「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

中村俊輔にしかできない、まるでアニメか漫画の世界のようなプレー [2nd3節G大阪戦レビュー] 藤井雅彦 -1,536文字-

 

中村俊輔にしかできない、まるでアニメか漫画の世界のようなプレーで勝ち点1を獲得した。

端的に総括すると、そういった試合である。後半アディショナルタイムのラストチャンスで、あのインパクトのシュートを打てる選手は世の中にそういない。37歳になってもスーパースターはスーパースターである。技術はもちろんのこと、持っている才能もまったく色褪せる様子がない。加えて言えば、2月に左足首にメスを入れた影響がなかったことも証明して見せた。

 

https://www.youtube.com/watch?v=OQzxXjU11pU

 

インパクトでは劣るがアデミウソンのゴールも価値があった。中村は自身のゴールよりも先に「あれはアデにしかできない形」と賛辞を述べてチームメートを称えた。そしてラストパスを送ったラフィーニャの存在も忘れてはいけない。ここまで度重なる負傷で稼働率は明らかに低く、リーグ戦も無得点だが、やはり持っているスペシャリティーは高い。少しアバウト気味な浮き球パスでも、結果的には最高のラストパスである。今後もコンスタントに出場できるのなら間違いなく戦力になる。

 

https://www.youtube.com/watch?v=CmmxKynS5LY#t=2m40s

 

4-3-2-1_2015しかし、である。中村の直接FK、そしてアデミウソン&ラフィーニャの連係によるゴールは、いずれも個の能力でしかない。それもすでに能力があると分かりきっている選手たちの一芸でしかなく、たとえば天野純や熊谷アンドリューのような選手が突然の煌めきを見せたわけではない。実力を持っている選手が、チームのピンチを救ったに過ぎないのだ。あまりにも劇的な同点ゴールに酔いしれるのは、昨日までにすべきだろう。マリノスは2ndステージに入って、まだ未勝利なのだ。

冷静に振り返ると、ガンバ戦の内容はお世辞にも良いとは言えなかった。急造布陣で臨んだ守備もいただけなかったが、それ以上にリスクを冒さないオフェンスはまったく怖さがなかった。前半放ったシュートはわずかに2本。中村を中心としたパス回しである程度押し込めていたにもかかわらず、肝心のシュートにたどり着かない。もっと言えばラスト3分の1に良い形で侵入できない。柏レイソルはゴール前で守ってくれたが、ガンバ大阪はそれよりも少し高い位置でマリノスの攻撃を食い止めた。いや、マリノスが侵入しきれなかった。

 

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そして気がつけば、チームは完全にポゼッション型に姿を変えているではないか。ほんの少し前までは三門雄大や喜田拓也が象徴的な存在となり、攻守の切り替えと奪ってからの速い攻撃を基本線にしていたのだが…。それくらい中村という存在が大きいのは仕方ない話ではあるが、選手一人の影響力でチームの方向性がまったく変わるのは、あまりよろしくない。

G大阪4-4-2守備は一時期のように高い位置からプレッシャーをかけるわけではなく、かといって自陣でブロックを形成するでもない。とてもファジーな状態で守っている。攻撃は遅攻がメインとなり、するとフィニッシャー不在が最大の要因となってゴールを決めきれない。攻撃と守備は表裏一体で、どちらも上手くいっていないからチームとして上手く回らない。悩みの根は意外と深そうだ。

ようやくメンバーが出揃いつつあり、そのうえでエリク・モンバエルツ監督がどういったサッカーを趣向するのか。マリノスのサッカーとはいったい何なのか。未来のためではなく、いま勝つためにそれが必要なのだ。

 

 

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