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小林将天、サッカー漬けの日々。その育成に割かれる労力から、ポテンシャルの高さが浮かび上がる【2024 沖縄国頭キャンプ】

 

FC東京U-18からトップチームに昇格した小林将天。撮影:後藤勝


 鈴木彩艶がアジアカップの失点によって批判に晒されているが、この現象はゴールキーパーが完成していく過程のひとつとして考えると非常に興味深い。ポテンシャルの高い選手は素材としてエリートの扱いを受け、時間も人手もかけて鍛え上げられ、活躍の舞台を得るが、その舞台でうまくいかない事態を経験するイベントがほぼ確定的に起こる。FC東京の歴史だけを考えてみても、土肥洋一、塩田仁史、権田修一がそれぞれ軌道に乗るまでは不安定な状態を経験している。ゴールキーパーはまずプロの試合あるいは代表の試合に出るために必要な数多くの基本を修得していかなければならず、その基礎の積み重ねに一定の時間を要し、さらにある程度仕上がったあとも経験の積み重ねが求められる。
 ゴールキーパーは大変だというほかはないが、宮崎キャンプでも非常に興味深い光景が見られる。練習を見ていると、身体は小さくとも完成しきった児玉剛が一見して公式戦にすぐ出られる状態であるとわかるのに対し、身体能力が高くポテンシャルに恵まれている小林将天はまだプロの世界に足を踏み入れたばかりであり、多くの基本を学ぶための時間が必要であるとわかる。そして実際に、小林は多くの時間を個の向上に費やしている。もちろん、出場機会がすぐ巡ってきた場合には完成度云々を言う前に現状のベストを出していくしかないが、焦らず中長期的に、一つひとつやるべきことをやって詰めていく、完成度を高めていく必要がある。
 
◆居残りの理由とは
 

藤原寿徳GKコーチ。撮影:後藤勝


山下渉太アシスタントGKコーチ。撮影:後藤勝


 1月21日は全体練習中に小林のプレー機会が多くあり、その量の多さによって物足りない点が可視化された。その弱点を補強または修正するために、午後の部の全体練習が終わったあと、小林は藤原寿徳GKコーチや山下渉太アシスタントGKコーチらとともに約1時間の居残り練習をおこなった。その後はフィジカル系のメニューを約30分。さらに、宿舎に戻ってからもやるべきことがあるという。そのくらい、現在の東京はチームで時間を管理し、人手も費やして、ひとりの新人ゴールキーパーを鍛え上げようとしている。試合に出せるゴールキーパーを育てていくためには、このくらいのコストを費やさなければいけないのだと、そして波多野豪や野澤大志ブランドンのように完成間近の選手を眺めることも重要だが、まだ素材に近い状態にある未完成の小林のような選手がどのように育てられていくのかを知ることも重要だと、あらためてわかる一日だった。
 
 小林がフィジカルトレーニングをおこなっている間、藤原GKコーチに居残り練習の狙いを訊いた。
 

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