最後は急造4バックが気持ちで乗り切る。 マリノスの基準を取り戻す、意味ある勝ち点3 [J30節 札幌戦レビュー]
「アグレッシブにいかないとマリノスじゃないよね」(實藤)
試合終了時のディフェンスラインが今のチーム状況の苦しさを端的に物語っていた。
右から榊原彗悟、松原健、喜田拓也、そして吉尾海夏。にわかに信じがたい、誰ひとりとして本職ではないポジションである。特に榊原にとってはリーグ戦デビューのポジションが、まさかの右サイドバック。それだけ台所事情は苦しい。
ちなみにこのセットは練習で一度も試していない。それでも選手たちは即興で演じ、ゲーム終盤を1失点で切り抜けた。そこにあったのは、細かな戦術よりもメンタルだ。すっかりベテランの風格漂う松原がこう振り返る。
「ああいう時は気持ちで体を動かす。ディフェンスラインは若い(吉尾)海夏も(榊原)彗悟も本職じゃない中でやっている。だからこそ最後まで声を切らさず、休むなと。休むのは試合が終わってからいっぱい休めと口酸っぱく言った」
榊原はルーカス・フェルナンデスのドリブル突破に食らいつき、吉尾は見事なインターセプトからエウベルのチーム3点目をアシスト。松原が最終ライン中央で体を張って守れば、喜田は最後まで強気なライン設定でマリノスを蘇らせた。
リーグ戦では今季初めてセンターバックを務めた主将が胸を張って言う。
「普段とは違うポジションだけど、後ろから必ず良さを引き出したいと思っていた。その覚悟はあった。自分の肌感覚で上げられるところまで上げたいと思っていた。個人の守備範囲もあるので一概には言えないけど、上げることで相手に圧をかけることもできる」
相棒を務めた實藤友紀もまったく同じ考えだった。
「アグレッシブにいかないとマリノスじゃないよね、と再確認した。前線からプレスに走って、裏を取られても守る。リスクもあるけど見返りも大きい。一歩も引かずにやろうとキー坊(喜田拓也)と話していた」
臆することなく最終ラインを押し上げ、全体をプッシュアップ。プレスが空振りに終わったとしても、前線を走らせることだけはやめなかった。内容的にはパーフェクトではないが、普段着を取り戻せたのは事実。
これが「残り4試合の基準」(實藤)だ。
勝ち点3を手繰り寄せたヒーローたち
得点者の顔ぶれも素晴らしい。
まずは宮市亮だ。アンデルソン・ロペスのフィジカルを利したボールキープとスルーパスにスプリント能力を生かして抜け出す。1タッチ、2タッチ、3タッチ目でファーサイドから巻くシュートを選択してゴールネットを揺らす。鹿島アントラーズ戦での決定機逸をさっそく取り返し、爽やかな笑みをこぼした。
杉本健勇もようやくやってくれた。
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