「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

ターニングポイントの”4-4-2″ : 中村中心のチーム作りをしないのであれば外国籍ストライカーの補強に踏み切らなければならない [J11節G大阪戦プレビュー] (藤井雅彦) -1,883文字-

 

最近は毎試合前に2トップの採用を示唆していた樋口靖洋監督だが、このガンバ大阪戦でついに今シーズン初めて[4-4-2]で試合をスタートさせるようだ。試合前日のフォーメーション練習では選手を[4-4-2]に配置しており、2トップはおそらく藤田祥史と伊藤翔が組むことになる。ちなみにベンチには矢島卓郎ではなく端戸仁が入った模様だ。

4-4-2_藤田_伊藤 そもそもなぜシステム変更という決断に至ったのか。ここ数試合を振り返る指揮官の言葉からは手応えが感じられる。前節・浦和レッズ戦についても「気持ちが出ていたし、内容もネガティブに捉えるものではない」と語っている。ただ最近7試合でわずかに1得点の攻撃に関しては納得していない。「攻撃のパワー不足のところで疲労を感じる。前へ出て行く動き、動き直しのところでパワーを出し切れていない。そこを問題点にして取り組んでいきたい」(樋口監督)。端的に言えば攻撃に迫力を、ゴール前に厚みをもたらすためのシステム変更である。

そこに罠が潜んでいるような気がしてならない。サッカーやチームはシステムありきではなく、あくまで勝利や得点の可能性を高める手段の一つでしかない。これまで試合途中から2トップを採用した試合はいくつかあるが、奏功したのはACL第5節・全北現代戦(2-1の勝利)だけである。後半から2トップになったことで前線の起点が増え、サイドハーフの齋藤学とのコンビネーションが生まれた。勝利そのものは齋藤のスーパーゴールと相手のミス絡みだったが、攻撃が加速したのは紛れもない事実である。

とはいえそれがどの試合、どの相手にも同じように通じるとは限らない。特にその試合の全北現代は前半に先制したことで明らかに守勢に回り、試合途中からは運動量も減退した。そういった相手の状況とシステム変更が見事に合致した“采配的中”だ。果たして試合のスタートから採用してどうか。

 

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個人的に一番危険に感じているのは、チーム編成の軸足を攻撃に置いていることである。攻撃に厚みを出すために[4-4-2]を採用するのだとしたら、なぜこれまで[4-2-3-1]だったのかを忘れてはならない。それは守備を機能するための配置だった。1トップとトップ下に位置する中村俊輔が前線から走ってコースを限定し、最終ラインを高く保ちながら、中盤のできるだけ高い位置でボールを奪う。簡単に言うと、そのためのシステムとメンバー構成だった。そこで輝いたのが中村と素晴らしい連係を誇る富澤清太郎と中町公祐のダブルボランチである。

G大阪4-4-2 たいして準備もしていない[4-4-2]は守備の距離感を損なう可能性が高い。事実、昨シーズン途中もマルキーニョスと藤田の2トップを模索したが、守備が機能しなかったため断念した。とりわけサイドハーフを務めざるをえない中村が行き場を失ってしまう。齋藤や兵藤慎剛、あるいは藤本淳吾は[4-4-2]のサイドハーフもこなせる人材だが、中村は違う。何より彼はトップ下の位置でプレーすることを心底望んでいる。

攻撃と守備は表裏一体で、二つは密接につながっている。良い守備がなければ、良い攻撃は生まれない。逆もまたしかりだ。2トップへの変更で相手を圧倒できるならば、必然的守備も好循環するだろうが、それをいまの段階で想像するのは難しい。以前も述べたように藤田と伊藤は2トップにすることでより生きるタイプだと思うが、それと今節の機能性は別問題だ。

中村中心のチーム作りをしないのであれば、いよいよ外国籍ストライカーの補強に踏み切らなければならないだろう。前節・浦和戦吾の嘉悦朗社長のコメントを再び引用する。

「中断期間にやらざるをえない。必要な判断をしなければならない」

 ポジションは当然、FWだ。あるいは齋藤学が今度こそ海外移籍した場合、2列目の一角に独力でボールを運べる選手も必要になる。
中断期間の補強ポイントを探る意味でも、ガンバ戦は今シーズンのターニングポイントになりそうだ。

 

 

 

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