デイリーホーリーホック

「第28回定時株主総会後記者会見全文 『過去最高売上を記録』『広告料収入・入場料収入・物販収入・スクール会員数過去最高を記録』『スタジアム建設の現状』」【ニュース】※無料公開

【写真 米村優子】

小島耕社長
まずは、たくさんの皆様にお集まりいただきましてありがとうございます。本日午後2時から第28期決算及び役員人事について定時株主総会を行われまして、新たに取締役の選任ございまして、私が引き続き代表取締役社長として株主の皆様から再任いただきましたことを改めて報告を差し上げた次第でございます。また、取締役の人事に関しましてはリリースの通りでございますけども、今回は2名が退任しまして、新たに3名の取締役を迎えております。常勤の取締役に鈴木郁恵と市原侑祐が新たにメンバーに加わっております。社外取締役で磯﨑拓紀氏が新任しました。執行役員として引き続き市原と鈴木にはその任に当たってもらいます。
第28期の決算報告を最初にご説明を差し上げます。そしてその後、たくさんの皆さんがご興味あると思いますけども、スタジアム建設に向けての進捗状況をご説明差し上げる次第でございます。

昨年の株主総会の時に2023年から25年の3カ年の売り上げ計画というものをお出ししました。まず、2023年が11億、24年が12億、25年が13億6000万を目指すという計画の下で3か年計画を立てさせていただきました。今期の総売り上げは11億413万9000円ということで準利益555万7000円ということでございます。なんとか2期連続の黒字を確保できたのですけども、そこに至るまではここ1番マイナスの36.5%と入っておりますけども、Jリーグの構造改革によってJリーグの分配金がJ2クラブは約5000万から6000万の間で減らされているという中で、非常に厳しい経営の時期であったことは事実でございます。
営業収入が11億400万、営業費用が10億9900万というところで500万の黒字でございました。 経営規模の推移は10年間の間に213%増となり、初めて10億を超えた昨年からも顕著に数字を伸ばしておりまして、11億という決算を達成することができました。本当にこれは多くのステークホルダー、ファンサポーターの皆さんのおかげだと思っております。 事業別の内訳は、先ほど申し上げました通り、Jリーグ構造改革によってJリーグへの配分金が約5000万減少している中でのスタートでした。非常に苦しい経営状況であったことは事実ですけども、なんとか黒字に転換できたことは本当に良かったかなと思っております。

40社の新規および増額の契約

そんな中で、この近年1番大きく数字を伸ばしてるところで言うと、広告料収入がございます。 昨シーズンは5億7446万円ということで、過去最高の売り上げになっております。2年前にJX金属さんをトップパートナーとしてお迎えして、そこからも順調にパートナーの数が増えております。昨期は約40社の新規及び増額の契約がございまして、現在は194社のオフィシャルパートナーの皆さんにお支えをいただいてるところでございます。

リーグ全体では98%の入場者数の戻しの中で、実は我々はコロナ前の時に比べるとまだ68%の戻しであり、まだ限定的な数字ではあるのですが、入場料収入自体は過去最高を記録しております。チケット代も値上げしてる中で、本当に多くの皆様にクラブをお支えいただいた結果が、過去最高の入場料収入につながったと思っております。

また、物販収入に関しましても底堅いファンベースがついてきた結果かと思いますけども、2023年期は過去最高の9546万円という過去最高の売り上げです。
我々が会社を経営する上でやはり未来への投資もすごく大事だなと思っておりまして、サッカースクールの会員は昨年時点では日立校、北茨城校が新設されて7拠点となり、今年は春から笠間校も開校しまして今は8拠点になってるんですが、今年の4月から新しい期になって約700名のお子様が我々のサッカースクールに通っていただいています。かなり顕著な数字を表現できてるかなと思っております。

招待券比率は24.4%に

トピックスで言いますと、今年いくつかゲーム始まって順調に客単価も伸びている中で、招待券比率に関しては、2019年はプレーオフ まであと1ゴールというところまで迫ったシーズンでしたけども、その年が全体の38.6%。その前の年が41.2%、 試合によっては55%から60%ぐらいの招待券比率の試合がありました。私はコロナ禍の真っ最中に経営を託されましたが、しっかり我々の会社の経営の基盤を入場料収入から作ろうということで、まずは招待券自体を減らして、パートナー各社、株主、サンクスマッチのパートナーの皆さんらにしっかりとしたメリットを生み出すためにお配りして、今までの無作為的な招待券の配布をやめた経緯がございます。その中で、今年のホームゲーム6試合経過時点の数字ですけども、招待券率は24.4%となりました。ここから減らすことはなかなか簡単ではないので、しっかりとコントロールしながら、お客様もまたスタジアムに戻していきたいという課題がございます。

そんな中で、ここ数年は経営自体の売り上げが伸びてきています。私も2019年に社外取締役、常勤取締役で着任させていただいた時が6億3000万という数字でした。本当はJ2の中でも最下位くらいの売り上げ規模で、非常に苦しいところだったという記憶がございます。各クラブの決算は今週出ていますが、おそらく20チーム中、13番、14番ぐらいの順位なんじゃないかなと思っております。

なかなか近年は競技成績が上がらず、多くのステークホルダーの皆さんに非常に苦しい時間を過ごしていただいていることを、本当に心苦しく思っております。 少し言い訳のようになるのですが、経営規模の推移で言いますと、トップチーム全体としては、あまり投資がし切れていません。選手人件費のところもですね、大体30名で割ると、1人辺り600万ぐらいの数字でございます。これも10年前に比べると約1.5倍にはなってはいるものの、まだまだやはりJ1を安定的に狙う、プレーオフに入っていくためには、少し厳しい数字なのかなと思っております。

トップチームへの投資がはじまるフェーズへ

じゃあ、なぜ売り上げが伸びているのに、トップチームの現場に投資できていないんだ?ということでございますけども、私が着任した2019年はまだフロントスタッフが13名しかおりませんでした。はっきり申し上げまして、会社としては脆弱な体制で、すべてのスタッフが専任の業務はなく、営業兼運営とかそういった兼任のスタッフばかりで、なかなか業務自体が前進できない、推進できないっていう状況でございました。そんな中、コロナに突入したところもあったんですけども、売り上げが伸びた分は、まずはフロントスタッフに投資しようというフェーズであります。現在は27名のフロントスタッフが在籍しております。そんな中で、ある程度安定して収益を上げられる体制もできてきています。もちろん、まだまだ足りてない部署もありますし、まだまだ我々は伸びゆくために、フロントスタッフに投資したいっていう思いも僕はあります。まずはフロントスタッフの基盤が整った中で、いよいよトップチームの競技成績に返還すべく、トップチームへの投資がはじまるフェーズになって来ているのが、私の経営の所感です。じゃあ、いきなり投資すれば結果が出るのか?という世界でないことは、皆さんご存知の通りかと思います。しっかりとトップチームの現場にも確固たる投資をして、しっかりと結果を出していきたいと思っております。

J1昇格トップチームの選手予算条件として、いわゆる責任企業を保有していない地方市民クラブの2017年から直近6年間のJ1に昇格したクラブの売上高及びトップチーム人件費を見ても、やはり今の我々よりも予算が多いクラブがほとんどです。プレーオフが開催されている2017年から直近の4年間の地方市民クラブの売上高、トップチームの人件費は、2022年の熊本さんが躍進して、 もう1勝すればJ1という年があったかと思いますけども、この年は約10億を切るぐらいでプレーオフに入っております。ですので、我々としても今11億の予算になった中で予算が足りないというのは、もしかしたら言い訳になっているかもしれません。今日は不在ですけども、GMの西村卓朗と常にトップチームがどうやったら勝てるのかっていうところのフェーズに会社が変わってきてることを認識しながら、次のステップへ歩んでいるところでございます。

スタジアム建設について

スタジアムの進捗に関して、ここでご報告を申し上げます。スタジアムは、2019年に我々のトップチームが躍進をしてですね、もしかしたらJ1に上がるかもしれないなんていう機運の中で、最終節の少し前に前任の沼田邦郎元社長が記者会見をした記憶がございます。私も隣に座っておりました。そんな中で、コロナもありまして、なかなか事業計画が進まないところがあったんですけども、その時の記者会見で我々が目指す姿としては、民設民営でスタジアムを立てたいという思いをこの地域の皆様にもご説明したのは記憶に新しいかと思います。
2022年に実施したクラウドファンディングで約1500万円の資金を皆様から集めさせていただきました。これを元に2002年10月に発表したコンセプト案に基づいて、複数の有識者と事業計画書を策定し、水戸市に提出をしており、茨城県を含めた行政内協議を行っていただいております。
この春から施行しました水戸市の第7次総合計画の詳細資料の217ページの中に、水戸ホーリーホックと茨城ロボッツがさらに活躍する環境作りとして、『リーグ基準にあった施設整備に向けた応援体制の充実』という文言が掲載されました。本当に我々にとっては1つ大きな前進かなと思います。
そしてリーグ側とも現状を常に報告することで、必要に応じた行政業務へのサポートや他クラブの建設事例のプロセスの開示、協力体制などを構築しております。リーグとも常に密なコミュニケーションを取って、我々が新たなスタジアムを手に入れるということを目標にやっております。

今後の方針としては、2019年に民設民営でのスタジアム建設構想を発表しましたが、民営のみでの建設は見直しをしようと思っております。茨城県や水戸市を中心とするホームタウン市町村と協議を重ねながら、公営での建設を視野に入れた建設方法に切り替えてまいりたいと思っております。
背景としては、昨今の建設資材コストの高騰、一般企業に定められている時間外労働の上限規制が2024年4月から建設業にも適用されたことによる人件費高騰などが挙げられます。具体的には、用地取得交渉や建設予定地の周辺道路を含めたインフラ整備などには、行政及び省庁関連の補助金や助成金等の資金協力が必須であるということも、我々はいろんな調査で認識しております。建設方法においても、資金調達状況とライセンス基準に合わせて段階的な建設を検討せざるを得ないっていう状況になっているということを認めております。

また、建設候補地に関しましては、現段階では具体的な場所を申し上げることはできません。ただし、複数建設候補地を検討した結果、水戸市との建設候補地の絞り込みは完了しております。新スタジアム建設に向けた今後のスケジュールは既に皆様の資料にお渡しした通りなんですが、昨年度中に事業計画を作成し、建設費用や用地取得の水戸市、茨城県との協議や推進をすでにしております。2024年は計画予定地を発表し、2025年設計、26年着工、28年竣工を目指して、引き続きスタジアム建設に向かっていきたいと思います。

質疑応答
Q.新スタジアムについて、水戸市との建設候補地の絞り込みが完了しているということは、水戸市に建設することで決定したということでしょうか?
「現時点で協議を続けているのは水戸市ということです」

Q.入場者数が増えていないのに、チケット代が過去最高になった要因は?
「シンプルにチケット代の値上げをしたことですね。ただ、値上げに関していろんなご意見をいただきました。客単価を下げて、多くの人にご来場いただくというご意見もあります。そういった意見も踏まえて、ケーズホールディング様に席を買っていただき、小学生以下の方を無料にするサービスに加え、今年からはJX金属様がTEENS SEATといって県内の中高生をご招待することとなりました。また、OVER65PASSという65歳以上の方に向けた施策をサポートしていただいております。我々としてはパートナー企業や一般の方も含めて、お金を払って試合を見に来る人を増やして観客動員を戻していきたいということを念頭に置いて取り組み続けております」

Q.建設候補地は1か所に決まったのでしょうか?
「現時点で具体的な候補地を申し上げることはできないのですが、これまで複数候補地を検討した結果、水戸市との候補地の絞り込みができたということです」

Q.スタジアム建設はこれからどんな段取りがあるのでしょうか?
「まずは土地の取得。その先にある建設の原資を誰がどのように立てるのかという議論になっていきます。たとえば、スタジアムを建てた後の事業計画が本当にやっていけるものなのかなどについて議論しながら次のステップに進んでいきます」

Q.ケーズデンキスタジアム水戸を改修する選択肢はないのでしょうか?
「それを水戸市にお願いする考えは今のところクラブにはありません」

Q.新スタジアム建設計画についてですが、22年10月時点では民設民営のスキームを検討しているとのことだったのですが、今回公設公営になるということでしょうか?
「公設の後の言葉はどうなるかは分かりません。ただ、民設では厳しいということですね。はっきり言えば、19年から民設民営を目指していましたが、建築資材費の高騰やその後の運営などを考えた時に民設民営は現実的じゃないんじゃないかと。この結論に至るまで、さまざまな調査をしました。その結果、我々としては公的なものに頼らないといけないという方向性となりました」

Q.売上高について戻りたいのですが、現在スタジアムではキャッシュレスを進められていると思いますが、実際の影響は?
「グッズ、チケット、グルメに関して今年から完全キャッシュレスとして運営させてもらっています。昨年までは現金もOKでした。キャッシュレスに振り切りまして、売上がどこまで上がっているかということに関して、現段階では非常にいい形で上がっています。開幕戦において、昨季とほとんど同じ観客数だったのですが、スタジアムグルメは昨季比1.8倍、グッズは1.35倍の売上でした」

Q.なぜキャッシュレス化に踏み切ったのでしょうか?
「メリットとしてはいくつかあります。顧客データが残ることがまず一つ。スタジアムに来てからどういうアクティビティーをされたかが分かります。それと、飲食売店の行列は我々の課題の一つでした。敷地がそんなに広くないですから、出店できる店舗が限られている中、オペレーションの時間を上げることが各店舗に求められている中、オペレーションスキルが上がってきているところもあります。ただ、まだまだ周知不足のところがありまして、特に高齢者の方から『なぜ現金を使えないんだ』というお声をいただくこともあります。実際は現地でプリペイドカードに替えていただくというサービスも展開している中、まだまだ広く周知させることができておらず、お叱りの言葉を受けることもあります。これも他クラブ事例の中で我々は進めさせていただいているのですが、そういった声も時間とともに小さくなっていくと考えています。我々としてはそういった中で順調に浸透してきているという実感があります」

Q.スタジアムの件ですが、インフラではなく、建設自体を公設にするということなのでしょうか?
「そうですね。公設であることが必要であるクラブになることが大事だと思っています。何が必要かというと、スタジアムが必要であることをしっかりクラブがアピールしないといけない。そのためにも機運を高めることが求められる。その一つは競技成績。やはり、J1に行けばスタジアムが必要になるという機運を高めないと、単純にスタジアムが欲しいと言っても難しいと思います。このあたりは経営の方向性としても、我々がこの地域で夢のスタジアムを手に入れるのであれば、何が必要かということを考えると、トップチームの競技成績は必要になってくると思います」

Q.沼田邦郎会長が退任となりました。水戸ホーリーホックの歴史において、非常に大きな存在だったと思いますが、あらためて沼田会長の存在は水戸にとってどんな存在だったのでしょうか?
「30年のクラブの歴史の中、沼田に限らず、多くの方に関わってもらって、今があると思っています。今、多くのスタッフがクラブに入ってきています。コロナ禍の20年以降にクラブにジョイントしたメンバーが3分の2となっています。そういう中でこのクラブが歩んできた歴史や苦しかった過去を常に感じながら進んでいかないといけないと思っています。そういう意味で沼田は12年社長の期間があり、苦しい時間が長かった。水戸ホーリーホックが地域に浸透していない中、奔走し続けてくれました。僕らが今、いろんな新規事業や海外クラブとの提携ができるようになっているのは、沼田が固い地盤を作ってくれたからだと思っています。なので、先ほど株主総会でも沼田が退任の挨拶をしまして、非常に胸に刺さる言葉がたくさんありました。非常に感謝しております。とはいえ、今後も一般社団法人の代表理事として残りますし、我々としては引き続き、よきアドバイスをくれるファミリーであってほしいと思っています」

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ