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「内容もクソもないで、勝つことしか考えていなかったので、それで十分です。きょうは。きょうだけは」(塩田仁史)【コメントアーカイヴス】高橋秀人、米本拓司、太田宏介、長谷川アーリアジャスール、ルーカス、塩田仁史+セレモニー挨拶書き起こし/2013Jリーグディビジョン1 第34節第1日 FC東京対ベガルタ仙台_第2報(12/07)[9,721文字](2013/12/09)

◆ミックスゾーンでの囲み取材

ルーカスはゴール直後の涙を振り返り、「あのとき気持ちがこみ上げてきて感情をコントロールすることができませんでした。ゴールを決めた瞬間にいろいろと思い出すことがあり、そこで感情があふれて泣いてしまった。ちょっと説明ができないのですけれども、そういうふうになってしまいました」と語った。

その「いろいろなこと」のなかには、ブラジル五輪代表、金の卵として高額の移籍金でフランスのレンヌに加入しながら結果を残せなかったこと、そしてFC東京でも当初は2005年シーズンかぎりで去る予定が、マルシオ・アモローゾ獲得失敗によって06年に再度味スタのピッチを踏むはめになったことも含まれているはずだ。
たしかに05年はふるわなかったが、それはあの対横浜F・マリノス戦での脳震盪事故も原因に含まれる。それでも期待されたほどの得点力を見せられなかったという評価があの頃にはあった。

すごかったのは06年だ。トップ下でプレーしたことも手伝い18ゴールをマーク、チームに欠かせない人材であることを自ら証明してみせた。その後は出世魚のようにガンバ大阪でサイドハーフとフォワードを兼ねてプレー、FIFAクラブワールドカップ3位に貢献してみせた。東京時代の対デポルティーボ・デ・ラ・コルーニャ戦での存在感も含め、国際舞台で頼りになる男だった。

Jリーグで得点数が20を超えたことはない。しかし毎年安定した成績を残し、ディフェンス、ハードワーク、キープ、チャンスメイク、さまざまなタスクをこなす日本人以上の働き蜂ぶり、闘争心も含めた頼もしさなどが認められ、総合的に評価して彼以上の外国籍選手はいないという地点にまで、最終的には辿り着いた感がある。
塩田仁史は「こういうときに力を出せるか出せないかもプロの資質にかかわってくる。自分自身を信じていましたし、なにより仲間を信じていたので、必ずゴールを獲ってくれると思っていました」と言う。プロの資質「ライトスタッフ」を、ルーカスも塩田もJ1最終節で示した。よくないときもあったろうサッカー人生をよいものにできるかどうかは、瞬間では決まらない。継続した努力、その蓄積が、最後にものを言う。

挫折を栄光の引退にまで転回させたのは紛れもなく彼自身の努力。味スタをその場として機能させたことをファン、サポーターは誇っていい。
05年の失礼がエンバイシャドールのポストを用意することでチャラになるかどうかはわからない。J2降格年は平山相太と高松大樹の負傷、ブラジル人選手の不発でどん詰まりになったところを、ルーカスが1トップでボールを収めてくれたことで打開した。あの恩はまだ返しきれていない気がしないでもない。

それならばそれで、これからクラブと、ファン、サポーターが総出で返していけばいい。まずは天皇杯。最後の笛がなる瞬間まで、声援を送りつづけたい。

◯高橋秀人の談話

――2点めを獲ったあと祝福をするため米本拓司選手に駆け寄ったことについて。
「1点めを獲った時間が早く、そのあとにちょっと押し込まれたシーンもあり逆転や同点に持ち込まれる可能性もあったので、2点めの重要性が、ホームゲームということもあって高かった。そこで2点めの後押しをしてくれたのがヨネ(米本拓司)だったので。
お互いに讃えあう……淡々とサッカー選手をするのではなく、少し部活チックに、いい部分はいいと、みんなのプレーに対してみんなが評価しあうことが大事だと思っています。そういう部分もコミュニケーションのひとつです。それでみんなが喋らなくなると、いつもやっている空気でやる、というふうになってしまう。そうではなく、サッカーとかひとは生きものなので、そういうところはいつも大事にしています」

――いまおっしゃったように、褒めるところはちゃんと褒めたり、言うところは言うことで、チームに勢いやよい効果をもたらすという面はありますか。
「勢いとか、そういう流れは大切にしたいと思います。勢いも水物、生きものだったりする。でも前半の戦い方はあまりよくなかった。みんな単発で追っていて、粘り強く守備をすることができなかったので。時期的なものなのかそうではないのか、よくわからないですけれども、喝が入った状態でルーコンの最後に華を添えることができました。アーリア(長谷川アーリアジャスール)も試合をする前からルーコンにアシストをすると言っていた。いい試合の締めくくりだったと思います」

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