「どうもこうもない。まだまだ甘いんじゃないですか」 仲川輝人が怒気を込めた言葉を真摯に受け止めるべきだろう [J32節 G大阪戦レビュー]
ガンバ大阪の守備ブロックを崩せず
対策を練られたセットプレーから、相手のファーストシュートで失点したのはたしかに痛かった。次節以降に向けて間違いなくブラッシュアップすべき課題ではあるが、FC東京戦や京都サンガF.C.戦の直後にも述べたように、過度に意識しすぎるのも違う。メンバー構成的に高さ勝負は難しい面があり、今のメンバーにデメリットがあるとしたらメリットもある。
相手の守備ブロックを崩せなかったことにフォーカスすべきだろう。
マリノスは序盤から攻めに攻めた。終始ボールを持ち続け、ほとんどハーフコートゲームを展開。ガンバ大阪の攻め手はパトリックをターゲットにしたロングボールくらいで、それもほぼすべてが単発。セットプレーから先制に成功したことも大きいが、怖さのあるオフェンスは皆無に等しかった。
ただし時間経過とともに守備ブロックがさらに硬度を上げていった点は見逃せない。マリノスのボール回しに対する慣れなのか、あるいは心理面における自信なのか。残留争いの渦中で大きなプレッシャーにさらされているとは思えないほど、力強い守備で対抗してきた。
マリノスの攻めが悪かったとは思わない。枚数をかけながらポジションを流動的に取り、セットプレーでも果敢にゴールを狙った。この試合、先発したフィールドプレーヤー10人全員がシュートを放ち、CKは前後半合わせて16本。どれだけ攻めていたかがひと目でわかるスタッツだ。
しかし、1点が遠かった。トップ下で攻撃のタクトを振るったマルコス・ジュニオールは「相手GKはいいセーブを見せていたし、勝つべき試合ではなかったのかなと考えてしまうようなゲームだった」と首を力なく横に振った。
喜田はまっすぐ前だけを見つめていた
勝利すれば他会場の結果次第で優勝が決まる可能性のある試合だったおかげで、緊張やプレッシャーで普段通り戦えていなかったという見え方、論調はどうしても出てしまう。
それに関しては、筆者はとてもナンセンスだと思っている。クロスがゴール前に合わなかったこと、ラストパスが相手にブロックされたこと、すべて紙一重である。クロッサーとしてキーマンになっていた永戸勝也が「極端なことを言えば、タイミングが合えばゴールになる場合もある」とシンプルに語ったとおりだ。
主将の喜田拓也は毅然とした態度で言い放つ。
「今日の試合にいろいろなものがかかっていたのは分かっているけど、プレッシャーどうこうで片付けてしまうのは少し乱暴な気がする。なぜこうなったのか、できたこと、できなかったこと、それをしっかり分析して次の試合に臨みたい」
過度にプレッシャーを感じていた選手は特に見当たらなかった。そんな実態のないところに敗因を求めるよりも、仲川輝人が怒気を込めた言葉を真摯に受け止めるべきだろう。
「どうもこうもない。個人の技術が足りなかったり、イメージの共有もなかったり。弱いです。まだまだ甘いんじゃないですか」
この日のガンバが勝利に対して執念を出していたことを認めつつも、上回れなかったのは自分たちの技術や戦術が足りなかったから。クロスに対する入り方も、ゴール前のコンビネーションも、その手前のビルドアップも、まだまだ向上の余地がある。
「いろいろなサッカーがある中で、どちらかというとマリノスのサッカーをやりたい。ガンバさんのサッカーをどうこう言うつもりはなくて、ただこういうサッカーを超えていく、凌駕していくことをずっとやってきた」
喜田はまっすぐ前だけを見つめていた。