デイリーホーリーホック

【シーズンオフ特別企画】ボランティアグループ「Tifare」代表補佐・栗原賢二さんが振り返る「今年の印象的な5試合」(2012/12/10) ※全文無料公開

今回はシーズンオフ特別企画ということで、デイリーホーリーホックでもおなじみ、ボランティアグループ「Tifare」代表補佐の栗原賢二さんに「裏方から見た、今年の印象的な5試合」を振り返っていただきました。
ボランティアの方々がどういう思いで取り組んでいるのか、ものすごくよく伝わってくる文章です。ぜひお読みください。

①3月11日(日)カターレ富山戦
東日本大震災から1年。この日は絶対に負けられない一戦でしたが、従来の水戸はこういうシチュエーションに弱かった。
数年前に石山初代社長が亡くなられた直後のゲームで、気を吐く事なく負けた悲しい記憶も蘇りました。
しかし今年の選手達は不格好でも勝ちにこだわり、「想いに応えられるチーム」へ変わった事を証明してくれた。
Ksスタに特別な力が宿り、その後のホーム高勝率につながる重要な試合だったと思います。

②5月6日(日)東京ヴェルディ戦
つくば市北条地区に甚大な被害をもたらした竜巻は、水戸のスタジアムも雷・雹(ひょう)という形で襲った。
キックオフ1時間前になってもゲート設営すらできない荒天は、まさに異常事態。

とはいえ2年前、雷雨中止となった大分戦の経験はどこかで活きていた。
「やれる所までやって、どうにもならなければ撤退! 身の安全第一で!」と割り切った指示を飛ばして、あとは天候の回復を祈るのみ。結果的に無事試合を開催でき、危惧された観客動員も4170人と予想を上回りました。
だからこそ勝ちたかった悔しさはありますが、これもチームの成長過程だと自分を納得させた記憶があります。

③6月24日(日)京都サンガF.C.戦
特に雨が降っているわけじゃないのに来場者2701人。チームが調子を落としていたとはいえ「笠松時代」を
思い出すような熱狂度の低い会場に、大きな危機感を抱きました。試合は選手が踏ん張り強豪に3-1の快勝。
飛びあがるくらい嬉しいと同時に「皆、スタジアム来いよ!」と地域に対する軽い憤りも。複雑な感想を持ったゲームでした。

④8月5日(日)モンテディオ山形戦
新時代の象徴だった塩谷司選手のホームラストゲーム。慣れた事とはいえこういう形での別れはやっぱり寂しいし、辛いし、痛い。
先制点をひっくり返され敗戦濃厚の空気を吹き飛ばしたのは、見慣れない背番号のニューヒーロー。
スタジアムDJ寺ちゃんからコールされた『山村佑樹』の名前を、人々が鮮烈に刻み付けた。
水戸を離れる人もあれば、来る人もある。それを90分+ロスタイムで表現した感慨深い一戦。この流れが大分戦の逆転劇につながったと思います。

⑤9月30日(日)ギラヴァンツ北九州戦
『J2クラブライセンス発行』の発表は、私達裏方にとっても衝撃的な出来事でした。
2009年のこけら落としから、導線すらなかったKsスタを1から育てた自負がある。
時にお客さんから厳しい言葉を受けながら、問題点を少しずつ改善しより良い会場を作ってきた。
そんな積み重ねも含めて「運営レベルはJ2だよ」と烙印押された悔しさというか、虚しさ。表面上は「やる事は今までと変わらないから。頑張ろう」と強がってたものの、心の中では「スタジアム行きたくねえなー」。
この試合負けてたら、自分も含めたクラブの未来は危うかった。本当に勝ててよかった。
2ゴールを挙げた岡本選手の涙は、胸に迫るものがありました。
狙ったタイミングではなかったけど、このゲームに向けて6千人以上の動員をかけていたからこそ、
水戸の町の希望はつながったのかなと。目に見えない成果も確かにあるんだと、自分に言い聞かせました。


【写真 米村優子】

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