「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

最良の結果がほしい : 藤井雅彦柏戦直前プレビュー

 

いまの期待感とともに

「なんたって昨年のMVPだから」

砕けた言葉でレアンドロ・ドミンゲスをこう表現したのは、普段はどちらかというと堅い口調で丁寧に言葉を選ぶ樋口靖洋監督だった。

そう、柏レイソルには昨季MVPがいる。今季は安定感を欠くチームに足を引っ張られている感があり、最近までは負傷で戦線離脱していた。それがマリノス戦に照準を合わせるように復帰するという。忘れがちだが、マリノスはレアンドロ・ドミンゲス擁する柏に勝ったことがない。昨シーズンは2戦2敗で、今シーズンは開幕戦で打ち合いの末に3-3で引き分けた。それだけでなく、どの試合でも「レアンドロにやられている」(中澤佑二)。いわゆる“天敵”だ。もっとも、どのチームも平等に柏の背番号10に屈しているだけに、勝つにはレアンドロ封じが欠かせない。

このタイミングで復帰することだけでも不運に感じてしまうというのに、加えてマリノスは富澤清太郎を出場停止で欠く。今シーズンのマリノスは富澤抜きには語れない。樋口監督が「彼は広いエリアをカバーできる守備能力があったし、予想以上に能力を発揮してくれていた」と貢献度の高さを語ったように、小椋祥平不在のマリノスの中盤で守備を一手に引き受けたのが富澤だった。残念ながら退場となったヴィッセル神戸戦では素晴らしいミドルシュートを叩き込むという付加価値までもたらしており、なおさら不在が痛い。

富澤抜きの中盤の底は中町公祐と熊谷アンドリューが担うことになりそうだ。中町は前向きに守備をしているときは力を発揮するプレーヤーだが、押し込まれた展開は不向きだ。だからこそチームとして主体的な守備で、具体的に言えば前線からボールを追いかけるようなプレスを展開したい。中町が積極的にボールカットを狙うと同時に、熊谷は中盤の底の危険なスペースを消す。できることならばレアンドロにボールが入れさせたくはない。

また、ペナルティエリア付近での不用意なファウルも禁物だ。相手にはジョルジ・ワグネルという優秀なキッカーがいる。「雨が降るのが一番嫌。無駄なファウルをすると危ない」とGK榎本哲也はリスクを最小限に抑える必要性を訴えた。これまで熊谷が先発した試合を振り返ると、中盤でのファウルやそれによる警告が多く見られる。「自分のリズムを失わないためにも」(熊谷)、自陣ゴール方向に追いかけるような守りは避けたい。

いまのチーム状態ならば、レアンドロのいる柏が相手でも五角以上に戦える。そんな期待感はたしかにある。前線には20戦10発のマルキーニョスを筆頭に、好調を維持する中村俊輔、神戸戦で復調気配を示した齋藤学がいる。守ってもリーグ最少失点と言わずもがな、である。すでに11月半ばを過ぎ、フロントが来シーズンを見据えて動き始めているのは間違いないが、現場の空気感は悪くない。まだ天皇杯も残されている。チームとしての一体感を保ち続けるためにも、最良の結果がほしい。

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