「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

失敗を経て、ようやく今季のスタンダードを手にした [J2節FC東京戦レビュー] 藤井雅彦 -1,512文字-

 

無失点、そして被シュート2本という結果が示すとおり、マリノスは守備で一定の成果を挙げた。前節のフロンターレ戦のように選手たちが迷い、取り乱す場面はなかった。自陣でブロックを形成し、入ってきたボールと人に対してしっかり体をぶつける。ボランチで先発起用されたファビオはポテンシャルどおりの仕事をこなし、チームに安定をもたらした。

4-3-2-1_2015 とはいえ昨季までの躍動感は、ない。ボールを奪うことを目的とした守備スタイルではなく、ブロック形成を優先しているためである。スタイルの是非ではなく「今年はこうやって戦うということ」(榎本哲也)。第1節での失敗を経て、ようやく今季のスタンダードを手にした。ボールを奪う位置が低くなり、ショートカウンターでの攻撃は間違いなく減る。とても手堅いサッカーで、今後もFC東京戦のような娯楽性に乏しい試合が増えるだろう。

だからこそワンチャンスを決めたかった。いや、決めなければいけなかった。兵藤慎剛は後半に2回決定機を迎えたが、いずれもGK権田修一の好セーブに阻まれた。アデミウソンも齋藤学の折り返しからビッグチャンスを得たものの、こちらは疲れもあってかシュートミス。相手にほとんど決定機を与えなかっただけに、どれか一つを決めていればマリノスは勝ち点3を持ち帰れたかもしれない。前線の選手はこれからもゴール前での精度を求められるだろう。

同時にチャンスを作り出す努力が必要だ。エリク・モンバエルツ監督は守備面に多く注文しているが、攻撃面はキャンプを含めてほとんど手つかず状態である。ビルドアップのトレーニングに時間を割いているが、アタッキングサードはもはや選手次第だ。攻撃なんてそんなもの。監督のアクションを待つのではなく、出場している選手たちで約束事やパターンを作っていけばいい。

 

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東京4-3-1-2 この試合でいえば、もっとアデミウソンにボールを集めるべきだった。後半に入ってからは明らかにガス欠になったため論外だが、少なくとも前半は相手を圧倒する能力を垣間見せた。「少しボールがずれてもマイボールにしてくれるからラク」と栗原勇蔵は手ごたえを口にした。少々雑なパスを出しても、力強いフィジカルと巧みなボールコントロールで前向きにボールを受け、攻撃を前進させてくれる。すべてにおいて高いクオリティーで攻撃をリードしてくれるのだから、まさしく助っ人である。独善的な性格でもなく、周囲を生かせるのも彼の特徴だ。

あるいは齋藤のドリブル突破をフォローする動きもほしい。攻撃に必要なのはチーム戦術よりもグループ戦術で、近いポジションの数人だけでも攻撃の質を向上させられるはず。もちろん中村俊輔やラフィーニャの復帰も大きなポイントだが、いない選手のことを語っても仕方がない。まだしばらくは彼ら抜きのチームのわけだから、いる選手で機能性を高めなければいけない。

守備の改善とアデミウソンの加入。FC東京戦でようやく踏み出した一歩目は今後の道となる。だからこそ水曜日のナビスコカップの位置付けが気になる。フランス人指揮官はリーグ戦同様のメンバーでカップ戦に臨むのか。あるいはメンバーをガラリと変えることを考えているのか。一歩目を二歩目につなげて前進するために、重要な一戦となる。

 

 

 

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