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【有料記事】榎本達也、キャリアトランジションを乗り越えて現役引退を決断。「たぶん恥をかくだろうし、壁にぶち当たるだろうし、うまくいかなくて凹むことも選手以上にある」(2016/12/25)

2016シーズンかぎりでFC東京との契約を満了したゴールキーパー榎本達也が現役引退、そして指導者への転身を決断した。FC東京普及部コーチに就任、子どもの指導にあたる。
若手選手に向けた言葉や接し方がまるで指導者のように研ぎ澄まされていたシーズン終盤の振る舞いを思えば、この選択は妥当なものと感じられる。
現役引退とコーチ就任が発表となった本日12月25日、榎本は非常に晴れやかな表情で、よく通る明瞭な声を響かせていた。「吹っ切れた感触がある」「すっきりしていますねと言われる」「切り換えられた」。プロサッカー選手が現役を引退し、セカンドキャリアに歩み出すには “キャリアトランジション”と呼ばれる転換期を乗り越えなければならない。榎本はFC東京に在籍した期間の苦しみ、葛藤を経て、契約満了のタイミングで信頼できる人々と深く話し合ったことで、このキャリアトランジションを通過し、新たな路へと第一歩を踏み出すことに成功したようだ。
現役引退と指導者への転身に対する榎本の思いを以下に記す。

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現役を引退して、東京の普及のコーチから指導者をめざします。
最初はリリースも契約満了というかたちでクラブには出してもらって、現役続行も含めて複数の選択を考えていたんですけれども、いろいろな状況を加味してもう一度整理したうえで、この先一年、二年の現役よりも、この先20年、サッカーに携わっていこうと考えたときに、最良の選択をしようと。指導者の路を歩み始めるに際してこのクラブが必要としてくれたことがありがたかった。(現役生活を)20年という長いあいだやってこれたなかで、まだやりたい気持ちもあるし、やり足りないことはありますけど、まあでも20年、一日一日とにかく自分でいっしょうけんめいサッカーに向き合って、日々自分がどう巧くなることができて、どう試合に出られるのか、試合に出たときにどのようなパフォーマンスをやりたいのか、どういう選手をめざしているのかということを、常日頃考えて、一日一日サッカーと向き合ってきたことに関しては、まったく後悔がないというか。そこは自分が20年やってきて誇れる部分だと思うので、そこに関しては悔いではないと思っています。

まだ指導者をやったことがない、右も左もわからない、ぴかぴかの一年生なので、来年からどうやっていくかを勉強しないといけない。自分のステージは選手から指導者に変わりますけれども、やることは変わらない。とにかくきのうよりもきょう、きょうよりもあした巧くなるために、自分が変化できているかということに向き合ってきましたけれども、それは指導者のときも同じだと思っています。自分で自分がいい指導者かどうかを決めるのではなく、きのうよりも子どもたちがいい顔をしたのか、子どもたちにいい言葉をかけることができたのか、いい指導ができたのかを、常に自分に問いかけて、(そこを理解した他者から)いい指導者だねと言われるような指導者をめざしていきたい。
指導者のなかには、意外に言った言葉を忘れて投げっぱなしになるひともいます。言った言葉に責任を持てるような、指導者としてもプロと呼べる“人間指導者”でありたいと思い、高みを持ち、やっていきたいなと思います。
ただ、まったくわからない状況なので、たぶん恥をかくだろうし、壁にぶち当たるだろうし、うまくいかなくて凹(へこ)むことも選手以上にあると思います。今度は、自分が言っていることがわからない、言っていることをやれないことのほうが多い子どもたちを相手にしないといけないわけですから、どう向き合わせて、どう楽しませるかを、いかに言葉に落とし込めるかがすごく大事になってくる職業だと思います。自分としても最善の注意を払いながら、いろいろなことに耳を傾けながら、恥をかいて、少しでも自分らしくできるような指導者になれればいいと思っています。それがいま思い描いている指導者像です。

(現役生活を振り返って)優勝したことやMVPを獲ったことは瞬間の出来事でしかないから、いざ、すぐ脳裏をよぎるのは、

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