巻き、水泳キャップを被ってプレーを続行しましたが、やむなく途中交代へ。
その際、イレギュラーな状況に動揺していた井達也トレーナーから「細さんに水泳キャップを渡して!」と告げられ、不思議に感じながらキャプテンマークを託すがごとく手渡したそうです。
「映像を見返したら、『何これ?』って(笑)。細さんは頭を怪我していないのに。ただ水泳キャップを被っているサッカー選手だった(笑)」と試合後に爆笑したアクシデント&珍エピソードを振り返りました。

サッカー選手は怪我がつきもの。福井さんは前チームで出場機会を失っていた2016年夏に水戸へ移籍しましたが、当時の西ヶ谷隆之監督のハードなトレーニングで肉離れを起こし、テーピングで誤魔化しながら必死でスタメンを勝ち取った苦労話を吐露。
守備の要となるセンターバックの二人は、試合中に何度も前歯が折れた話も打ち明けました。

その他、水戸のレジェンドの一人、田中マルクス闘莉王元選手と対峙した二人が、競り合いでヒートアップし、「男というものを(本間)幸司に聞いておけ!」と叱咤された話や、細川CRCがチームを引き締めるために福井さんを槍玉に上げて逆ギレされた話にも客席から笑いが起こっていました。

福井さんの在籍時、指揮を執った西ヶ谷監督と長谷部茂利監督。
「ガヤさん(西ヶ谷監督)は整理された守備をしていて、チームで守ることやセンターバックの役割など戦術を教えてもらいました。当時はまずは守備から始まるサッカーをしていて、周囲も守備をしてくれるので失点を減らすこともできていたと思います。シゲさん(長谷部監督)は真っ直ぐでしっかりしてる方。出場数が減っている頃、フォーメーション練習で『ちょっとアレンジしてアピールしたろ』と思って全然違うことをやったらパスがつながらなかった。『やるなら成功させてくれ』と言われましたね。正しいし、ハッキリしている監督。自分が間違えていることが、分かりやすかったです」とそれぞれの印象を語ります。

【写真 米村優子】

最後は水戸サポーターへ向けてメッセージ。
「色々なチームに行きましたが、すごく密着していてアットホーム。すごく支えてもらった記憶がありますし、負けているときも応援してくれて、勝っているときも一緒に喜んでくれました。結果が出ないときでも、是非選手を応援していただきたいです。悪いときでも周りが明るくやってくれると、選手は本当に申し訳ない気持ちになる。ブーイングも大事ですが、『こんなに負けて結果が出ないのに、それでも応援してくれるなんて』『やらないといけない』と選手は思っています。勝てるようにみんなで盛り上げて欲しいです」と呼びかけていました。

今年から千葉県内の学校で教鞭をとる福井さん。
「自分もまだ成長しないといけない。できることがあるならば、水戸の力になっていきたいです」と語って、約30分のトークショーに幕を下ろしました。

サッカー選手としての喜怒哀楽や、水戸ホーリーホックで過ごした充実の時間を感じられる、聴き応えたっぷりのレジェンドトークショー。
3月30日の鹿児島戦でラストを飾るのは、2009~2012年に所属したFW吉原宏太元選手。
就任2年目の木山隆之監督率いるチームにクラブ史上初となる元日本代表選手として加入し、柱谷哲二監督時代を支えた立役者です。
一体、当時のどんな裏話が打ち明けられるのでしょうか。当時のチームを知る方は必見のトークイベントとなりそうです!

◯レジェンドトークショー
日程:3月30日(土)  鹿児島ユナイテッドFC戦
出演:吉原宏太さん
会場:ケーズデンキスタジアム水戸 場外イベント広場ステージ
時間:12:15~(約30分)

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