「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

何か勲章を得たい [2nd14節神戸戦レビュー] 藤井雅彦 -1,396文字-

 

前半の45分はお世辞にも良い内容とはいえなかった。まず水曜日の天皇杯で延長戦を含む120分戦った疲労が抜けきっていなかったのだろう。移動を含めた負担も大きかったはずで、これは仕方ない面もある。

神戸4-2-3-1 しかし、低調になった理由はそれだけではない。ネルシーニョ監督率いるヴィッセル神戸はマリノスをよく研究していた。柏レイソルを率いてマリノスをお得意様にしていた昨季以前のように、ネルシーニョはいつも絶妙なバランスで対抗してくる。その正体はマリノスの弱みを突いてくる点にあり、内容としてはある位置からしっかりプレッシャーをかけてくる。決して自陣に引きこもらず、マリノスの最終ラインをしきりにけん制してくる。これについては中村俊輔のコメントを引用したい。

「前半の内容が課題。ディフェンスライン4枚とダブルボランチでのビルドアップがうまくいかなかった。相手の間で顔を出していたけど、なかなかボールが来なくて、そのあたりはもっと良くしていかないと」

 いまに始まった問題ではなく、これはマリノスのウィークポイントの一つである。そこに冒頭で述べたように疲労蓄積が重なり、ゲームを主体的に動かすことができなかった。

 

https://www.youtube.com/watch?v=ISsIji4–90

 

そうこうしているうちにファビオの凡ミスから失点する厳しい展開に。失点に関してはファビオ個人の問題が大きく、戦術的に改善する要素はゼロに等しい。しかしながら、ここでも相手のプレッシャーがあったことは見逃せないし、少なくともフリーで前を向ける状況ではなかった。

 

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4-3-2-1_2015 その後、40分に相手選手の退場によって数的優位になると、後半は完全にマリノスペースとなった。圧倒的に押し込み、際どいシーンを何度も作る。決定力抜群のストライカーが一人いればもっと早くゴールネットを揺らすことができていたかもしれない。それでも86分のアデミウソンのゴール、90分+4分の齋藤学のゴールで逆転に成功し、時間内ぎりぎりとはいえ、きっちり差し切った格好である。ボールを持てるのは当たり前で、この日は多彩な攻めで決定機も作れていた。逆転勝利という結果は妥当といっていい。

ちなみに、けが明けの齋藤については、木曜日時点でエリク・モンバエルツ監督が「今シーズンはプレーできないだろう」と突如発言し、筆者を含む報道陣を驚かせていた。全体練習には合流していたものの患部の状態は芳しくなく、いまも痛みを抱えたままプレーしている。どうやら神戸戦の出場可否を決める意味合いを持った木曜日の練習で、今一つの状態だったために指揮官は少し大げさな表現を用いたということ。その状態の選手が決勝点を決めるのだからサッカーはわからない。

この結果を持ってマリノスは2ndステージの3位に浮上した。上位陣がつぶし合った末のジャンプアップであるが、残念ながらステージ3位に価値を見出すことはできない。年間3位とステージ3位では大違いで、現状は何の権利も得られない。もちろん2ndステージで優勝を飾れば話は違うのだが、サンフレッチェ広島と鹿島アントラーズはいずれも勝負強さを見せた。そのため首位との勝ち点差は『6』とまったく変わっていない。残り試合数だけが4から3に減った。

ここへきてチームとして安定したプレーを続け、結果もついてくるようになった。右肩上がりの状態で調子を上げているのは間違いない。だからこそ何か勲章を得たい。そう思わせるパフォーマンスを見せてくれている。

 

 

 

 

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