「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

失点は5試合連続となるセットプレーから喫した [2nd1節山形戦レビュー] 藤井雅彦 -1,459文字-

 

ゲーム序盤、マリノスのパフォーマンス内容は素晴らしかった。特に前線の選手の好調ぶりが光り、1トップの伊藤翔に2列目の三門雄大、齋藤学、そしてアデミウソンが効果的に絡んでゴールに迫る。両SBも高い位置で絡んで少ないタッチ数でボールが動き、しっかりと相手ゴールに向かっていた。

それが結実したのが12分のゴールである。ディフェンスラインのファビオから右SB小林祐三へ。バウンドボールをワンタッチで喜田拓也に渡すと、喜田もダイレクトで前方の三門へ。三門は相手最終ライン背後へ走り込んだ伊藤にすかさずパスを出し、伊藤は巧みなドリブルから折り返す。ゴール前で待っていた齋藤は押し込むだけだった。多くの選手が絡みながらも手数をかけ過ぎない、美しいゴールが生まれた。

 

https://youtu.be/_Iofp1Avb44?t=1m1s

 

4-3-2-1_2015 とはいえ偶発性が高いゴールだったことは、その後の拙攻に次ぐ拙攻を見れば明らかである。どこかでタイミングが合わずに攻撃がノッキングしたのは一度や二度ではない。というよりも、あんなに美しいゴールは1試合に何度も生まれないということだろう。あくまで各選手が即興でプレーした結果、見事にハマった。あとはこのリードを守りながら、相手の出方次第で2点目を狙えばいい。「マリノスなら1-0で終わらないといけないし、その中で2点目を狙うゲームだった」(伊藤)。難しいことではなく、やり過ごせばよかった。

 

下バナー

 

それができないのが、いまのチームの最大の課題だろう。失点はこれで5試合連続となるセットプレーから喫した。相手のロングスローを警戒していたフシもあるのだろう、ショートスローに対して反応が一歩ずつ遅れた。ゴール前に入ってきたボールは、応対した齋藤の足に当たってから相手選手に触れたという不運もあったが、結果的に得点者はフリーになっていた。前半終了間際という時間帯も最悪で、精神的なショックも小さくなかった。

山形3-4-2-1 後半45分間については、見るべきところはあまり多くない試合であった。マリノスは全体のバランスを崩し、最終ラインと前線が間延びし、選手同士の距離感が悪くなった。これでは序盤のような流動的なパス交換はできず、単発の攻撃ばかりになる。アデミウソンはガス欠なので完全に消えてしまい、齋藤は左サイドから中央へカットインするワンパターンばかり。試合を決めるシュートも入らなかった。

そして中村をボランチで起用した是非だが、この試合だけで何かを結論付けるのは早計だろう。ただ、少ないタッチ数で周りを使うプレーには好感が持てた。トップ下の位置から下がってボールを受ける中村はドリブルキープでリズムを作るが、それとは違ってパスで周囲を操る。とても地味な役回りだが、ボールを失う場面は皆無に等しかった。あとはこの役回りを本人が続けられるか、あるいは楽しめるかだろう。

今後に向けて楽しみな要素があったのは事実。でもその試合に勝ち点3がないのは寂しいかぎりだ。1-0のスコアでいいから、勝って振り返るべき2ndステージ開幕戦だった。

 

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ