「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

紆余曲折を経てチームとして攻守のバランスが整ってきた。決めるべき場面をしっかり決めれば、チャンスの数に比例してゴールの数も増える[J28節 仙台戦レビュー]

 

 

大量得点の口火を切ったのは山中亮輔のミドルシュートだった。21分、こぼれ球を拾った天野純の横パスをダイレクトで振り抜き、GKシュミット・ダニエルが守るゴールのニアサイドをぶち抜いた。サイドバックとしては圧倒的な得点関与率を誇る背番号24の2試合連続ゴールは、完全復活の証と言っていいだろう。

 先制直後の失点こそ次に向けた反省材料だが、その嫌な流れを断ち切ったのがこの試合で抜群のキレを見せた仲川輝人である。37分、ハーフウェーライン手前でボールを受けると、すぐさまトップスピードに乗り、直線的なドリブルで相手ゴールへ迫る。「自分がボールを持った時からドリブルコースが見えていた。行ってやろうかなという気持ちでいた」。応対する大岩一貴を股抜きで攻略し、GKとの1対1を冷静に沈めた。

そして勝利を大きく手繰り寄せたのは、後半に入って51分に生まれた3点目だろう。天野純とのワンツーで左サイドを抜け出した山中は、ニアサイドへのグラウンダーではなくファーサイドへの浮き球クロスを選択。これをフリーで待ち構えた仲川が珍しいヘディングシュートで叩いてゴールネットを揺らした。

大勢が決してからは、ウーゴ・ヴィエイラが自身の存在価値と盟友・伊藤翔への思いをしっかりと示す2ゴールで大勝を締めくくった。前半のボレーシュートこそ相手GKとポストに阻まれたが、その借りを返すようなチェイシングからのゴールと扇原貴宏の華麗なラストパスを受けてのゴール。大量失点で気落ちしている隙を見逃さずにダメ押し点を奪うあたりがストライカーの本領発揮と言える。

効果的なポゼッションとボールを失ったあとに素早く切り替えて守備をする、これは表裏一体の関係だ。ポジションを崩しながらボールを持っているからこそ、不用意な奪われ方をすればカウンターでピンチを招く。それを未然に防ぐためには、ポゼッションの質を上げつつ、奪われた後の備えも欠かせない。攻撃だけではダメ、守備だけでもダメなのである。

 

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 今シーズン3度目の2連勝は、システム変更やメンバーチョイスといった紆余曲折を経てチームとして攻守のバランスが整ってきたからこそ。仙台に対しては、アウェイでの8得点に続くホームでの5得点だが、明らかな力量差があるわけではない。きっかけ一つ、展開一つの大差と考えるのがおそらく正しい。

その一方で、前線の選手を中心に決めるべき場面をしっかり決めれば、チャンスの数に比例してゴールの数が増える。こればかりは水物なのだが、すべてがうまくいけば仙台戦のようになる。山中、仲川、そしてウーゴ。たしかな武器を持つ3選手がガッツポーズを決め、上昇気流に乗りながら次へ向かえることに価値を見出したい。

 

 

 

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