「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

(2016年の再加入について)「代理人から話を聞いて、年俸とか条件を聞く前に即答しました。嬉しいという感情しかない。考える時間はもったいなかった」 [金井貢史インタビュー(後編)]

 

トリコロールを纏った男たち

【金井貢史インタビュー(後編)】

インタビュー・文:藤井 雅彦

 

昨年12月に現役引退を発表した金井貢史インタビューの後編だ。

今回は溢れ出るマリノス愛を語ってくれた。

マリノスを離れる時の決意と、復帰オファーをもらった際の即決。

そして名古屋移籍時に残した移籍金の意味。

すべての伏線は、あの出来事にあった。

青と白と赤。

大好きな色たちは、彼の人生そのものだった。

 

 

 

前編から続く

 

(2016年の再加入について)オファーをもらえたから即答した。考える時間はもったいなかった

 

――2008年にトップチーム昇格して5年間プレーし、2012年いっぱいでマリノスを離れました。他クラブでプレーした時間はどのような経験になっていますか?

「契約としては2013年もあったけど、そのシーズンはサガン鳥栖へ期限付き移籍していました。その年の終わりに佐川急便のレターパックが届いて、契約書類に『あなたとは契約する意思がありません』みたいな文言と、0円の記載がありました。自分も代理人も何も話を聞いていなかったので、結構ショックでした。その日の練習ではボールが足につかなかった。電話一本くらいくれよ、って思ったかな(笑)。

 でも鳥栖が拾ってくれたので、周りからは契約満了ではなく完全移籍に見えるんですよね。まだプロサッカー選手を続けられると安心したのを覚えています」

 

 

 

――2014年はサガン鳥栖、2015年はジェフユナイテッド市原・千葉でプレーしました。

「見返してやろうという反骨精神と、いつか必要とされる選手になろうという強い思いで頑張りました。鳥栖は自分を拾ってくれたクラブで、契約延長のオファーもくれました。でもマリノスに戻るためにはもっと試合に出て、結果を残さないといけない。圧倒的な活躍が必要だと思って、それで千葉への移籍を決めました。初めてJ2でプレーすることになったけれど、このカテゴリーで結果を出せなければ自分は終わり。それくらいの覚悟を持って戦ったのが2015年です」

 

――35試合出場5得点は立派な数字ですね。

「ここでダメならオレは終わり。1年間必死にやって、5点取りました。たしかチームで3番目に多い数字だったかな。マリノスに戻るためには圧倒的な結果が必要で、だから点を取りまくった。自分のプランではジェフでの2年契約で結果を出して、そこで活躍してマリノスに戻るつもりだった。結果として1年前倒しになりました」

 

 

 

――マリノスからオファーが届いた時の心境は?

「代理人から話を聞いて、年俸とか条件を聞く前に即答しました。嬉しいという感情しかない。誰が同じポジションにいるとか、試合に出られるとか出られないとか、どのポジションで考えられているとか、すべて関係ない。オファーをもらえたから即答した。考える時間はもったいなかった。

 でも移籍はやっぱりタイミングや巡り合わせがある。アマさん(天野貴史)が長野に行って、ナラくん(奈良輪雄太)がヴェルディに行って、比嘉(祐介)がオレとトレードする形で千葉に行って(笑)。たまたまサイドバックがほとんどいなくなって声をかけてもらった。移籍はタイミングと運。オレが持っている最大の能力はタイミングと運だから(笑)」

 

 

 

――陰で努力しているわけですね。

「うーん、努力したと思ったことがない。試合に出るためにやっているのは努力ではなくて、当たり前。周りには常にもっと上手い選手がいたから、どうにか上回るためにたくさん走って、ボールを蹴るのは当たり前。歯磨きみたいなものだよ。だから努力したことはない。

 あとは運でしょ(笑)。実力やセンスがなくて、身体能力もたいしたことがない。その人間がプロの世界で生き残るには運が必要。人とのつながりもすごく大切だけど、それはサッカー界にいれば自然と増えていく。あとは自分がつながろうと思うかどうか。自分から遮断しちゃうと、何もつながらない。バカだけど、明るくていい性格だったと思う(笑)」

 

 

 

――その後、2018年夏に名古屋グランパスへ完全移籍しました。

「マリノスであまり試合に出られていない状況で、名古屋からオファーが来ました。たしか5月か6月くらいから話をもらっていたけど、できればマリノスを離れたくなかった。移籍ウインドーが開いて正式なオファーが来たけど、マリノスが来年の契約延長オファーをくれるという話をしてくれていたから、とにかく待ちました。でも、結局そのオファーは来なかった。だから期限のギリギリに成立した話。このまま残っても、シーズンの終わりにクビになるのは目に見えていたし、もう一度輝いて戻ってこようと思った。

 それに、このタイミングで移籍すれば移籍金を残せる。クラブ間の話だから自分は正確な数字を知らないけれど、少しでも移籍金を残したかった。オレはマリノスに大きな借りがある。だから結果を残したかったけど、それができなかった時に移籍金はひとつの形だった」

 

 

 

マリノスがチャンスを与えてくれたおかげで今の自分がいます。だから、引退したあともできればマリノスに恩返ししたい

 

――移籍金はマリノス愛を表現するための手段だった、と。

 

 

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tags: 金井貢史

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