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【有料記事】継続とチャレンジ。マッシモが成した基礎の上に新たなサッカーを築く◆羽生直剛、森重真人、水沼宏太(2016/01/22)

◯マッシモ前監督退任をどう考えるか

昨年のFC東京に足りなかったものを求めると、城福浩監督は「去年のチームのことをコメントする立場にはないと思います」と釘を指したうえで、粘り強いディフェンスを高く評価。いっぽう、「一試合の平均シュート数が18チーム中17位であることは現実の話」だとも指摘した。改善または上積みを考えるべきは、この部分なのだろう。やるべきことは明確だ。
問題はそれを誰がやるか。スジ論で言えば、年間4位でフィニッシュしたマッシモ フィッカデンティ前監督を解任するのは理にかなっていない。フットボールクラブのフロントは、監督に指揮を託し、監督が求める選手を揃えるのが本来のあり方だ。しかしそういう批判を覚悟で、東京は監督の交替を決めた。クラブ内部の事情には外部からはうかがい知れない部分も多いが、おそらく複合的であろう交替の理由のうち、ただひとつだけはっきりしていることは、ピッチ内の適性だ。三年めのマッシモ前監督と経験を積んだ城福新監督のどちらがより上積みの仕事を任せるにふさわしいかという選択で、クラブは後者を選んだ。
ゲームのように、監督選びに失敗したら2015年12月のデータをリロードしてやり直しというわけにはいかない。より可能性の高い選択肢を選んだと考えるべきだろう。
よいところも、限界も、それぞれがわかりやすかったマッシモ フィッカデンティ前監督のカルチョ。リアクションの質を褒め、現実的にシュート数が少ないと指摘する城福監督の理解は、FC東京を観てきた者の多くが考えるところと離れてはいないはず。スタート地点の認識はまちがっていないだけに、問われるのはこれからの舵取りだ。

監督が交替したからといって、前任者のすべてを否定する必要はない。勝点を失わないことから逆算して一試合ごとに集中していく取り組み、堅固な守備は東京イレヴンが獲得した武器だ。この選手への蓄積がチームづくりの土台になる。
新体制発表会以降、監督や選手の口からは、昨年をベースに新しいものを積み上げていくという言葉が出てきている。城福浩監督も、森重真人キャプテンも、マッシモのカルチョを認め、何割かを残すことを受け容れているのだ。
東京の強化には、監督が替わっても選手の何割かを残すことで継続性を持たせる考えがある。また、マッシモ フィッカデンティ前監督と、城福浩監督とでは、極端なちがいがない。こうした背景も、マッシモ+αというやり方の成立を助けている。
「マッシモ=勝点を得るべく現実主義を基本に守りを固めながらも攻撃を加味していく」
「城福=つなぐサッカーが理想だが現実的にきちんと勝点を得ながら支配力を高めていく」
この好対照。両者ともフォーメーションに対して柔軟で、戦術的な思考を持っている。ベクトルは異なるが「あれはいいが、これはこれでいい」という考え方ができる。
こうしてみると「マッシモ以後の城福」という接続は意外に滑らかだ。

◯城福監督指揮下のチームは三度めとなる羽生直剛

マッシモ フィッカデンティ前監督に認められるべく懸命に走り、ポジションを獲得していった羽生直剛。その積み重ねのうえに、FC東京→ヴァンフォーレ甲府→FC東京と、城福浩監督と三度同じチームでプレーすることになる。前監督から得たものをことしに活かそうという意識が明確にある。

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