「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【トピックス】検証ルポ『2023シーズン 緑の轍』 第一章 森田晃樹「ここで育った人間がチームを引っ張り、J1に上げる」(23.12.20)

森田晃樹はキャプテンの重責を果たし、シーズンを通してチームを牽引した。

森田晃樹はキャプテンの重責を果たし、シーズンを通してチームを牽引した。

第一章 森田晃樹「ここで育った人間がチームを引っ張り、J1に上げる」

■チームの背骨となり、リーグを代表する選手に

目の前にいる森田晃樹は視線を泳がせ、困っているように見えた。

城福浩監督は予想どおりのリアクションを受け、さて、どうするだろうかと考える。この場で返事をするか、それとも一旦持ち帰らせてほしいと言うか。いずれにせよ、ノーとは言わないはずだという確信があった。

2月3日、東京ヴェルディは第2次静岡キャンプを打ち上げた。翌日、城福監督は森田を部屋に呼び、キャプテン就任を打診している。

念入りに思案を重ねたうえでの判断だった。プレシーズンの時期、スタッフの意見を幅広く聞き、森田が自分の知らない場所でどんな態度を見せているのかをヒアリングした。そこで、人を選ばずフェアにコミュニケーションを取っていることがわかったのは収穫だった。

「愛想がよく、受け答えが活発な選手ではありませんが、誰に対しても丁寧に、真摯に接する姿勢はキャプテンを務める選手にとって大事な要素。森田はこのチームを背負うひとりで、もっと言えば、リーグ全体のなかであのポジションの一番手、二番手に名前が挙がる選手になってしかるべき能力の持ち主です。今年で23歳。大きく飛躍してリーグを代表する選手に、チームの背骨になってほしい。リーダーシップがあるか否かは別問題で、役職やタスクが人を育てるところもある。彼がポジティブに受け止め、チームに還元しようとすることが成長につながるはずだと」(城福監督)

5分ほど考え込んだ森田は意を決し、「やらせてください」と言った。

「プレッシャーに感じるだろうし、悩むこともあると思います。でも、そういう経験がサッカー選手をやっていくうえで、選手生活が終わったあとも自分のためになり、成長できるのではないかと考えて引き受けました。監督から信頼してもらい、おれや(谷口)栄斗などアカデミー出身の選手がその立場に就くことの意味はある。ここで育った選手がチームを引っ張って戦う。そして、ヴェルディをJ1に上げる」(森田)

新キャプテンのお披露目となった、『2023 SEASON TOKYO VERDY KICKOFF EVENT』(シブヤeスタジアム)。イベントがお開きとなって、エレベーターホールで一緒になった森田に、「驚いたね。まさかあの森田晃樹がキャプテンとは」とからかうように言うと、「僕だってそうですよ」と笑った。

こうして、2023シーズンの緑の旗手は決まった。脇を固める副キャプテンは、守備の要である谷口栄斗とマテウスだ。

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