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【無料記事】2016シーズンのFC東京、何がいけなかったのか<その2>(2016/07/25)

その新監督が縁もゆかりもない指導者で能力が未知数であれば、未知数ゆえの「大丈夫なのか?」という疑いはあるにしても、ほぼフラットな状態から仕事を始めることができただろう。ところが城福浩前監督は「なぜ過去最高勝点のマッシモ フィッカデンティ氏と契約を更新しなかったのか」「なぜ一度降格させた城福浩氏に監督を任せるのか」という疑問と批判票を抱えたまま出港せざるをえなかった。

批判が先行していれば、その批判を打ち消すだけの結果を出しつづけなければならず、チームと監督がクリアするべきハードルは高くなる。結果が出ないと批判は強まり、解任圧力となる。ACLはクオーターファイナル進出まであと一歩というところのラウンド16敗退で、グループステージ突破により日本代表としての最低限の責務を果たしたが、J1セカンドステージで黒星が先行、多摩川クラシコに敗れて圧力に耐えられなくなった。

フロントの計算としては、勝利という結果で批判を抑え込みたかったのかもしれないが、スタート時のマイナスが大きすぎたのではないか。やはりファン、サポーターへの説明が不足していたように思う。シーズン半ばでの白旗は、解任圧力を甘く見積もり、ファン心理への対処を怠った証とも言える。

城福氏という弾除けを失ったフロントとコーチと選手もまた、「勝て勝て勝て勝て◯◯やぞ」と急き立てるかのような圧力に耐えるには、姿勢と結果を見せつづけるしかない。この点で、立石敬之GMの「眼の前の一戦一戦に勝つことを最優先に取り組みます」、大金直樹社長の「もっとFC東京らしいひたむきなサッカーをしっかりやりたい」という言葉は、それだけを取り出せば決してまちがいではないのだが、これまでの経過を踏まえれば、その箇所をもってファンが納得するはずもない。フロントはどれだけ叩かれても真摯に説明――特に目標の切り換え――を繰り返すしかないし、選手はどれだけ叩かれてもひたむきなプレーを繰り返すしかない。

深く考察したうえでの批判ももちろんあるが、ファンの批判は瞬発力があり、容赦ないものだ。敗戦直後で打ちのめされている状態のフラッシュインタビューをネタにして監督を嘲笑もすれば、どんな試合のあとでもファンに挨拶する義務のある選手に罵声を浴びせもする。ネットは言うに及ばずだ。しかしフットボールクラブはこれを乗り越えなくてはいけない。

企業チームに毛が生えた頃のFC東京ならば、選手、監督、フロントとファン、サポーターが垣根なく手を取り合うこともできただろうが、こう大きくなってしまってはそれも難しい。クラブはファン、サポーターの声にどう向き合うのかを、いま以上に考えていく必要がある。
いくら「応援しましょう」と呼びかけたところで、批判的なファンには「応援するに値するだけの姿勢を見せなければ応援しない」と言い返されてしまうだけだ。

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ただ、こう書いてはみたものの、正直なところ、クラブがいまの状態で、ファン、サポーターに対して上手に向き合うのは難しいかもしれないという気がしている。
城福浩氏が監督の任を解かれた24日、一部の気丈な者を除いて選手の表情は固く、うまくいかなかったシーズンの解散式の日のような空気が漂っていたし、メディアの向こうにいるファン、サポーターに声を届けるべく、意を決して記者の前に姿をあらわしたフロントにも、少なからず打ちひしがれている部分があった。もし事態が好転するとしたら、ファンが応援したくなるような空気を醸し出すほどに、新しい監督が雰囲気をあかるくしてチームを引っ張っていくことができた場合だろう。叩ける要素が歩きスマホくらいとされる『ポケモンGO』に比べたら、FC東京はツッコミどころが満載だ。篠田善之氏とされる新監督に、批判を乗り越えるだけの笑顔と激しさでがんばってもらうほかはない。

(以上)

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