「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「大丈夫、彼は絶対に決めます。宮市くんはそういう星の下に生まれている選手。残り6試合でそういうシーンが必ず訪れて、決める。完璧な伏線回収です(笑)」 [下平匠の「匠の視点」]

 

(匠の視点vol.20)

構成:藤井 雅彦

 

 

OBの下平匠氏が横浜F・マリノスについて語り尽くす『匠の視点』。

今回の試合回顧はもちろん、見事な逆転勝利を収めた鹿島アントラーズ戦。

意外と知られていない遠征帰りのバスの過ごし方、サービスエリアでのサポーターとの交流などなど、ピッチ外の話題も盛りだくさん。

そして下平が注目したのは山根陸と宮市亮。

彼らへの期待と激励は必見だ。

 

 

 

ブラジル人選手は止めなければ家に帰るまで陽気に歌っているかもしれない(笑)

 

みなさん、こんにちは。南葛SCの下平匠です。

鹿島とのアウェイゲーム、見事に勝利してくれましたね。リーグ戦では3試合勝ちなしでちょっと嫌な空気になりかけていたかもしれません。だからこそ内容を度外視して、勝つことに大きな意味があったと思います。

 

 

そういえば、帰りの高速道路が大渋滞だったとか。このコラムを読んでくれている方の多くは現地観戦している熱烈なサポーターさんだと思います。みなさん、お疲れさまでした。渋滞ってどうしようもないから本当に困ってしまいますよね、大変な気持ちは僕にもわかります。

 

 

でも、勝ったから最高のアウェイ遠征だったはず!!

マリノス在籍時代、鹿島戦からの帰りはもちろんチームバスでした。ただ、2014年から2018年途中までの間にアウェイ鹿島戦は一度も勝てず……。だから帰りのバスの記憶はほとんどありません(笑)。

試合に勝つか負けるかで気分が大きく変わるのは選手もサポーターも同じです。勝てばバスに乗り込む瞬間からテンションが高くて、みんなで記念撮影してSNSに投稿したり。ブラジル人選手は止めなければ家に帰るまで陽気に歌っているかもしれない(笑)。

サービスエリアでの休憩ではサポーターの方に遭遇することもあって、お互いの接し方や雰囲気がまったく違います。勝てば自然と笑顔になれますし、そこでも喜びを分かち合えます。

これは南葛SCでの話ですが、勝った試合の帰りのサービスエリアでサポーターの方に「おめでとうございます。なんでも食べてください!!」と言ってもらったことがあります。もちろん最初は遠慮しましたよ。でも本当に嬉しそうに勧めてくれたので、甘えてご飯をご馳走になりました。からあげ定食、美味しかったなぁ(笑)。

Jリーグではそこまで近い距離感は難しいかもしれないけど、勝って嬉しいのはカテゴリーが違っても絶対に同じ。だから負けると反対に、本当にしんどい。

あらためておめでとうございます。

 

 

山根陸選手が素晴らしい働きを見せていた。上手い選手がこんなにも闘えるなら、それは理想的です

 

試合を振り返りましょう。

鹿島戦はいつの時代も似たような展開になります。最初から最後までタフな肉弾戦で、綺麗なサッカーにはなりにくい。

立ち上がりから鹿島のプレスが強くて、マリノスはだいぶ押し込まれてしまいました。その悪い流れを断ち切れず、セットプレーから先制点を許した時は嫌な雰囲気になっていたと思います。

まず、セットプレーから同点に追いつけたことが大きかった。どんな形からでもゴールネットが揺れたら同じ1点だけど、相手が得意にしているセットプレーから得点できたのは、空気がガラッと変わる要因になったのかなと。

このゴールをきっかけに、徐々に前でボールが収まるようになって、セカンドボールも回収しやすくなった。2失点目を許さなかったことも含めて、自分たちで流れを手繰り寄せたからこその逆転勝利です。

鹿島のストロングポイントは、相手が嫌がることを徹底してやるところ。特にマリノスのように明確なスタイルを持ったチームには強さを発揮します。その意味で、逆転勝利の価値は本当に大きい。

個人にフォーカスすると、山根陸選手が素晴らしい働きを見せていました。

 

 

マリノスの育成組織出身なのでボールをつなぐことはそつなくできる。それにプラスして泥臭く戦えるのが彼のすごさ。上手い選手がこんなににも闘えるなら、それは理想的です。

まだ20歳で、将来が本当に楽しみな選手。これからの成長次第ではボランチの定位置を奪うくらいまでいける可能性もある。今季は渡辺皓太選手も欠かせない存在になっているけれど、この大事な試合で先発起用されたのだから3番手という扱いには見えません。キーボーも含めて、その時々の調子やコンディションで3人の中から2人を選ぶという考え方なのかもしれません。

 

 

あとは決勝点にも絡んだように、もっと高い位置でフィニッシュに関われたら最高。ゴールに絡む中盤の選手は怖いし、価値が高まる。今季はキーボーや渡辺選手も得点を決めているので、自分なりの点を取り方というか“型”を見つけられたらいいと思います。ミドルシュートもひとつ、クロスに入っていくのもひとつ。

 

 

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