安部柊斗、涙と笑いのお別れ。青赤魂を携えてのベルギー行き。「『大学行ってこい』って言われて、最初は落ち込みましたけど……」トップに昇格出来なかったあのときからの逆転人生【2023 J1第21節 FC東京vs.鹿島】
7月16日、味の素スタジアムでおこなわれたJ1第21節鹿島アントラーズ戦は1-3でFC東京の完敗に終わった。それでも東京はこの結果を引きずらず、すばらしいセレモニーでベルギーのRWDモレンベークへと完全移籍する安部柊斗を送り出した。
頭髪を青赤に染めたまま渡欧するのも前代未聞なら、スピーチの内容も前代未聞。誰に対しても誠実に対応する真面目な“あべしゅー”らしく感動的な要素を盛り込みながらも、現代の若者らしくちゃっかりしたところもある摩訶不思議なお別れだった。
ベルギーで待つ小川諒也からのメッセージ映像が流れたあと、スタンドからのあべしゅーコールに導かれて安部のお別れの挨拶が始まった。
「FC東京のファンサポーターのみなさん今日は熱い応援ありがとうございました。そして鹿島アントラーズファンサポーターのみなさん、本日は味の素スタジアムにお越しいただきありがとうございます。これからもJリーグはFC東京と鹿島アントラーズさん、この2チームで引っ張っていきましょう」
対戦相手へのリスペクトをにじませつつ、多方面への感謝を述べ、明治大学の大先輩であり憧れである長友佑都に追いつき追い越せるようにという意志を示したあとから、あべしゅー節が炸裂した。
「自分のユニフォームを買ってくれたみなさま、途中で自分がクラブを去ってしまうことになり、本当に申し訳ございません。いままで自分のユニフォームを買ってくれたみなさまは、ぜひ引きつづきモレンベークのユニフォームを購入してください。お願いします!」
そこはかとなく矛盾を感じさせるこの言葉には愛情と失笑のこもったブーイングも飛び、いっそう和やかなムードに。ここで指導者への感謝、そして両親への感謝を述べて再び流れは変わり、安部の声にもこみ上げるものがあった。しかしそのあとに再びプロモーション的な内容が入る。
「これからはベルギーと日本というちょっと遠い国になってしまいますが、LINEとかでやりとりしましょう。そして最近ぼくインスタグラム始めたので、みなさんフォローお願いします。あの、ここに今日来ていただいている方がフォローしてくれたら3万(人)は行くと思うので、ぜひよろしくお願いします」
そしてまたも沸き起こる手加減したブーイングをものともせず、安部はこうつづけた。
「本当にいままでありがとうございました。そして約3年半、FC東京、本当にありがとうございました。愛してるトーキョー!」
最後は強引に「愛してるトーキョー!」で締めた安部。沸き起こるあべしゅーコールはさながらプロレス、涙も乾く癒し系の壮行セレモニーで長い一日が終わった。
◆セレモニーのあとで
セレモニーが終わると、ピーター クラモフスキー監督はさっそく記者会見へ。「結果が出せず残念に思っております。それと同時に安部柊斗を勝ちで送り出すことが出来ずに残念に思っております。彼のことを海外に行っても応援していきたいと思っております」と述べた。この会見が終わり、しばらく経ってからミックスゾーンを東京の選手が通り始める。そして最後のほうになって“あべしゅー”がやってきた。
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