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【記事無料】近藤友喜 『残した爪痕』……U-22日本代表アメリカ遠征レポート

 

 

来年のパリオリンピック出場を目指すU-22日本代表は10月にアメリカ遠征を行い、フェニックスにて14日にU-22メキシコ代表、17日にU-22アメリカ代表との国際親善試合を行なった。

横浜FCから招集された近藤友喜は、2試合ともに途中出場を果たした。

ハマプレでは、育成年代や世代別代表を追いかけるサッカーライターの松尾祐希氏(東福岡高校出身・書道部)に特派としてレポートを依頼。帰国後のコメントとともに、彼の現地での奮闘をお伝えする。

 

日の丸を背負って国際舞台を戦った経験もなければ、海外勢と戦ったこともない。

「どれだけやれるのか。わくわく感があった」

希望を胸に臨んだU-22日本代表のアメリカ遠征は、近藤友喜にとって自分の現在地を知る機会になった。

 

▼未知との遭遇

10月8日の夜に日本を経ち、ロサンゼルスを経由してフェニックスへ。移動時間は合計で15時間。16時間の時差ボケもあるなか、トレーニングは現地時間の9日からスタートした。

知った顔が少なく、昔から親交があったのは前橋育英高で2つ下の後輩で初招集の新井悠太(東洋大/2025年度東京V入団内定)ぐらいしかいない。今年4月に千葉で行われた候補合宿に参加したとはいえ、そのときは主力組のほとんどが招集外。今回が実質初めての代表活動と言ってもいい。大岩剛監督が指向する戦術の理解はもちろん、仲間との関係性を作ることも今遠征ではポイントになった。

序盤は不安を隠し切れず、体重は3kg落ちた。睡眠時間も時差ボケが重なってまともに取れない。3、4時間ほどしか眠れない日が約1週間続いたという。それでも、持ち前の明るさで徐々にチームに馴染むと、プレーでも持ち前のドリブル突破で存在感を示していく。

「U-22のカテゴリーは(発足してから)1年半近く活動しているチームで、そこに自分がパッと入ってきた。今横浜FCでやっているサッカーやポジションとはまた違う。ポジションもシステムも違えば、(目指す)サッカーも違う。毎日頭を使いながら、うまくここに順応していこうと思いながらやってきた」

▲不眠に悩まされながらも現地でトレーニングに集中する近藤

 

▼右ウイングの序列

横浜FCでは[3-4-2-1]の右ウイングバックを主戦場とするが、U-22日本代表は戦い方がまるで違う。システムは[4-3-3]がベース。特に前線からのハイプレスと素早い攻守の切り替えが求められ、相手がボールを持った際は[4-4-2]の陣形で戦う可変式の布陣を採用している。そうした状況下で近藤が与えられたポジションは、3トップの右ウイングだった。

現状のポジション争いを整理すると、一番手は左利きでプレースキッカーとしても重宝されている山田楓喜(京都)。今回は招集されていないが、小田裕太郎(ハート・オブ・ミドロシアンFC/スコットランド)は立ち上げ当初から継続して活動に参加している実力者で、身体能力の高さを生かしたパワフルな突破が魅力でCFにも対応できる柔軟性も持ち合わせている。その他ではスピードが売りの松村優太(鹿島)も有力な候補で、左サイドが主戦場で右サイドに対応できる佐藤恵允(ブレーメン)も評価が高い。

ただ、国内組の選手は所属クラブでは安定して出場機会を得られておらず、海外組も継続して結果を残せているわけではない。そうした意味でも、今遠征のアピール次第で近藤が割って入るチャンスは十分にあった。

 

 

▼デビュー戦で1アシスト

その中で迎えた14日のU-22メキシコ代表戦。相手は21年の東京五輪で銅メダルを獲得しており、言わずと知れた北中米の強豪だ。自身初の代表戦で近藤は控えに回り、まずはベンチから戦況を見守ることになった。

「右のウイングは自分が一番ストロングを出せるポジション」と自信を深めていたなかで、近藤に出番が回ってきたのは2-0で迎えた70分。山田に代わって右ウイングに入ると、アグレッシブなプレーで好機を演出する。得意のドリブルで局面を打開。周りとの連携も良く、右サイドバックの畑大雅(湘南)らと絡みながら空いたスペースにボールを運んだ。そして、ついに見せ場が訪れる。3-0で迎えた82分だ。高い位置でボールを奪うとそのまま右サイドを打開し、ゴール前にラストパスを送る。

「最初に相手からボールを奪ったときから、ずっと内野(航太郎/筑波大)の声がしていた、縦に行ったときもずっと声がしていたんで、いるだろうなと。見てはないですけど、感覚で出しました」

間接視野で状況を把握して送ったボールは、ゴール前のストライカーへ。内野がこれを冷静に決め、デビュー戦でいきなりアシストを記録した。

「今日も随所に良さは出せたと思う。アメリカ戦も引き続きこの調子でやっていきたい」

アメリカ戦に向けて、手応えは十分。「アメリカの方が力の入れ方が違う」と今遠征に団長として帯同している反町康治技術委員長が話した通り、メキシコのチームとしての出来にもの足りなさはあったが、次につながるパフォーマンスを見せられたことはポジティブな要素だった。

▲デビュー戦で結果を残したが、次のアメリカ戦でどれだけのパフォーマンスが見せられるかが勝負だった

 

▼1トップでも存在感示す

中2日で行われた17日のアメリカ戦。この試合も近藤はベンチスタートとなるなか、日本は序盤から苦しんだ。開始6分にミスから失点。何とか35分にCKから1点を返したが、45分に勝ち越し点を奪われてしまう。後半に入っても主導権を握れず、57分に失点。0-3となったなかで68分に近藤に声がかかる。

メキシコ戦同様に山田に代わって投入され、最初は慣れ親しんだ右サイドのポジションへ。しかし、チーム事情で途中から1トップにプレーの場を移した。「前半に呼ばれて、『FWで出るかもしれないからそのつもりで試合を見てて』とスタッフから伝えられていた」が、大学でしかやった経験がない。まさにスクランブル起用だったが、不慣れなポジションで近藤は持ち味を発揮する。

得意のドリブルで勝負するだけではなく、果敢に最終ラインの背後に走ってボールを引き出す。相手ディフェンダーと入れ替わって突破する場面もあり、低調な出来に終わったチームにおいて存在感を示した。

▲細谷真大(柏)の交代後、3トップの頂点に入ってチームをけん引した

 

0-4で敗れたものの、右サイドに加えて最前線でプレーできる汎用性を見せたのはプラスの材料。初の代表遠征ながら気負わずに持ち味を発揮し、大岩監督にアピールできたことは間違いない。近藤も一定の手応えを感じている。

「練習の強度が高く、スピード感も速い。『これが代表なんだな』って感覚はありました。ゲームをやってみて、意外とやれたというか、もっと『これが世界か』と感じる部分が多いと思っていたけど、ドリブルや身体能力などは通用する場面が多かった。そこは自信を持って帰ってこられたと思います」

パリ五輪に向け、大きな一歩を踏み出した。再び日の丸を背負うべく、ハマブルーのキットを纏い、さらなる成長のために前進していく。

(写真と文/松尾祐希)

※次ページに近藤友喜コメント

 

 

■近藤 友喜

【10/23取材/青木ひかる】

──U-22日本代表アメリカ遠征を終えての感想は?

「代表とか初めてで、海外とかもあんまり行ったことがないので、本当にいろいろなことが初めてで。時差だったり、食事だったり、やるサッカーだったり、出るポジションだったり、本当にいろんなことばかりでストレスもあった中で、サッカーについては自分のやるべきことは通用したかなと思っています」

 

──メキシコ戦ではアシストという形で結果を示しました。横浜FCとは違うポジション、サッカー自体も違う中で意識したことは?

(残り 2134文字/全文: 5557文字)

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