デイリーホーリーホック

【闘将語録】第1回「直感をあまり信じない」(2012/3/29)

1点ビハインドでも戦況をじっと見つめていた

 第4節北九州戦、0対1のビハインドを負った展開のまま後半に入った。そして、水戸は主導権を握りながらもチャンスを生かしきれず、なかなか同点に追い付けないまま、時間は過ぎて行った。同点に追いつくために柱谷哲二監督はどんなカードを切るのかに注目が集まった。

 ついに柱谷監督が動いたのが、68分だった。しかし、投入したのは攻撃的な選手ではなかった。村田翔を下げて、ピッチに送り込まれたのは守備的MFの石神幸征であった。石神を守備的MFに置き、ボランチのロメロ・フランクを前目のボランチに置くという配置変換で攻撃に力を加えようとしたのだ。

 しかし、ゴールが決まらない。ベンチには岡本達也をはじめ、高卒ルーキーの鈴木雄斗も内田航平もいる。攻撃的な選手である彼らの投入が考えられた。だが、柱谷監督はなかなか動かず、戦況をじっと見つめていた。

 そして次に柱谷監督が動いたのは、最初の選手交代から19分後だった。87分に岡本を、さらに90+1分に加藤広樹を前線に投入。最終盤に入ってから立て続けに攻撃的なカードを切った。しかし、猛攻も実らず、0対1のまま今季初の敗戦を喫してしまった。

 攻撃的な選手の投入が遅い――そう批判されても仕方ない敗戦だ。しかし、柱谷監督はこう言う。「攻撃的なポジションで切るカードがなかった」。つまり、ベンチには入ったものの、控えの選手たちは柱谷監督からの絶対的な信頼を勝ち得てはいなかったということである。

日々の練習から納得させるだけのパフォーマンスを

 しかし、その場の雰囲気というものがある。「今日、コイツはやりそうなギラギラした雰囲気がある」。そう思える選手はいなかったのか。柱谷監督に聞いてみた。すると、「2人ぐらい俺の目を見て『出してくれ』という意志表示をしてきた選手はいましたね」と答えてくれた。それは頼もしい。誰だかは教えてくれなかったが、それだけの意思を持っている選手はいたのだ。

 だが、なぜその選手を出さなかったのか。あらためて聞いてみた。そこで柱谷監督が口にした言葉こそが、今回の闘将語録であった。

「俺は直感をあまり信じないから」

 たとえ、その時ギラギラしたオーラがあったとしても、日々の練習から納得させるだけのパフォーマンスを見せていないと柱谷監督は信頼しないというのだ。勘や偶然性に頼らないという柱谷監督の哲学がその言葉に込められている。

 それは裏返せば、日々の練習でいいパフォーマンスを見せれば、誰であろうと起用するということである。公平に競争をさせることで、チーム力を上げて行くのが“闘将流”。日々の努力という裏付けがあって、はじめて“賭け”ができるのだ。

 ピッチに送り込まれる。それはすなわち、日々のトレーニングで柱谷監督の信頼を勝ち取ったことを意味している。

20120329_photo003
【写真:佐藤拓也】

« 次の記事
前の記事 »

ページ先頭へ