「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

注目の1トップは矢島か [J23節名古屋戦プレビュー] 藤井雅彦 -1992文字-

 

名古屋グランパス戦を明日に控え、齋藤学が意気込みを語った。

「接戦をモノにできるような強さを発揮できれば」

名古屋4-2-3-1 そう、このカードはいつも接戦になる。「名古屋とはいつも引き分けているイメージがある」と中澤佑二。前半戦の対戦時は試合を優位に進めながら、終盤にセットプレーから同点弾を食らって惜しくも引き分けに終わった。過去には天皇杯でPK戦までもつれ込んだケースもあり、大会問わず拮抗した試合が多い。

とはいえマリノスはもう負けられない。現在順位こそ10位と苦しい位置にいるが、5位のヴィッセル神戸まで勝ち点2差と1試合で手の届く範囲なのである。指揮官は「まずは5位を目指す」と宣言しており、ACL出場圏内やタイトル争いはその先にようやく見えてくる。結果的に3連勝しても順位はほとんど変わらなかったものの、負ければ早々に脱落が決まっていた。望みをつなぎ、モチベーションを保たせるには、やはり勝利という結果しかない。

直近の公式戦であるナビスコカップ準々決勝第2戦・柏レイソル戦はけが人続出のため苦しい陣容で望まざるをえなかったが、今回は複数の選手が戻ってくる。それだけでも期待が持てるというものだ。

まず股関節痛に悩まされている中村俊輔はどうやら先発に復帰する。本人が「痛みにも波がある」と話しているように患部が完治したわけではない。かといってプレーがまったくできないわけでもない。練習前後のケアを含めて、残りシーズンはけがとうまく付き合いながら試合をこなしていくことになりそうだ。

 

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ほかでは冒頭でコメントを引用した齋藤学も先発でピッチに立つ。柏戦では残り10分程度ピッチに立っていたように、状態は良化しつつある。前回の名古屋戦では引退したドゥトラとのコンビで対面の矢野貴章をきりきり舞いさせ、中村のゴールもアシストしている。前回同様の活躍、さらにはゴールが期待される。

4-3-2-1_矢島 一方で水曜日の練習で全体合流したラフィーニャは、その日のトレーニングで再び負傷箇所を痛めてしまった模様。その後は別メニュー調整に逆戻りとなり、復帰は早くても来週の鹿島アントラーズ戦になりそうだ。また、右足首ねん挫の兵藤慎剛は痛みを抱えながらも復帰しており、メンバー入りして試合出場に備えている。

メンバー編成の注目点は1トップの人選だ。ラフィーニャ不在時は伊藤翔が主力となっていたが、名古屋戦では矢島卓郎がスタメンでピッチに立つだろう。柏戦で久しぶりの先発出場を飾った矢島は圧倒的なフィジカルで相手を押し込み、チームに好気流をもたらした。持病の股関節痛から復帰し、ここへきてコンディションも良化している。秘めているポテンシャルはFW陣でも随一だ。そろそろ爆発があっても驚けない。

ここから先は常に崖っぷちの戦いで、敗戦は今シーズン終了とほぼ同義語である。虚無感だけが漂う秋を迎えるのはまっぴらである。ここへきてボランチの主力になりつつある小椋祥平は言う。

「勝っても順位があまり変わらなかったのは精神的につらかった。でも負けたら話にならない。オレたちは、もう勝つしかない」

 ナビスコカップも天皇杯も、あるいはACLもゼロックス・スーパーカップも逃した。残すはリーグ戦12試合のみ。マリノスは退路を断って前へ進むしかない。

 

【この試合のキーマン】
MF 27 富澤 清太郎

中断明け初先発濃厚になっている。今季序盤までは不動のファーストボランチだったが、中断期間中の負傷によって不自然なほど序列を下げていた。8月上旬にけがから復帰したものの、天皇杯3回戦・ギラヴァンツ北九州戦でのパフォーマンスが芳しくなく、その後もサブに甘んじていた。

今節は中町公祐の負傷離脱、そして喜田拓也がアジア大会出場のためチームを離れ、出番が巡ってきた。最近の不遇ぶりには、本人の気持ちの中にも期するものがあるだろう。対戦相手は高さに優れる選手が多く、そういった意味では存在がクローズアップされるはず。

小椋祥平とはほとんど初コンビ結成になるが、プレースタイル的な相性は悪くない。富澤が最終ライン前に構えれば小椋のボール奪取能力もさらに生きる。新たなコンビがチームに新鮮な風を吹き込んでくれることに期待したい。

 

 

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