サイドバックでありながらにして、点と点をつなげて線にできる選手。 それを本能と理論の両方で体現できるのが小池龍だ [J7節 神戸戦レビュー]
粘り強く戦った前半0-0が勝因に
前半アディショナルタイムにセットプレーから立て続けにビッグチャンスを迎える。渡邊泰基が左足で決定機なシュートを放てば、続けざまに水沼宏太の豪快なボレーシュートがバーを叩く。劣勢を押し返し、少しずつ流れを手繰り寄せていることを感じるシーンが連続した。
そこまでの時間帯はかなり苦しかった。ヴィッセル神戸が得意とする肉弾戦の土俵に引きずり込まれ、大迫勇也や武藤嘉紀、佐々木大樹ら、いずれも強さを持っている前線のプレーヤーに苦しめられた。
ロングボール1本でチャンスを作れるのが相手のストロングポイントで、出所すべてを封じるのはほとんど不可能。ならば粘り強く戦うしかない。最初の競り合いで勝てなくても、次の争いで一歩先を行く。シュートを打たれても、最後まで体を寄せて離れない。そんな割り切りと、あとは55分に山口蛍のシュートを止めたポープ・ウィリアムのファインセーブが、勝因のひとつになった。
もし負傷明けの佐々木が万全のコンディションだったら危なかった。反対サイドからのクロスに飛び込むジャンプ力と感覚はおそらくリーグ随一。松原健も最後まで徹底抗戦したものの、空中戦のボールを先に触るというアビリティはとにかく脅威であった。
苦しみながらも前半をスコアレスで折り返したのだから、サッカーの世界ではそれをマリノスペースという。
前述したとおりに前半ラストにチャンスを作った流れから、後半開始間もなく先制に成功したのは自然の摂理だろう。喜田拓也からナム・テヒへの縦パスをきっかけに右サイドへ展開。水沼宏太のクロスを宮市亮が合わせ、こぼれ球をアンデルソン・ロペスがプッシュした。多くの選手が絡むマリノスらしいゴールだった。
さらに大迫勇也の負傷交代が追い風になるかと思いきや、宮代大聖にヘディングシュートを叩き込まれてしまうのだからサッカーは分からない。油断も隙も許してくれない神戸は、スタイルの是非はともかくとして間違いなく手強い相手である。
試合を決めたのは、傷が癒えたばかりのブラジル人アタッカー。ナムからボールを受けると「トラップして、シュートを打つ時間があった」(ヤン・マテウス)。GK前川黛也の一発退場によって10人になっていた神戸は、ボールホルダーへのプレッシャーが甘くなっていた。時間と空間を手にしたヤンは狙い澄ましたコントロールショットを沈める。
文句なしのパーフェクトゴールだった。
本当のマリノスが見られるのはこれからだ
ヤンがゴールを決めた瞬間、小池龍太はナムからのパスを受けるためにタッチライン際をオーバーラップしていた。公式記録上に名前は載らなくても、相手のプレッシャーを分散させることに一役買っていたことになる。
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