「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

背番号14を元日・決勝の舞台へ : 天皇杯準決勝 柏戦直前プレビュー (藤井雅彦)


 

狩野健太を元日・決勝の舞台へ

シーズン途中の15試合負けなしの時期に、小林祐三がこんなことを言っていた。

「いまは守備のリズムがある」

攻撃のリズムは目に見えやすい。例えばゴールだろう。突発的なゴールもあるが、いい流れが続けばゴールにつながる可能性も高まる。ゴールがなくても、いい形でシュートまで持ち込めれば流れは悪くない。

一方、守備のリズムは目に見えにくい。プレーしている選手たちが感じる空気や雰囲気といった抽象的な要素も大きく作用する。だとすれば、マリノスの守備にリズムがあると見分けるポイントはどこか。攻め込まれていても失点しない。水際ではね返すことができる。そんなところだろうか。

いま、マリノスには守備のリズムがある。4回戦・浦和レッズ戦はほぼ一方的に攻め込んだからあまり参考にならないが、準々決勝・名古屋グランパス戦は違う。チャンスがあった反面、ピンチもあった。GK飯倉大樹の好守もあったが、それだけではない。中澤佑二と栗原勇蔵を中心にゴール前を固め、それにつられるように周囲の選手も懸命に体を張った。その結果、リーグ戦のラスト2戦からJ1クラブ相手に公式戦4試合連続無失点とした。

明日の準決勝・柏レイソル戦でもマリノスは守備に軸足を置いて戦うことになるだろう。今シーズン何度も述べてきたが、攻撃力や得点力に秀でたチームではない。マルキーニョスがいたとしても、だ。無闇に大量得点を期待してはいけない。

相手はレアンドロ・ドミンゲスを出場停止で欠く。これ以上の幸運はない。今シーズン対戦したリーグ戦では2試合ともにレアンドロに何度の高いゴールを献上し、敗れた。選手コメントを抜粋しよう。「レアンドロがいないのは素直に大きい。これまでの対戦ではいつも目に見える形でやられている」(兵藤)、「相手はレアンドロがいないけど、やっぱりそれは大きい。いつもレアンドロにやられているのでプラス要素」(栗原)なのだ。油断や慢心があってはならないが、「ドミンゲスがいないのに勝てなかったら来年も勝てるわけがない」(中澤)という意地は持たなければいけない。

レアンドロ不在の柏にいまの好調守備陣が突破される気配は、正直ない。あったとしても事故的な1失点だろう。攻撃と違って、こちらは十分に計算が立つ。つまり90分、ないしは120分のゲームで1点、欲を言えば2点取れば必勝だ。それを誰が取るか。

スタメンを見ていくと、どうやら名古屋戦の11人をそのまま踏襲することになりそうである。マルキーニョスに続いて齋藤学も復帰したとはいえ、ベンチスタートが濃厚。「切り札的に」(樋口靖洋監督)使われる見込みだ。

となれば期待したいのは狩野健太だろう。浦和戦で1得点1アシストの活躍を見せた一方で名古屋戦はほとんど見せ場を作れなかった。試合ごとにムラがあるあたりは実に彼らしい。狩野にとってはいつが最後の練習、そして試合になるかわからない戦いが続く。それでも常に自然体なのが“らしい”ところだ。

今シーズン限りでチームを去る背番号14を元日・決勝の舞台へ。中澤は天皇杯を“狩野杯”と言い続け、それを大きなモチベーションにしている。誰かのためにという心理が働くのはマリノスでは珍しいこと。狩野自身も含めた全員の力で、その目標を達成してほしい。

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