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【U-18総括】2017シーズンのFC東京U-18を振り返る~佐藤一樹FC東京U-18監督<前篇>

佐藤一樹FC東京U-18監督による2017シーズンのFC東京U-18総括を二回に分けてお届けする。「高円宮杯U-18サッカーリーグ2017 チャンピオンシップ」、じっくりと賢く戦えるようになったというチームの成長、そして指導論。新人戦が始まり次のシーズンを見据えるこの時期に、あらためて昨年の成果を振り返る。

◯勝つことに徹したハーフタイムの決断

青森山田高校に勝ち、プレミアEAST初優勝を果たして「高円宮杯U-18サッカーリーグ2017 チャンピオンシップ」の舞台である埼玉に意気揚々とやってきたFC東京U-18。しかし前半45分を終えてヴィッセル神戸U-18を相手に0-2と2点のリードを許し、圧倒的な差を感じながらロッカールームに戻ってくることになった。それほどネガティヴな雰囲気ではなかったとはいうものの、佐藤一樹監督が見てカツを入れなければいけないと判断するほどには、よくない状態だった。滅多に落ちないカミナリの内容を、佐藤監督は丁寧にこう説いた。
「せっかくいいかたちでリーグを優勝して大舞台に臨んでいるのに、(前半)これだけのパフォーマンスしか残せないのかとぼくも悔しかったし、こんなもんじゃないだろうという想いがありました。そこを強めの口調で伝え、『後半の開始からもう一回しっかり試合に入ろう』と言いました」

神戸のパフォーマンスが非常によく、対策を講じられ、局面で負けているところもあった。戦術以前にハートの部分をもう一回整えてピッチに帰す必要があると考えたのだ。
選手に自信を持たせるために、2016年のJユースカップ決勝で0-2から3-2にスコアをひっくり返しての逆転勝利を経験したではないか――という話もした。
「あのゲームの話ができたということを考えれば、やっぱり2016年の優勝もことし(2017年)につながっている。説得力があるじゃないですか。ひっくり返すこともできる、次の1点が勝負だ、と」
くだんのJユースカップで決勝ゴールをマークした殊勲の荒川滉貴が先発しているだけに、逆転のエピソードはありうるストーリーとして受け止められた。その、左サイドバックだった荒川は一列上がって左サイドハーフに。空いた左サイドバックには新たに草住晃之介が入り、左サイドハーフだった杉山伶央は右サイドハーフへ。そして右サイドバックには故障から復帰したてのキャプテン、岡庭愁人が配置された。45分かぎりで下がったのは、岡庭不在の間によく右サイドバックを務めた吹野竜司と、右サイドハーフで果敢にドリブルを仕掛け常に突破口を開けようと志していた横山塁だ。対策を施されていた横山と吹野を交替させるのは心苦しい決断だった、
「リーグ戦だったら後半もうちょっと引っ張ったかもしれないです。選手の成長を促すために替えない、と。でもそんなことを言っていられない。あのゲームを勝たないといけなかったから」

この交替はチームによい影響を及ぼし、セカンドハーフの序盤で2-2に追いつく結果をもたらした。主力選手の交替があり、監督のカミナリが落ちるという事態であっても、チームがまとまりを欠くことはなかったのだ。この一年、佐藤監督がチームを束ねようと心を砕いてきた努力が実ったのかもしれない。
「ぼくは選手たちに『自分も現役時代、試合に出られないときがたくさんあった。そのときは監督に対して“ふざけんな”と憤っていた、試合に出られない選手の気持ちもわかる』という話もしたんですよ。『這いつくばってでも、這い上がろうと日々のトレーニングで努力していたら見捨てない』とも言いました。どんなかたちであれゲームにかかわらせたい、と。出られないからだめじゃなくて、出られなくてもちゃんと努力する、チームに対してポジティヴなエネルギーを与えてくれるような選手は、絶対になんとかする、と」

◯成熟したチームの必然

強豪が揃うプレミアEASTで優勝を果たし、念願のひとつを達成。そこで、心身の疲労が一気に押し寄せた面もあっただろうと、佐藤監督は選手を思いやった。
「チャンピオンシップに向けて切り換えていかないとわかってはいても、心身ともについていかない。前半を観たときに、もしかしたら疲れが生じているのかもと思いました」
大舞台で絶対にチャンピオンシップを獲るぞ! という意気込みはすごかった。ところが、いざ試合が始まってみると神戸に圧されてほとんどいいところがない。そこに、ロジックでは説明しきれない何かを感じたと、

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