【サッカー人気3位】マテウス・サヴィオ「一人一人自分の役割が分かっていると思う…

「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

お手上げで降参せざるをえない状況を作り出せたら最高だ [ナビスコ準々決勝2ndレグ プレビュー](藤井雅彦) -2,235文字-

サッカーの世界で2-0のリードは最も危ないスコアと言われるのは、失点した場合のゲームマネジメントが難しくなるからだ。2-1になった途端に選手個々の意識にズレが生じる。あるいはベンチで指揮を執る監督とピッチ上で戦う選手の意思疎通が難しくなり、試合運びに支障をきたす。端的に言えば、攻勢に出るか、守勢に回るか、あるいは失点前の状態を保つのか。いくつかのうちから判断と決断を迫られる。共通意識が保たれていれば問題ないのだが、これが思いのほか難しい作業だ。

4-2-3-1_2013下 あえて樋口靖洋監督に「仮に失点したら、どう戦うのか?」という質問をぶつけた。指揮官は一瞬の間を置いて「それは時間帯と展開による」と答えを濁す。当然のことながら、失点が前半と後半では判断が大きく異なる。また、展開的に序盤から押し込まれた上での失点か、それとも不意にカウンターやセットプレーから失点したのかも判断材料となる。

言うまでもなく、失点せずに試合を終えればマリノスの準決勝進出が決まる。「0-0の時間が長くなるほどウチにとって有利で、そのあとに自分たちの時間を作りやすい。無理にバランスを崩す必要はないし、前回以上にカウンターからチャンスを作れると思っている。」(樋口監督)。スコアレスドローはもちろんマリノスの勝利で、失点しても1点差での敗北であれば、一方で勝利を意味する。

では鹿島アントラーズがどのようなスタンスで試合に臨んでくるか。最低でも2ゴールが必要なのは間違いない。2-0で勝利すれば鹿島は延長戦に持ち込める。逆転には3得点が必要だが、まずは2得点を狙ってくる。では試合序盤から前がかりに攻めてリスクを冒してくるのか。予想されている本山雅志の先発起用はそういった展開を想起させるが、試合巧者の鹿島が闇雲に前へ出てくるとは考えにくい。

 

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4-4-2鹿島 第1戦を振り返ると、鹿島にはマリノスを上回る回数の決定機があった。そのチャンスをダヴィと大迫勇也が生かしきれず、無得点に終わっている。マリノス守備陣の頑張りがあったのは事実だが、おそらく相手の捉え方は「決定機を決めきれなかった」という意識だろう。裏返せば「決めていれば結果は違ったはず」となる。スコアこそ2-0でも、相手よりも劣っているという意識は薄いのではないか。

鹿島はニュートラルな状態で試合の臨むと予想すべきではないだろうか。普段通りの鹿島と戦うとすれば、やはり主導権の探り合いがポイントとなる。リーグ戦での対戦がそうだったように、お互いにリズムを掴みきれずに時間が経過していく。第1戦でも中村俊輔がセットプレーからゴールネットを揺らしていなければ、そういった展開になった可能性が高い。

しかし今回の鹿島はそのままガードを上げ続けられない。複数得点しなければ3連覇の可能性が潰えてしまうため、どこかのタイミングで確実に攻勢を強めてくる。例えばジュニーニョを投入して攻撃の駒を増やす、あるいは中盤やディフェンスラインの枚数を削って3トップのようなシステムに変更する。普段のリーグ戦では決して採用しない戦い方がお目見えするかもしれない。

理想は鹿島の攻撃を受け流し、カウンター一発で仕留める展開だ。「一番良いディフェンスはウチが点を取ることだ」(マルキーニョス)。マリノスが得点した瞬間、鹿島は最低でも3得点が必要になる。以降は得点が増えるたびに鹿島が狙う得点数は増え、同時にハードルが上がる。もちろんスコア上だけでなく精神的なダメージも計り知れない。あの鹿島が勝負を諦め、お手上げで降参せざるをえない状況を作り出せたら最高だ。

その試合に臨むマリノスのメンバーは第1戦とまったく変わらない。日本代表から返ってきた栗原勇蔵は26日から3日間の特別休暇を与えられており、鹿島戦にはベンチ入りしない。引き続きファビオが中澤佑二とコンビを組み、ベンチメンバーも同じ7人が名前を連ねるだろう。試合前日にはメンバー18人でPK練習を行うなど試合に向けて準備に余念がない。

別項のコメントを読んでもらえれば、選手たちは一様に気を引き締めていることがお分かりいただけるだろう。リードしているという事実を大切にしつつも、それに頼ってはいけない。マルキーニョスやドゥトラといった百戦錬磨のベテラン助っ人陣も口を揃えるように、油断大敵である。相手はタイトル獲得経験豊富な鹿島なのだ。少しでも甘さをのぞかせれば、マリノスはたちまち逆転を許すことになるだろう。

それでも、最近のチームを見ていると不安は限りなく少ないと言える。以前であれば第1戦を2-0で逃げきれず、どこかで瓦解していた。試合直前のコメントや表情に油断や慢心は見られない。序盤戦を終えて、チームには勝ち癖なるものが芽生え始めている。だからこの鹿島戦でも、目指すは勝利のみとなる。

 

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