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【無料記事】想定外の攻城戦。圧倒するも金鯱城を崩せず……2023シーズン開幕節・名古屋戦マッチレビュー

 

▼カウンターの脅威もVARに救われる

先制した名古屋は、あっさり引いてしまった。3トップがプレスに行くことは行くが、2度追いや3度追いはせず、両ウイングバックも早めに最終ラインに入って自陣で迎撃態勢を取った。おかげで最初のプレスさえ外せば名古屋陣内までスムーズに攻め込めたが、その先は容易ではなく、ペナルティーエリアに近づくことも難しかった。「引いて裏のスペースを消されて、足元に誘導されて、縦を切られて下げさせられた」(坂本)、そのくり返しだった。2019年からマッシモ・フィッカデンティ監督に守備を叩き込まれ、昨季はJ1リーグ最少失点タイを誇る名古屋の守備は、その辺りは名人芸と言えるものがあった。

その守備から、今季の名古屋な超強力3トップによるカウンターがある。17分、名古屋は中盤から最終ラインに下げたボールを丸山祐市が1タッチで横浜FCの最終ラインの裏に蹴ると、抜け出したユンカーが見事なトラップから永井堅梧の横を抜いてゴールに流し込んだ。正直、この瞬間はズルズルと大量失点の展開を覚悟した。しかしVARの結果、オフサイドの判定に命拾い。横浜FCの選手は誰もオフサイドをアピールしていなかったから、狙って取れたものではない。VARがあって、J1で本当に良かったと思える場面だった。

 

▼前半のボール支配率は70%超

名古屋が引いて守りを固めたため、横浜FCがボールを握った。永井堅梧も積極的にビルドアップに参加し、落ち着いたボールさばきと正確なキックで彼のストロングポイントを示した。前半のボール支配率は74%だが、決定機と言えるものはなく、29分に三田のループパスから小川航基が難しいボレーシュートに持ち込んだ場面くらい。ただ、前線から激しいプレスをかけてマイボールのスローインにしてからのプレーだったことは、今季の取り組みが結実した場面と言えた。

ただその場面以外は、ボールを奪ってカウンターを仕掛ける名古屋のほうが多くチャンスを作った。こうなると、何のためにボールを保持しているのか分からなくなる。こちらのボール保持率が上がれば上がるほど、名古屋にカウンターのチャンスを提供しているような状態だ。昨季終了後にボール支配率と勝敗の関係に関するコラムでも書いたように、昨季はボール支配率が6割を超えてくると勝率はガクッと下がった。7割近くもボールを持つと、2試合とも大量失点で負けている。何とか抑え続けたガブリエウとンドカ・ボニフェイスの奮闘を讃えたい。

 

▼攻撃に迫力が出た後半

ハーフタイム、四方田修平監督は「シンプルに前に人数を割いていく」ように指示。さらに「スペースがない中でも背後を狙っていくこと」と伝えた。さらにリスクをかけたわけだが、この積極姿勢は吉と出た。ペナルティエリア付近に人数をかけ、細かくつないで52分に潮音と航基が連続してシュートを放った。もちろんリスクも高まった。54分、前線に人数をかけてプレスに行ったところ、名古屋はGKランゲラックのフィードが永井謙佑に通る。そこから擬似カウンターの形で攻め込まれ、完全に失点モノの場面だったが、シュートが幸いにも枠を外れた。

それでも横浜FCは攻撃の手を緩めず、63分に新10番のカプリーニと、昨季は切り札として活躍したスピードスター山下諒也を投入。名古屋もその4分後、かつて横浜FCに所属した野上結貴と、レオナルドをピッチに送る。CBが本職の野上が右ウイングバックに入る、守備固めと言える交代だ。カプリーニと山下はゴールへ向かう姿勢を強く打ち出し、完全に名古屋を押し込んだ。

 

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