「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

寮を出て、1LDKのマンションで一人暮らしを始めました。プロA契約になっていたので、自立することがプラスになると思いました [遠藤渓太選手インタビュー(前編)] <無料>

 

 

実施日:11月7日(火)
インタビュアー・写真:藤井 雅彦
協力:横浜F・マリノス広報室

 

 

遠藤渓太、19歳。

ルーキーイヤーの昨季はリーグ戦23試合に出場し、若きサイドアタッカーとして存在感を示した。その活躍によって世代別代表に選出され、今年5月に日の丸を背負ってU-20W杯に出場。これらの出来事だけを切り取れば、順調にステップアップしているように見える。

しかし、内実は違った。プロ2年目の今季、リーグ戦第31節終了時点で先発出場はわずか2試合にとどまっている。思い描いていたシーズンには程遠く、苦しい時間が長く続いた。積み上げてきた自信が打ち砕かれ、ゼロからのスタートとなった。

2回に分けてお届けする前編では、2年目の苦悩を振り返りつつ好転のきっかけとなった“ある出来事”を明かした。

 

 


 

 

 

――率直に聞きます。開幕前、プロ2年目11月の現在の状況を想像していなかったのでは?

「1年目にある程度試合に出場させてもらえました。1月のタイキャンプではようやくゴールを決めることができて、その他の場面でも自分のプレーを出せていました。だから、自分自身やれる手ごたえは十分ありました。

 でも、いざ開幕したらメンバー18人には入るけどベンチを温めるばかりで試合に出られなかった。自分の成長を示す場を勝ち取れない日々に苦しみました」

 

 

 

 

――第10節のサガン鳥栖戦まで全試合にベンチ入りしましたが、途中出場が6試合あるだけで、先発は1試合もありませんでした。

「自信はありました。でも学くんが出場しなかった第3節の鹿島戦で途中出場して、その試合で何もできなかったことで鼻をへし折られました。結果を出していない選手は何も言えません」

 

――その後、U-20W杯メンバーに選出され、世界大会を経験しました。

「F・マリノスで思うようにいかない状況でも、代表活動では結果を残して、居場所があったのは良かったと思います。本大会でもある程度のプレーができたので、自信を取り戻すきっかけになりました。ただ…」

 

――その後もなかなか出場機会がめぐってきませんでした。

「U-20W杯で得たもの、感じてきたものを発揮する場所がなくて、本当に苦しかったです。代表で一緒にプレーしていた選手たちはクラブレベルで試合に出ていました。だから余計に悔しかった。ルヴァンカップはグループステージで敗退していたので、実戦機会の場がないことに焦りを感じていました」

 

――1年目の試合出場から学んだこと、得たことは?

「とにかくJリーグを経験できたことです。スピード感やテンポ、強さや激しさなどユースとはすべてが違いました。2年目にデビューしていたら、今頃もっと慌ててプレーしているはず。結果を出せずチームの勝利に貢献できなかったことは悔しいけど、個人としては試合に出ることで価値ある1年目でした。だからこそ2年目は結果で存在感を示したいという思いがありました」

 

 

――ちなみに、2年目の目標は立てていたのですか?

「特に数字の目標は立てていませんでした。でも試合のメンバー表を見て、出場試合数ばかり増えて、隣にある得点数がずっと0のままなのは気になっていました」

 

――苦しい夏を経て、9月に転機が訪れます。わずか1ヵ月半前の出来事です。

「8月の終わりに引っ越したのが良かったのかもしれません(苦笑)。寮を出て、1LDKのマンションで一人暮らしを始めました。寮の部屋はあまり広くないので、ずっとベッドにいました。寝る時だけでなく起きている時もずっとベッドの上。でも一人暮らしになって、例えば朝は洗面台まで歩くようになりました。寝る時以外はソファにいて、トイレに行くにも動かなければいけない。だから全体的に活動量が増えました(笑)。それにプロA契約になっていたので、自立することがプラスになると思いました」

 

――待望のリーグ戦初ゴールが9月30日のガンバ大阪戦で生まれます。負傷者のアクシデントが続き、右SBで途中出場した試合でした。

「全体的なパフォーマンスが良かったわけではなかったですが、その試合で点を取れたのは不思議です。決めた瞬間は頭が真っ白になりました。でも、次の大宮戦で今年初めて先発したのに、その試合に勝てなかったことが心残りです。ようやく先発できたからこそ結果が必要なゲームでした」

 

(第2回につづく)

 

 

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