PREMIUM
2023.12.20

「小池龍太がいれば簡単にタイトルを獲れたね、と言ってくれる人がいるんです。すごくありがたい言葉なんだけど、それって結構きつくて」 [小池龍太ロングインタビュー(前編)]

2023年12月20日 18時03分　PREMIUM
カテゴリ： ★PREMIUM • インタビュー

【小池龍太選手インタビューコラム（前編）】

インタビュー・文：藤井雅彦

シーズン終了後の特別インタビューに小池龍太が登場だ。

2023年はリーグ戦のピッチに立てず、悔しい時間に終わった。

責任感が人一倍強く、フォア・ザ・チーム精神に溢れる男は、いかにしてシーズンを過ごしたのか。

前編では怪我をした瞬間と過程、そして向き合い方について真摯に語ってくれた。

いま、事実と真実が明らかになる。

怪我をした瞬間に今までにない痛みを感じて、膝蓋骨が本来はない場所にありました。違う場所にズレてしまっていたんです。

小池龍太が黙々とピッチを走っている。今季最後のチームトレーニングとなったACL山東泰山戦前日も、全体練習には合流できなかった。それでもクラブハウスへ引き上げる表情は柔らかく、少しずつだが着実に前へ進んでいることを実感できる様子に見えた。

苦しい1年だったかもしれない。そんな日々が始まったきっかけは1月20日の負傷だった。

気合い十分で迎えた宮崎キャンプの序盤、2チームに分かれてのフォーメーション練習中の接触プレーで右膝の膝蓋骨を脱臼してしまう。

「今シーズン、タイトルと連覇を目指してやっていく中で、しっかりとした準備をしてオフを過ごしていたつもりです。思いのこもったシーズンになるだろうということで、個人的にはコンディションも良い状態でスタートしたキャンプでした。だから怪我をしてしまった瞬間は、簡単な言葉で表せる感情ではなかったです」

果敢にインターセプトを狙った際のアクシデントだった。苦痛に顔を歪め、まったく身動きが取れない。患部に目をやると、右膝は信じがたい状態になっていた。

「怪我をした瞬間に今までにない痛みを感じて、膝蓋骨が本来はない場所にありました。違う場所にズレてしまっていたんです。痛みと見た目の恐怖感が同時に襲ってきて、長期離脱になってしまうのかなという感覚はありました」

　これまでのサッカー人生で、長期離脱の経験はない。手術はもちろんのこと、骨折もない。しばらくはピッチを離れなければいけない事態にショックを受けた一方で、すぐに気持ちを切り替えた。今できることにフォーカスして少しでも早い復帰を目指していこう、と。

「全治6～8週間という診断結果で、手術をしなければ絶対に治らない怪我でした。だから迷う必要はなくて決断も早かったですし、1日でも早く復帰できるようにリハビリをスタートさせたくて、すぐにキャンプ中のチームを離脱しました」

　アグレッシブにプレーをした結果とはいえ、後悔はなかったのか。その答えには、チームの先頭グループを走る男の矜持がしっかりと見えた。

「新加入選手たちにどのタイミングでどういった奪い方をしなければいけないのかを、僕はどちらかというと行動で示さないといけないタイプ。そういった理由もあって、結果的に怪我になってしまったアクションになりました。僕自身はボールを奪えると思ってチャレンジしましたし、相手チーム側の選手と接触するのも仕方ない部分がある。だからプレーそのものに落ち度があったとは考えていません。

　それよりも、練習への準備の仕方や気の緩みなどがあったのかなとか、あるいは逆に気負い過ぎていたのかなとか、そういった考えに浸る時間はありました。でも、自分は常にやり尽くしている人間という自負があります。だから、そこに後悔はありません」

　手術が無事に終わると、日暮清トレーナーと二人三脚でリハビリに励む日々がスタートした。オープンしたばかりの久里浜の練習グラウンドで、復活への道を急ピッチで辿っていく。毎日の状態チェックに始まり、対話を欠かさず、少しずつできることを増やしていった。

「日暮さんと一緒にいすぎるくらい一緒にいましたね（笑）。治していく過程できつかったこともありました。でも、やらなければいけない。その葛藤は自分と日暮さんのお互いにあって、やらせ過ぎてもいけないし、でもやらなければ治らない。日暮さんがいろいろなことを考えてくれたおかげで、発表された期間で復帰できました」