「しっかりとゴールを決めながら修正していきたい苦しみながらも点を取り続けていきたい」 甘さを捨て、自らを研ぎ澄まし、植中朝日は高い場所を目指し続ける。
キャンプ打ち上げの意味合いもあった松本山雅FCとの練習試合で、植中朝日は2得点をマークした。対外試合初戦の横浜FC戦でも1得点し、キャンプ中のトレーニングマッチは3戦3発。数字だけで語るならば、まずまずの結果である。
しかし松本山雅戦後の表情は終始曇ったまま。
「4点くらい取れたので、そこだけ。2点取れたことよりも4点取れなかったことが終わったばかりの感想としてある」
カテゴリーが下の相手との練習試合である。チームとして優位性を保てるのはある意味で当然だろう。必然的にストライカーのゴールチャンスは増える。仕留めるか、仕留められないか。そこに満足していない。
「チャンスの場面をもっとしっかりと決めないといけない。詰めの部分はずっと課題。チャンスをしっかり決めていれば、去年もさらに得点を取れただろうし、そうすれば出場時間も増やせたと思う」
近くに最高のお手本がある。昨季、22ゴールでリーグの得点王に輝いたアンデルソン・ロペスだ。見た目は屈強なストライカーに見えても、実際には柔らかさも併せ持つ万能型である。
「ゴール前での冷静さや、もうちょっと遊び心があるような気持ちを持つことも大事かなと。シュートの時にGKのタイミングをずらすとか、ゴール前で相手も絶対にやらせないという気持ちがある中で、自分は逆に冷静になって相手を翻弄するような技術を身につけたい。ロペスはそういったところも上手い」
3ゴールと数字だけ見れば消化不良に終わった昨季だが、飛躍のきっかけを掴んだことも間違いない。ACLや世代別代表といった高い場所の空気を吸った経験は、彼をもっともっと貪欲にさせた。
「今年は、個人で状況を打開できるような一発のミドルシュートとか、そういった部分も身につけていきたい。ACLの対戦相手や世代別代表の同じポジションには、デカいのに速くて、数的不利でもひとりでゴールを決める選手がいる。自分もそこを目指さないと、もうひとつ上のステージには進めないのかなと思った」
当面は夏のパリ五輪出場を目指し、ゴールと自信を積み上げていく。マリノスで試合に出場しなければ、日の丸など夢のまた夢。練習試合での1ゴール、練習での1本のシュートが人生を大きく変えるかもしれない。
「自己評価としては全然高くない。でも、その中でもしっかりとゴールを決めながら修正していきたい。そうすれば自信を持ち続けられるので、苦しみながらも点を取り続けていきたい」
キャンプで決めたゴール数に満足する必要はない。キャリアを切り拓くためには、人生を変えるためには、よりたくさんのゴールが求められるのだから。
1年前とまったく違う背番号14がいる。甘さを捨て、自らを研ぎ澄まし、植中朝日は高い場所を目指し続ける。
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