「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ベスト4では誰も記憶してくれない [天皇杯準決・鳥栖戦プレビュー] 藤井雅彦 -1,341文字-

試合を数日後に控え、栗原勇蔵はあらためて言った。

「もう29日も1月1日も変わらない。ここまできたら優勝したい。いつもここで負けるし、今年はそれにプラスしてリーグ戦で優勝できなかった悔しさもある。リーグもナビスコも惜しかったけど優勝できなかったら一緒。ACL出場権を獲れたのはよかったけど、やっぱり最後は優勝したい」

4-2-3-1_奈良輪右 筆者自身、近2年は12月29日が仕事納めの日になっている。できることならばあと3日間、仕事をしたい。仕事納めは来年1月1日がいい。そのためには明日の準決勝を突破しなければならない。

チームは27日にサガン鳥栖対策を行った。ファビオを控え組の1トップに配し、豊田陽平目掛けて放り込まれるロングボール対策を実施。さらに藤田直之のロングスローを警戒し、その対応策も施した。「抜かりなく対策することで勝ちに近づくと思う」と栗原。とはいえ中澤佑二の「もう分かっていることだから」という言葉も正しい。鳥栖と対戦するたびに警戒するのが豊田であり、ハイボールだ。選手はそれを嫌というほど理解している。

おそらく勝敗を分けるのは、そういった戦略面ではない。リーグ戦で2戦2勝している鳥栖との相性は良く、攻撃パターンが明らかな相手は戦いにくい性質ではないのだろう。樋口靖洋監督は過去2年の結果を鑑みて、「チームとしては3年連続の準決勝なので、3度目の正直で突破したい。この壁を一度破らないとずっと壁と言われ続ける」と息巻く。どれだけ勝ちたいか。あくまで精神面の強さを問われる一戦だ。

日々の練習風景や態度を見る限り、選手が過度にイレ込んでいる様子はない。どちらかといえば、淡々と準備を進めている印象が強い。「練習では難しくても、試合になれば自然と気持ちが高まる」(富澤清太郎)だろうから心配無用である。どうしてもピッチ外のニュースが先行してしまう時期ではあるが、シーズンはまだ終わっていない。グラウンドに立てば、勝利のみを目指して戦うマリノススタイルが見られるはずだ。

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鳥栖4-2-3-1繰り返しになるが、天皇杯では2年連続で準決勝の舞台で散っている。栗原の言うとおり、ナビスコカップも準決勝止まりだった。トーナメント戦において、マリノスはしばらく決勝の舞台から遠ざかっている。まずは決勝の舞台に駒を進め、白か黒かのしびれる戦いを味わいたい。リーグ戦ではラストシーンで優勝を逃したが、それとは一味違う緊張感や興奮があることだろう。

元日の1月1日に決勝戦を行える特別感は格別なはず。ベスト4では誰も記憶してくれない。決勝に進み、優勝してこそ、素晴らしきシーズンを締めくくるのにふさわしい。

 

 

 

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