「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

さまざまな意味合いを持った先発入れ替え [1st9節山形戦プレビュー] 藤井雅彦 -2,269文字-

前節から4人、あるいは5人のメンバー変更がありそうだ。予定調和的な交代、アクシデントによる交代、そして不確定な交代。さまざまな意味合いを持った先発入れ替えである。

4-3-2-1_2015 最大のトピックは試合前日の練習で、中村俊輔が右太もも裏に違和感を訴えて練習を切り上げたことだろう。エリク・モンバエルツ監督は「おそらく筋肉系のけがだと思う。使おうと持っていたし、戦術のオプションのトレーニングをしていたが、変えるしかない」と残念そうにコメント。その言葉通りに紅白戦形式では主力組に入り、ポジションは右MFの位置でプレーしていた。リーグ戦今季初先発は間違いなかった。

しかし、中村のコンディションはやはり万全ではなかったようだ。左足首の手術から復帰し、ナビスコカップを含めて公式戦3試合に途中出場した。次のステップは先発復帰だったが、そのタイミングで別の個所の負傷というアクシデントが襲った。昨日は左足首をねん挫して練習を切り上げていた。2日連続で負傷し、今度は一時的にピッチに立てない離脱であり、悲しい再離脱になってしまった。それほど大きな負傷ではないが、山形戦には出場できない。

モンバエルツ監督は中村本人と話す機会を設け、今後どの位置でチームに組み込むかを考えていた。ボランチか右MFか、チーム状況を見ながら起用する方策を練っていた矢先の負傷離脱である。中村が久しぶりに右MFに入ってどんなプレーをするのか注目だったが、この負傷によってアウェイ遠征には帯同しない。右MFには前節もこのポジションに入っていた兵藤慎剛がすんなり収まる。

これがアクシデント的な交代だとすれば、最も予定調和的な交代は右SBに小林祐三が戻ることだろう。出場停止でいなかっただけのことだから当然だ。比嘉祐介はベンチスタートに逆戻る。また、中盤の底は喜田拓也が体調不良で練習を休んでいるためメンバーチェンジがある。指揮官曰く「ボランチは運動量が多いので疲労がたまっている」。結果的に喜田と三門雄大の二人が合うとし、富澤清太郎と中町公祐がコンビを組む。つまり開幕戦でコンビを組んだ二人に戻るというわけだ。

 

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この交代にも大きな驚きはない。前節のダブルボランチはお世辞にも良い出来とは言えなかった。持ち前のボール奪取能力を発揮できず。マイボールになってから変化を出せるタイプではない。それどころかボールロストも多かった。そこで中町の起用や中村のコンバートを考えるのは自然かもしれない。さらにモンテディオ山形がロングボールを多用することを考えると、中盤の底でフィルター役になれる選手がほしい。栗原勇蔵が元気ならばファビオを一列上げる手が有効だが、栗原は右足首痛で離脱している。そこで最終ラインは据え置きにして富澤をボランチに配した。ちなみにベンチには熊谷アンドリューが入るだろう。

山形3-4-2-1 前線に目を移すと、ようやくラフィーニャが初先発ということなりそうだ。伊藤翔との縦関係で、とりあえず伊藤が最前列、ラフィーニャがその下という配置だが、試合になればもはや2トップでいい。好調の伊藤と、前線の軸になれるラフィーニャの共演は素直に楽しみだ。ただ、この二人は連戦であること、そして中村のように再離脱しないために、それぞれ時間制限でプレーする可能性がある。ベンチにはアデミウソンや矢島卓郎、あるいは藤本淳吾といったカードがいるから問題ない。

最後に不確定な交代の件だが、もしかしたらGKが榎本哲也から飯倉大樹にスイッチする可能性がある。仮に飯倉がスタメンなら、リーグ戦では12年最終節のサガン鳥栖戦以来約2年5ヵ月ぶりだ。榎本が交代するとしたら、広島戦でのキャッチミス以外に理由は考えられない。たった一度のミスで降格を命じられるようなポジションではなく、それまでの榎本のパフォーマンスが極端に悪かったわけでもない。個人的には榎本を継続して起用すべきだと思う。一方で、飯倉がピッチに立っても不安は皆無だ。ナビスコカップに2試合先発し、そのプレーについて松永成立GKコーチは「2試合でノーミスだった」と高く評価している。もともと持っているポテンシャルは榎本と遜色ない。胸を張ってピッチに送り出せるGKだ。

さまざまな理由によってスタメンの顔ぶれが変わる。ただ、それではチームのパフォーマンスは安定しない。プロの世界なら、レギュラーとサブに分かれて当然だ。純然たる競争で選手が入れ替わるのは歓迎だが、指揮官が気軽に変えすぎるのはいかがなものか。本当に試合に出られないのはリハビリしている選手を除けば、中村と喜田だけである。マリノスは誰がレギュラーなのか分からないカオスの状況になりつつある。

 

【この試合のキーマン】
MF 8 中町 公祐

 久しぶりのリーグ戦先発で何を見せるか。三門や喜田とはタイプが異なり、オフェンス時にも力を発揮できる選手だ。ただ、それ以前に守備で指揮官が求めるプレーをできるか。月並みな表現だが、ハードワークしてようやくスタートだ。
本当は中村とともにピッチに立ちたいだろうが、残念ながら中村は負傷離脱した。よってチームを動かすのは彼の役目となる。富澤とのコンビでいかにゲームとチームをコントロールするか。いまのマリノスが標榜するスタイルは遅い攻撃ばかりではいけない。でも、ときには遅い攻撃も必要だ。
サッカーIQが高い彼ならば、何を求められても起用か分かっているはず。もちろん三門や喜田の代役というつもりもなかろう。中町は中町らしく、チームを勝たせるためにプレーしてほしい。

 

 

 

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