「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

クリーンシートとセットプレー。試合後のトリコロールパラソルが美しい [1st14節柏戦レビュー]

 

前節のヴィッセル神戸戦以上にマリノスらしい戦いで勝ち点3を上積みした。

パフォーマンス内容だけを切り取ったとき、必ずしもマリノスが上とは言い切れない。中澤佑二のコメントを引用したい。

「レイソルのほうがポゼッション率は高いし、いいサッカーをして、チームとしての完成度も高かった。攻められる時間が長い中でなんとか取った1点だった。弱いチームが強いチームと戦っている構図になってしまったことが僕としてはちょっと…」

 サッカーに判定があるとしたら、わずかながら柏が上回っていたかもしれない。互いの流れの中からの決定機は少なかったが、効果的なポゼッションという点で軍配が上がるのはアウェイチームだろう。

しかし、である。監督交代で息を吹き返した柏がまずまずクオリティ高いサッカーを披露したのに対して、マリノスの持ち味は相手にボールを支配されても失点しない頑強さだ。守備意識を高く保ち、自陣ゴール前に押し込まれても、最終局面で自由を与えない。栗原勇蔵は「なぜ完封できるのか、サッカーをわかっている人ならわかると思う。今日はそれを出せた」とニヤリだ。

それだけでは終わらない。ここからがマリノスの真骨頂だ。前半終了間際、右CKのチャンスに中村俊輔はニアサイドへのボールを選択。そこに飛び込んだのは中澤だった。巧みにコースを変えたシュートがファーサイドへ吸い込まれる。これ以上ない時間帯に先制に成功し、最高の気分でハーフタイムを迎えることができた。

 

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後半の2ゴールも中村のCK絡みで生まれた。52分の追加点はDFがクリアしたボールを中町公祐が競り勝ち、ゴール前で待っていた齋藤学が倒れ込みながら反転ボレーで流しこんだ。トドメの3点目はCKがクリアされたボールがファーサイドに流れ、それを拾った中町が中央へクロス。パク・ジョンスがスタンディングの状態でヘディングを放ち、これが見事に決まった。

 終わってみればスコアは3-0である。相手側にすれば、スコアほどの差は感じなかったであろうことは容易に想像できる。この勝利をどのように形容するかは、感じ方ひとつで変わるのだろう。

試合後、栗原は開口一番で「楽勝でしょ」と切り捨てた。それは彼が得点経過や試合運び、そして完封という結果に手ごたえを感じているからにほかならない。同じ選手でも齋藤は「内容的には物足りない。チームとしても個人としても、もっと強くならないといけない」と不満げだった。サッカー観の違いであり、捉え方は人によってさまざまだ。

クリーンシートとセットプレー。この二つの要素で勝つマリノスは、憎たらしいほどに強い。試合後のトリコロールパラソルはより美しく、スタジアムを出たあとの祝杯の味も格別である。

 

 

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