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【無料記事】得られたものはコミュニケーションと一体感。実りのベトナム“合宿”~城福浩監督、森重真人、前田遼一、橋本拳人、阿部拓馬(2016/05/05)

5日朝に帰国したFC東京ベトナム遠征メンバーはその脚で小平に向かい、12時30分からの練習に臨んだ。ファンサービスを終え、ミックスゾーンを引き上げてくる選手やスタッフの顔つきは、多少の疲労や眠さを引きずりながらも、一様に勇ましいものになっていた。

前からプレッシャーをかけに行く時間帯もあれば、引いてブロックを形成し、構える時間帯もある。その試合運びを選手同士のコミュニケーションで成立させたことは、ビン・ズオンを破りACLラウンド16進出を決めたグループステージ最終戦での収穫のひとつと言っていい。
今後に向けていい材料になるのでは――と問うと、城福浩監督は次のように答えた。

「ゲームへの準備は常に変わらないのですけれど、選手がよりコミュニケーションをとってくれるようになったと思います。この、チームがいまいちばん苦しいときに、いつものサイクル――前の試合の課題と成果と次の対策というだけでなく、ベトナムで個別にも全体にも話す時間があり、ぼくにとっても貴重な時間を過ごせました。選手がああいう気持ちでピッチに立ってくれて、コミュニケーションをとってくれて全員でベンチも含めて戦ってくれたことは、ほんとうにうれしく思いましたし、彼らのためにも結果を出せてよかったと思います」

じつは城福監督、「ベトナムで」と言う前に、一度「沖縄で」と言い間違えて、それを訂正している。つまり遠征していた当人たちに、沖縄や宮崎以来の合宿と感じられるような時の流れ、監督が選手と腰を据えて話すことができる機会が、そこにあったのだ。連戦中にはありえなかった余裕が、チームにひと息つかせ、再びひとつになる機会を与えた。
森重真人も「ひとつの方向にチームが向かっている。みんなやるべきことがわかったと思う」と言葉を揃える。選手ミーティングをまとめた森重だけに、確信的な響きがあった。また、2得点でチームを救った前田遼一も「チームがひとつになったところは大事だと思います。前からの守備は意識していた部分なので、そこはよかった」と、充実した表情を見せた。

その前田の1点めをアシストした、笑顔でいっぱいの橋本拳人は、感慨深そうにグループ突破と連敗脱出を振り返った。
「チームが苦しいときに自分の力を発揮して勝ちたいと思っていましたし、苦しい期間がつづいていますけれども、それを自分のプレーで断ち切ろうという思いもあって臨みました。ここ最近ずっとベンチで、監督含めスタッフの方、選手、ファン、サポーター、みんな悔しい、つらそうな顔をよく観察していました。勝ったときのみんながうれしそうな顔が、自分は好きなので、勝ちたいなっていう気持ちは、すごくありました。勝たせたいな、っていう。
(試合後の雰囲気は)最高でしたね。そうとう喜んでました、ロッカーに戻ってからも……笑顔でみんな腹から声を出して喜んでいました。試合前からみんな、ほんとうに気合が入っていましたし、最近出ていなかった選手や久しぶりに出る選手、みんなで一体感をもって試合に臨めたし。ほんとうに死闘というか厳しい戦いでしたけれども、そのぶん勝ったときのあの喜びは久しぶりでした。みんな喜びが爆発していましたね……」

サブのメンバーも士気は高かった。阿部拓馬が言う。
「暑いぶん、最後のほうはフレッシュな選手を使ったほうがいいに決まっているので、ベンチの選手も全員準備ができていました。チーム一体となって勝てたと思います。(自身は東慶悟と)急な交替でしたけれど、気持ちの面で行くだけの準備はできていました」

対アビスパ福岡戦の完敗を受けての選手ミーティング、ムリキがプロの魂を示したU-23の対栃木SC戦、そしてベトナム遠征を経て得られたものは、チームが失いかけていた一体感だった。この1勝が転機となるのかもしれない。

ただ、次節の対湘南ベルマーレ戦が、もうすぐそこに迫っている。感動に浸っている暇はない。キャプテンの森重は「喜びはきのうまで」と気を引き締める。
「試合が終わったあとはみんな疲れていました。しかし、きょうから気合を入れ直さなくてはいけない。湘南は走るチーム。自分たちも走るチームです。試合が終わったあと、相手のほうが走っていた、と言うことにならないようにしたい」

走るにはコンディションが重要。もちろん、ベトナムでの消耗が響かないはずがない。体力面を考慮し、城福監督はメンバーの入れ替えを示唆した。
「湿度はぼくらの感覚だと予報の倍あったと思います。そうとうしんどい、この苛酷さはやってみないとわからないという思いがありますけれども、疲労回復に効くいちばんの薬は結果なので、そういう意味では、あのような環境下で戦えて結果も得ることができ、結果のいちばんいい効用は得られたと思います。ただ肉体的なものはわれわれも努力しないといけないし、最後はコンディションも見ながらメンバーを決めていきたい」

スプリント王の前田は獅子奮迅の働きにもかかわらず、反省を怠らなかった。
「昨日にかぎって言えば最後のほうはちょっと脚が動かなくなってうしろに迷惑をかけたと思います。(あのような環境でも)90分走れるようになりたいという思いがいまはあります」

阿部はベンチで観察していた立場から、明確な修正点を提示した。迷走してチームがばらばらだった対ヴァンフォーレ甲府戦の頃とはうって変わって、やることが整理されているような口ぶりだった。
「2-0まではよかったんですけれども、そのあとにちょっと間延びというか距離が空いてしまった部分があったので、そこは観ていて修正しないといけないなと思いました。でもそんなに大きく崩れることもなく、全体的にはチーム一体となってできていたと思うので、少し話し合えば修正できるかなと思います」

橋本はハイプレスからのショートカウンターに自信を見せる。
「暑かったですし早めに点が欲しいなと自分は思っていたので、はじめの20分、ガンガン行こうと思っていたなかでの得点でチームに余裕ができた。いいゲーム運びができたと思います。
(湘南との試合でも)1対1でボールを奪える選手がいるし、奪ってからのカウンターはいちばん点につながると思う。うまく行くときと行かないときを考えて、行けるときはみんなで思いきって行きたい」

対湘南戦の勝利に向け、コンディション調整の成功を祈るばかりだが、なによりの最終兵器はFC東京のファン、サポーターかもしれない。
「(多くのファン、サポーターが力に?)
なりましたね。驚きましたし、バスを降りるときに囲んで歌を歌っていただいて、あれで高揚しないはずがないと思います。
いまの悔しさはゲームで晴らし、変えていくしかないという思いはありましたけれども、それに加えてあれほどのファン、サポーターが来てくれてこのチームにいられる幸せを感じ、このチームのためにという思いが増したと思います」
城福監督は感謝を込めてこう言った。
次節はアウエー。2連勝の湘南は上り調子だ。苦しいいまだからこそ、応援を含めたクラブの総力を挙げ、BMWスタジアムに待つ難敵に立ち向かいたい。

 

 

 

 

 

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