「スタンド・バイ・グリーン」海江田哲朗

【無料記事】【SBG探偵局】file1『息子の小学校入学』(2016/05/27)

■しっぽを探すんです

近頃の子どもは首から警報器をぶら下げている。あれを鳴らされたらひとたまりもない。ランドセルもカラフルだ。下校する小学生を物色しているなか、助手が言った。

「試合の日でもないのに、レプリカを着ている子はいないでしょう。しっぽですよ。しっぽを探すんです」
「しっぽ?」
「そんなことも知らないんですか。ドロンパのしっぽストラップ。FC東京の人気グッズです」
「あ、なるほど」
「ランドセルにぶら下げ、ファンであることを主張する。そういった小学生はいるかもしれません」

だが、待てど暮らせど、緑はもちろん、青赤を身につける子どもは現れない。探偵は近くでぶらぶらしていた男の子2人組に、「君さ、サッカー好き?」と声をかけた。

「うん、好きだよ」

クラスでFC東京とヴェルディ、どっちが人気あるの?

「ヴェルディ? 知らな~い」

ショックで口をぱくぱくさせている探偵。助手がさっとフォローに入った。「味スタには行ったことある?」。

「チケットもらって1回だけ。お父さんが教えてくれたんだ。2011年頃、チームがなくなっちゃったんだけど、みんなでお金を出し合ってまたつくったんだって。僕はサッカーより、卓球とバレーのほうが好き!」

そう言い残し、男の子たちは去って行った。おそらく、チームがなくなっちゃった話はヴェルディのほうで(2009~2010年の経営危機)、ごっちゃになっているようである。

ヴェルディを知らない子どもたち。

ヴェルディを知らない子どもたち。

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