「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

『攻めるフロンターレ、守るマリノス』という構図 [1st15節川崎戦プレビュー]

 

首位との一戦である。

昨季、川崎フロンターレとの対戦は1勝1敗だった。ホームで迎え撃った開幕戦は、完膚なきまでに叩きのめされた。鹿島アントラーズとの2試合と並び、昨季ワーストのゲームにカウントされるだろう。対して、アウェイでの試合は「ザ・マリノスというゲーム」となった。このコメントはDF陣やGKではなく1トップの伊藤翔が発したのだから、どれだけチームとして戦い方が浸透していたかがうかがい知れる。

 このカードは“どちらかの試合”になりやすく、そういった意味で拮抗した展開にならない。マリノスが主導権を握れば堅い試合になるだろう。ボールを持っているのがフロンターレだとしても、マリノスは守備でリズムを作り、ゴールだけは割らせない。スコアレスのまま時計の針が進むのは、悪い展開ではない。

最も恐れているのは、早い時間帯に不意に喫する失点で、これではゲームを壊しかねない。リーグトップの得点力を誇る相手は、嵩にかかったように前に出てくる。畳みかけられる展開になると苦しく、カウンターに出る余裕すらなくなる。カウンターに行けなければセットプレーを獲得する手段も見つけにくい。

普段以上に試合の入りが重要だ。前半はスコアレスでまったく問題ない。90分というゲームタイムをいかに有効活用できるかもポイントで、そういった意味で中村俊輔や中町公祐がチームをコントロールしなければいけない。「ウチには何人かフロンターレと対戦したことのない選手がいる。そこにはしっかり声をかけていきたい」と話したのは中町だ。パク・ジョンスや遠藤渓太、あるいは新井一耀といった選手をフォローしつつ、相手に主導権を握らせない戦いを実践したい。

先発メンバーに目を移すと、先週のナビスコカップ・ベガルタ仙台戦と同じ11人が並ぶことになりそうだ。下平匠は左ふくらはぎを痛めて先制離脱し、エリク・モンバエルツ監督は週の初めの段階で「今週末は無理だ」と欠場を示唆。代役は引き続き大卒ルーキーの新井となり、本来CBという特性を考えても守備に軸足を置いたプレーになるのは当然だ。

 

 

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今週に関しては、水曜日に喜田拓也をトップ下に、中村を右MFに置くファンキーな布陣もテストした。対戦相手のボランチをケアしたいという狙いが見え隠れする采配だが、それではあまりにもベースがなさすぎる。連勝してきた勢いや根拠を大切にするという観点でも、まずはこれまで通りの並びで戦うべきだろう。相手を見過ぎるあまり、我を見失っては元も子もない。

 たとえば点を取り合ってフロンターレに勝てるイメージは、正直あまり湧かない。それよりも手堅いサッカーで、ロースコアに持ち込むほうが現実的だろう。もちろん相手はそうさせまいとゴールを狙ってくる。したがって『攻めるフロンターレ、守るマリノス』という構図になる。カウンターとセットプレーは精度を増しているが、それでも2~3点のビハインドをはね返すオフェンス力は、まだない。

明日は、クラブが集客に尽力した結果、4万人以上の観客がスタジアムに足を運ぶことが予想される。選手にとってのエネルギーになるのは間違いないが、晴天に恵まれたこの時期の15時キックオフはかなりハードだ。「プレーの強度は落ちるだろう」と指揮官は予想する。疲労すれば集中力も欠如する。一瞬の隙も与えてはいけない相手だけに、難しい試合になることはほぼ間違いない。

しかし、である。優勝の可能性が消えた1stステージで存在感を示すなら、明日だ。首位を走る好調チームに土をつけ、Jリーグにマリノスありと宣言したい。目立つためには絶好の機会である。

 

 

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