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【無料記事】J3再開。0911・いわぎんスタジアム~0919・味の素スタジアム。柳貴博のリスタート(2016/09/10)

そのしなやかですらりと長く伸びた筋肉質の体躯、そして3バックの両脇でも4バックのサイドバックでもプレーできる資質は、エリック・アビダルを髣髴とさせる。しかしその恵まれたフィジカルを持つ柳貴博は二重の挫折に苦しんでいる。シーズンも半ばを過ぎて昇格が相次ぎ、FC東京U-18+α化したFC東京U-23にあって、まだトップ昇格を果たせていない。そしてJ3で経験値を積んだことによる成長でメンバー入りを果たしていたU-19日本代表からこの9月の遠征では外れ、10月に予定されているAFC U-19選手権バーレーン2016への出場も難しくなってきた。
それでも日々、練習の時間はやってくる。約一カ月の中断があったJ3もこの週末から再開する。力を伸ばし、力を示すため、立ち止まってはいられない。

 

前田遼一、平山相太といった、大きく強く技術力のあるフォワードと競り合うことができる小平の練習環境は、ディフェンダーである柳貴博にとっては願ってもないものだろう。

前田遼一、平山相太といった、大きく強く技術力のあるフォワードと競り合うことができる小平の練習環境は、ディフェンダーである柳貴博にとっては願ってもないものだろう。

<0911・いわぎんスタジアムへ>

U-19日本代表の選に漏れた柳は、その悔しさを糧とするべく「いま、いちばんやるべきは練習だと思っています。練習から意識高くやっていかないと」と、自らを戒めている。
「(U-19日本代表に)選ばれていないということは、まだまだ自分の実力が足りないということ。だからこそ練習にもっともっと意識高く取り組み、もっと巧くならないといけない。たとえ最終予選のメンバーに選ばれなかったとしても、選ばれたメンバーが本大会への進出を果たしてくれれば、また来年にチャンスがありますし、そこに入っていきたいという気持ちがあります。いままでU-19に選ばれていなかったわけではないので、かぎられたわずかなものかもしれませんけど、チャンスはあると思っています。J3も今週から始まりますし、もう一度ここから前に進んでいきたい」

篠田善之監督が志向するサッカーを実現するために、トップチームは切り換えが速く球際が激しい練習を繰り返している。この練習で鍛えれば、同年代の競争相手に負けないレベルに上達することも不可能ではない。
「このチームの練習は自分もレベルが高いと思っています。ここについていって自分のプレーを出していけたら、どこに行っても通用するプレーができると思う。それだけでも自信がつきますし、(J1の)試合に出られたらさらに自信がつくと思います」
練習では前田遼一や平山相太といった選手を相手にできる。徳永悠平に追いつき追い越すためには、サイドバックと言えども守備力、当たり負けしない身体能力が必要だが、その力をものにするための環境は整っている。もちろん素質もある。
「この恵まれたからだがあるからこそ、どの相手にも負けちゃいけないと思っています。けど、このからだも、まだ完成したものではない。もっともっと強くしていかないといけない。とはいえ、現状のからだに生まれついた時点ですごく有利なことだと思っているので、自分の特長、身体能力も活かしながら、守備では絶対にやられない、そして攻撃でも(トップ、あるいは世界で)通用する域に高めていって、ディフェンスラインのあらゆるポジションをこなしていけるような選手になっていきたいですね」

実力を伸ばし、アピールするには、そのためのステージがいる。柳の気持ちは9月11日のいわぎんスタジアムに飛んでいる。
「盛岡は勢いがあるらしい。あらためて気合を入れていきます。最近、なかなか90分のゲームもできていないので、練習からしっかりやって、試合ではいい入りをしたいですね」

 

183cm77kg。サイドバックとセンターバックを兼ねる運動性能と強さを持ち合わせ、世界に相対するときも有用な武器となる可能性を秘めている。

183cm77kg。サイドバックとセンターバックを兼ねる運動性能と強さを持ち合わせ、世界に相対するときも有用な武器となる可能性を秘めている。

<0919・味の素スタジアムへ>

まだJ1デビューを果たしていない柳だが、味の素スタジアムには思い出がある。三年前の10月3日、2013年第68回国民体育大会 サッカー競技 少年男子(16歳以下)決勝戦に出場し、東京都の一員として大阪府を破ったのだ。

東京都のメンバーは以下のとおりだった。
先発メンバー:GK松嶋克哉(FC東京U-18)、DF相原克哉(FC東京U-18)、渡辺拓也(FC東京U-18)、柳貴博(FC東京U-18)、岡崎慎(FC東京U-15深川)、MF小松駿太(横浜F・マリノスユース)、田代蓮太(東京ヴェルディユース)、井上潮音(東京ヴェルディユース)、安部柊斗(FC東京U-18)、FW相馬勇紀(三菱養和SCユース)、神谷優太(東京ヴェルディユース)
サブメンバー:GK山口康平(FC東京U-18)、DF鴻巣良真(國學院大學久我山高校)、MF大熊健太(FC東京U-18)、MF佐藤亮(FC東京U-18)、FW群大夢(東京ヴェルディユース)

柳と岡崎慎はともに今シーズン、FC東京U-23の主力となっている。岡崎はFC東京U-18に所属する2種登録選手だが、来季には正式にトップチームの一員となる。あの東京国体選抜メンバーのうち、ふたりが再び味スタに挑む権利を得たことになる。

当時の記憶を柳は次のように語る。
「味の素スタジアムでちゃんと試合をしたのが初めてで、すごく広いと感じたことを憶えています。観客はJ1の試合ほどには入っていなかったんですけれども、それでもふだんU-18で試合をしているときより多く(2,359人)の方が観に来てくださっていて、やっぱり味スタはすごいな、と思いました。またあのピッチに立てるようにがんばりたい、そう思ってきました」

9月19日、柳は味スタに「帰る」可能性が高い。その場合、J1ではなくJ3の舞台となるが、それでも味スタで戦うFC東京のホームゲームには変わりない。
「自分はFC東京にジュニアユースの頃から関わり、味スタでのFC東京の試合も小学校の頃から観ていて、ずっとそのピッチに立ちたいという憧れを抱きつづけてきました。J1に出たいという気持ちはありますけど、J3で味スタの試合に出ることも、大きな一歩だと感じます。プロとして初めて味スタのピッチに立てるかもしれない。しっかりといいプレーをしたいと思います」

柳は東京オリンピックに出場可能な世代に属している。リオオリンピックも他人事ではなく、四年後に比較するべき到達点として観ていた。
「その年代(23歳)だと所属クラブでも中心になっているケースが多く、一流の選手が参加していた。ブラジル、ドイツは特にそうですが、レベルの高さを感じました」
では、いまからどこを鍛えるべきなのか。
「日本の試合を観るかぎり、攻撃では海外の相手にも通用することはわかりました。でも守備でわずかな隙や甘さを衝かれている。やっぱり1対1の対応になると、外国の選手は個の強さがありますし、そこに負けないくらいの技術とパワー、頭で考える力を身に付け、少しずつでもアップしていかなければ、四年後にいざ試合となったときに、多くの失点を喫してしまうと思います。海外のチームを相手にした試合ではディフェンスラインがほんとうに重要になってくる。そこでやられたらチームは崩れてしまいますし、そこで抑えることができればチームに勢いをもたらすことができる。U-19日本代表でも外国の選手と対戦できる機会をもらっていますし、そういうところから意識してやっていきたい」

2020年に柳が戦わなくてはいけない世界への路は、FC東京U-23初の味スタから拓かれるのかもしれない。

 

 

 

 

 

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