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「7日にFC東京とやりたかったというのがわたしの本心です」(倉又監督)【無料記事/トーキョーワッショイ!UC】第18回東京都サッカートーナメント決勝 横河武蔵野FC対日本体育大学(08/25)[6,512文字](2013/08/26)

◆倉又日体、武蔵野のパワーに敗れる

 

 

JFLと関東大学リーグ1部、社会人と学生の最上位カテゴリー同士の戦いは横河武蔵野FCに軍配が上がった。
天皇杯東京都予選を兼ねておこなわれる東京都サッカートーナメント。ことしは学生系の部を早稲田大学(亜細亜大学に1-0○、東京ヴェルディユースに5-1○)と日本体育大学(日本工学院八王子専門学校に0-10○、駒澤大学に0-1○)が勝ち抜き、各々、準決勝で横河武蔵野FC(エリースFC東京に3-0○)と東京23FC(FC町田ゼルビアに0-1○)に挑んだ。早稲田大学は横河武蔵野FCに1-0で敗れたが、日本体育大学は東京23FCに1-3で勝利。異なるカテゴリー同士の決戦となった。
日本体育大学のキャプテン、10番稲垣祥は「前に大きな選手がいて、そこをめがけてどんどん蹴ってくるチームはなかなか関東大学リーグ(1部)にはいない」と、未知との遭遇に抗いきれなかったことを悔やんだ。この東京都サッカートーナメントの学生系の部では、蹴って走るサッカーでおなじみの駒澤大学と戦うことができたが、現在駒澤は2部。1部ではこのようなスタイルのチームと対戦する機会がない。不慣れであったことが、劣勢に拍車をかけた。さらに日本体育大学は主力のフォワード、北脇健慈と田中豪紀を負傷で欠いていた。金守貴紀と岩田啓佑が中央で睨みを利かせ、経験豊富な横河武蔵野FCと戦うには不利な状態だった。
スペースのない5バックに対して右サイドハーフの梅村徹が起点になれず、倉又寿雄監督は「もうひとり、ふたり、関われる選手がいれば」とほぞを噛んだ。キックオフから攻められっぱなしだった日本体育大学だが、前半30分、12本のパスをつなぎ13本めが「当て出し」となってスローインを獲得したシーンから、ようやくボールを支配できるようになる。しかしそこから先でフィニッシュをかたちづくれない。28分にあったディフェンスラインの広瀬健太から中盤の稲垣に鋭いタテパスを入れ、ウラに飛び出そうとするフォワードの長谷川健太を狙ったシーンのように、タテのクサビからの三人め、あるいはタテパス一本でワイドの選手を走らせる攻撃も、なかなかシュートに持っていけなかった。
横河武蔵野FCは後半22分、金守のインターセプトからパスを受けた右アウトサイドの林俊介が中へと切れ込み、そのまま強烈な左足のロングシュートを決めて先制。さらに後半40分にはシャドーの矢部雅明が、途中出場小林陽介の左からの折り返しを、右から走り込みながらのヘディングで叩きこんでダメ押し。結局、力の差を見せつけて2-0で横河武蔵野FCが勝利、第18回東京都サッカートーナメントの優勝と第93回天皇杯本大会への進出を決めた。
ことし3月まで在籍していた古巣のFC東京を思い、日本体育大学の倉又寿雄監督は「7日にFC東京とやりたかったというのがわたしの本心です」とぽつり。「東京ダービー」はならなかった。
いっぽう、横河武蔵野FCは群馬県代表、ザスパ草津チャレンジャーズとの一回戦を勝ち抜けばFC東京と対戦することになる。昨年はゴール前のスペースを消し、守りに徹して東京に勝ったが、ことしはこの対日本体育大学戦のような、主導権を握る戦い方で臨むのか。二年連続の東京都代表としての経験値を活かし、昨年柏レイソルに敗れて果たせなかったベスト8進出という夢のつづきを見られるよう、全力で眼の前の試合を戦うのみだ。

 

 

 

◆リザルト
2013年8月25日(日) 18:00キックオフ 味の素フィールド西が丘、東京都
横河武蔵野FC 対 日本体育大学
【マッチコミッショナー】不破信
【主審】飯田淳平(国際主審)【副審】佐藤貴之、宇田賢史(ともに1級審判)
【天候】曇、風無し、気温26.3℃ 湿度67% 【ピッチ】全面良芝、水含み
【入場者数】871人
横河武蔵野FC 2-0(1st:0-0) 日本体育大学
【得点者】林俊介(67分=横河武蔵野FC)、矢部雅明(85分=横河武蔵野FC)
【警告】横野敏大(31分=日本体育大学、遅延行為)、中田充樹(34分=日本体育大学、ラフプレー)、梅村徹(89分=日本体育大学、反スポーツ的行為)

 

 

○試合経過

 

 

ファーストハーフ45分間のうち、キックオフから30分までは横河武蔵野FCのペース。3-4-2-1で両アウトサイドが高い位置に張り出す陣形で、シンプルにウラを衝く、タテに勢いがある武蔵野の攻撃に、日本体育大学は押し込まれ、防戦一方になる。重心がうしろに重い日本体育大学はディフェンスラインが揃わず、後ろ向きの後手にまわった守備を余儀なくされ、前半8分のミドルシュート以外にほぼ決定的なチャンスはなく、武蔵野の攻撃がつづく。30分を過ぎたころ、日体大がようやくラインを上げてパスをつなぎ始める。12本のパスをつないでスローインを得ると、そこからぱたパスをつなでボールを支配。35分には、この試合何度か見せた、中盤で10番の稲垣祥に当ててからウラを狙うパターンでコーナーキックを獲得するなどチャンスをつくるが、ほとんどシュートらしいシュートは撃てなかった。トータルとしては、体力的な問題もあるのか、互いに様子を見ながらの抑制したゲーム運びに終始した恰好。勝負は後半45分間に持ち越された恰好。
セカンドハーフは日本体育大学にもチャンスができシュートも増えるが、横河武蔵野FCのペースは変わらず。9分には金守貴紀のパスを受けた小野祐輔が左を持ち上がってシュート、10分には1本のパスでやはり左を平岩宗が抜け、得点の匂いを漂わせ始める。すると22分、中央右から中に切れ込んだ林俊介が、遠めから左足の強烈なロングシュートを豪快に決め、とうとう武蔵野が先制する。その後もセットプレーで何度となくチャンスをつくり、30分以降は再び武蔵野が圧倒。40分には小山大樹のインターセプトから矢部雅明→忰山翔とつないで右の忰山から左に大きな浮き球、これを1分前に小野に替わって入ったばかりの小林陽介が折り返し、走り込んだ矢部が頭で決め、とどめを刺した。

 
○吉田康弘監督(横河武蔵野FC)の談話(概要)

 

 

中二日の非常に厳しいスケジュールの影響を感じさせないくらい、最後まで動いて、走って、戦った。それが勝因だと思います。
(交替選手がフォワードだったのは?)90分間勝ちに行く、点を獲りに行く姿勢を見せたかった。どんな状況になっても戦いつづける姿勢を持っていたい。
(前半は支配していながら無得点だったが後半勝負で大丈夫だという感触はあったのか?)
何度かチャンスをつくれていた、そこを決めることが課題だとは思うんですけれども、チャンスがあったことに一喜一憂せず攻めつづけてくれたので、それはもう、ぼくがやろうとしたサッカーですね。
(天皇杯への出場が決まりましたが?)東京都の予選を勝ち抜くのはかんたんなことではないので、そこはまず選手がよくがんばってくれたと思います。昨年レイソルに負けたことを、選手たちは苦い思い出として捉えていました。もう一回戻ってきたいという強い意思が、この勝利につながったのかなと思います。
(勝ち進めば二回戦で当たるFC東京は?)まったく意識していないですね。毎試合、楽な試合はないと思いますし、絶対に勝てない試合もないと思いますから、眼の前の試合を一戦必勝でやるだけですね。
(昨年Jクラブに勝ったことは自信になっているか?)自信というより、そこに行く道のりが厳しい、それでももう一回Jと戦いたいという気持ちがあったから、きょうの結果になったのかな、と。

 
○倉又寿雄監督(日本体育大学)の談話

 

 

あれだけパワーのあるサッカーをされるとわかっていながらも、それになかなか対応しきれないまま。ただ30分過ぎくらいからはある程度、自分たちもボールを保持できるようになったし、いいかたちでパスが入るようになったので、(問題は)最後のフィニッシュのところかなと。
横河さんはクサビのパスを入れさせないように、しっかりと真ん中を絞ってきた。後半は中田(充樹)を(前めから中盤に)下げてルーズなポジションにさせて、そこからつくろうと思いました。そこから何本かは入ったんですけれども、なかなかそこから前に行く自分たちのかたちをつくれずに時間が過ぎていった、という感じでした。ああいう時間帯(後半22分)に自分たちのミス(※インターセプトされた)からの失点になってしまったので、疲れが出たときにどうするかということは(今後)やっていかないといけない。(その失点は)あれだけドリブルされてのロングシュートだったので、守備の面でも拙い部分があったのだろうし、課題を詰めていかないと、大学リーグでも同じような場面が出てきてしまいそうに思います。
(前線でボールが収まらなかったが?)このあいだの試合で北脇(健慈、11番=レギュラーのFW)がちょっとけがをして。北脇が前で長谷川(健太)が少し落ちるかたちをつくっていたなかで、きょうは逆に長谷川を前に出して中田を少し下げてという動きをつくろうとしたんですけれども、長谷川が下がってきてしまったりしてそういったところを修正しようと思ったんですが、なかなかボールが収まりませんでした。
切り換えは先日(三日前)の東京23FCのときよりは全体的に疲れていて劣っている部分があったんですけれども、切り換えが遅くなってやられたのは、あの失点の場面だけでした。肝心なところで遅くなってしまったことは悔やまれます。
3バックの両サイドのワイドが張ってかなり高い位置をとってくる相手とやったことがないなか、(横河は)ほんとうにパワーを持ったチームで、すごくいいチーム。こうした一発勝負を戦ううえでは、ああいう思い切ったサッカーをやるのも大事なのかなと思います。(それに対して自分たちは)受け身になってしまい、そこを修正できませんでした。
(ハーフタイムにはどんな言葉をかけましたか?)そういうサッカーをしてくるとわかっていてのことなのだから、焦る必要はない、という話をしました。前半の途中から自分たちもボールを支配できている部分があり、まるっきりやられているという感じではなかったので、後半もそういう(支配して攻撃)ところを出せると、選手に自信を持たせるように。選手はちょっとやられているという気持ちがあったようですけれども、そういうなかでも自信を持てるようにと。

(決勝まで来られたことについては?)そのことには満足していますし、一試合ごとにまとまってきたチームで。これから(秋季の)大学リーグがありますけれども、リーグを視野に入れた天皇杯という(位置づけ)戦いのなかでは、満足しています。できればこういうチームにもしっかり勝って、東京都の代表になって、1日は群馬県の代表に勝ち、7日にFC東京とやりたかったというのがわたしの本心です。
(ここまで半年チームを成長させてきて、きょうは眼の前の表彰式を見て悔しい思いを刻み、どのような手応えが?)いろんなタイプのチームとやることで選手もわかったでしょうし……ここぞというときの厳しさ、そこをミスったら入れられてしまうよ、という、大学では味わえないこともあると思います。そこはすごく勉強になったと思うし、そういうところを出せるようにしていくのがわたしの仕事です。

 

 

 

◯結果的に決勝ゴールとなった先制点を決めた林俊介(横河武蔵野FC)の談話

 

 

緊張は多少はありましたけど、緊張より自信のほうがありました。
(前からアグレッシヴに行くのは狙いでしたか?)それは狙いで、逆に日体大さんがガツガツくるかと思っていたんですけれども、ウチが先手をとって。
(前半は右サイドの絡みが多かったと思うんですが?)左もあったと思いますけど、右は小野祐輔がタメをつくって、時間をつくってくれるので。ぼくはオーバーラップして。それはいつもの狙い通りにやれたと思います。
(前半、点が獲れなかったことに関しては?)
焦れずに前からプレッシャーをかけて奪ったらシンプルに相手のウラを衝いていく戦い方はできていたので、戦い方を変えずに相手が後半焦れるのを待とうとハーフタイムに話をしていました。
(先制点は?)
ああ、もう、あれはもう、先制点の前に、ぼくが何回かゴール前に出て撃たなかった場面があったので、次は撃とうと。割り切った気持ちで、思い切って撃ちました。
(昨年、柏レイソルに敗れた天皇杯に向けて臨む気持ちは?)
またこの舞台でやれるチャンスが獲れたので、まずは思い切ってやりたいというのと。去年と大きくちがうのは、自信を持ってやれているので、自分たちのサッカーを信念を持ってやり、どれだけ通用するのか、一戦一戦を戦っていきたいと思います。
(FC東京に勝ち、柏レイソルにあと一歩というところまで競った経験がいまに活きているところはありますか?)
そうですね。FC東京戦は特にそうなんですけど、相手のストロングポイントを消しながらやるということが前提にあったので、自分たちの特徴を出すよりは相手の特徴を消す、かなり受け身のサッカーをしていました。その点、ことしは「自分たちのサッカーをやりながら」相手の特徴を消すという戦い方ができているので、それが本大会でJリーグのチーム相手にもやれたらなと思います。
(いい意味で天皇杯本大会に進むのが当然という気持ちがあり、目標が高かったからこの決勝に勝てたという一面はありますか?)
たしかに本大会は目標なんですけど、ここ(東京都サッカートーナメント)で負けてしまったら先はないので、とりあえずは眼の前の試合を一戦一戦、という気持ちで統一できていました。本大会のことはまず考えず、きょうの決勝のことだけを考えてやりました。
(ではむしろ、一戦一戦、眼の前の試合を必ず獲るという気持ちが強くなってきたことが勝因?)
そうですね。特に(ノックアウト方式の)トーナメントなので、負けられない戦いで。どうしてもリーグ戦、JFLだと、引き分けもある。トーナメントでは勝ち負けが必ずつきますから、絶対勝つ、という気持ちふだん以上に自然に出ていたのかなと思います。逆にこういう気持ちがふだんのJFLでも出せれば、いまみたいな順位(18チーム中12位)にはいないと思うんですけど、その辺はリーグにも還元して気持ちを出していければなと。
(昨年は天皇杯をきっかけにリーグ戦も後半戦に調子を上げていきましたが?)
これでリーグ戦とカップ戦とを合わせて5連勝なんですが、やっと勝ち癖がついてきたなと。勝ち始めるとチームの流れがよく、大崩れはしなくなるので、これにおごらず、ふだんどおりに自分たちの戦い方ができればと思います。

 
○支配できない状況のなか、中盤でボールを受けてウラへのパスを狙っていた10番主将、稲垣祥(日本体育大学)の談話(概要)

 

 

ミスも多く、反省しています。チームにはだいぶ迷惑をかけました。(故障中の北脇健慈や田中豪紀の)かわりに入った(中田)充樹もあいだのところで受けられる選手なので、そういうところも出せればよかったと思いますけど、仕方がないですね。
前に大きな選手がいて、そこをめがけてどんどん蹴ってくるチームはなかなか関東大学リーグにはいない。この予選で当たった駒澤はそんな感じでしたけど、なかなか1部にはいないので(※駒澤は現在2部でふだんのリーグ戦では対戦する機会がない)、厳しいなと思います。
(前半の)途中でバックラインの選手たちに「自分たちの時間をつくろう」と話をしていました。前に攻め急がずに(相手のプレッシャーが)来ていないなら、うしろでゆっくり廻していていい、と伝えて。とにかく自分たちのボールを保持する時間を長くしようとはしました。けど、展開のところがうまくいかなくて。意思疎通ができず、シュートまで持っていけなかった。どうやって攻めるのか、どこが空いている、相手が来たからどう攻める、ということができなかったのは反省点ですね。

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