「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【トピックス】検証ルポ『2023シーズン 緑の轍』 第三章 齋藤功佑「共通認識を高め、要求し合える関係をつくることが勝つために必要だった」(23.12.26)

選手間をつなぐ役割を果たした、齋藤功佑の功績は大きい。

選手間をつなぐ役割を果たした、齋藤功佑の功績は大きい。

第三章 齋藤功佑「共通認識を高め、要求し合える関係をつくることが勝つために必要だった」

■ボールハンター稲見哲行の台頭

5月17日、J2第16節の栃木SC戦の38分だった。腰を痛めた加藤弘堅がピッチから退き、代わりに稲見哲行が投入される。

プレシーズンの静岡キャンプが始まって早々、筋肉系のトラブルで離脱し、これが今季2試合目の出場。地元の栃木でチャンスを得た稲見は、大仕事をやってのける。

両者スコアレスで迎えた64分、北島祐二のクロスがディフェンスにクリアされ、セカンドボールにいち早く反応したのが稲見だった。体勢的に枠に飛ばすのが精一杯に見えたが、腰の回転を利かせ、身体を被せるように角度をつけたダイレクトシュート。密集を抜けて、ゴールに入った。

リードを奪った東京ヴェルディは、86分、阪野豊史の得点で2‐0とし、勝点3を懐に入れる。

笑顔満開の稲見はプロ初ゴールをこう振り返った。

「セカンドボールへの嗅覚を働かせ、こぼれてきそうなところに立ち位置を取りました。コースは見えてなかったですね。シュートを打てば、相手に当たって入るかもしれない。とにかく、フカさないようにミートに集中しました。今日は母や昔のチームメイト、関係者の方々などが観戦にきてくれていたので、ゴールを決められてよかったです。もちろん、自分にとって初得点の喜びは大きく、それ以上にチームにとって価値のあるゴールになったことがうれしい」

これを契機に、稲見は中盤の一角に定位置をつかむ。以降、シーズン終了まで1試合の途中出場を除き、スタメンの座を誰にも明け渡さなかった。

2年目の稲見の台頭は、ふたつの意味で重要な価値があった。

江尻篤彦強化部長が大卒新人の獲得に力を入れ始め、東京Vの育成組織が輩出する選手たちとの融合を図ったのが2021シーズンから。佐藤凌我(アビスパ福岡)、持井響太(アスルクラロ沼津)が明治大から加入した年である。

主眼が置かれていたのは、J2を勝ち抜くために不足しているインテンシティの基準をいかに引き上げるか。アスリート能力に長ける稲見はその象徴的なプレーヤーだった。

また、ボール奪取力に優れる稲見は、中盤でゲームをつくる森田晃樹と能力を補完し合える最高のパートナーである。パズルのピースがカチッとはまった感触があった。

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