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【無料記事】価値ある“消化試合”……ルヴァンカップ・グループステージ第5節・広島戦(H)マッチレビュー

 

▼2023JリーグYBCルヴァンカップ/Cグループ第5節

5月24日(水) 19:03キックオフ/ニッパツ三ツ沢球技場(2,754人)

横浜FC 1-0 サンフレッチェ広島

 

【得点】
29′ 横浜FC/ユーリ・ララ

 

リーグ戦の主力メンバーをそろえた広島を相手に、横浜FCは押し込まれる展開でスタート。セットプレーからのピンチが続く中、相手のシュートはギリギリで枠からそれてことなきを得る。我慢強く耐える横浜FCは、前半28分に相手のハンドから右サイドの深い位置でFKを獲得。坂本亘基が絶妙なボールをゴール前に送ると、これをユーリ・ララが頭で合わせ、ゴールの左隅へ。ファーストシュートで先制点を奪うことに成功した。

この得点から広島は勢いを失い、横浜FCは積極的に広島陣内に攻め込む。追加点につながるチャンスを作りながらもネットを揺らすことはできず、前半を1-0で終えた。後半はメンバーを入れ替えて息を吹き返した広島に再び攻め込まれるものの、徹底した守備と前線へのロングボールで攻撃を阻み、拮抗したまま時計の針は進む。

70分過ぎに横浜FCも交代カードを切り、小川慶治朗がピッチイン。83分にマテウス、新井瑞稀、86分に高塩隼生が投入され、試合はアディショナルタイムに。最後は三田がドウグラス・ヴィエイラに後ろから倒され一触即発となるも、直後に試合終了の笛が鳴り試合終了。リーグ戦でもルヴァンカップでも複数失点を許してきた広島をゼロで抑え、公式戦3連勝を手にした。

 

【選手交代】(横浜FCのみ)
72′ 近藤→慶治朗
83′ 武田→マテウス、カプリーニ→新井
87′ 坂本→高塩

 

 

▼価値ある“消化試合”

5月3日のJ1リーグ第11節・新潟戦前まで、横浜FCはリーグ戦未勝利の中でルヴァンカップを戦ってきた。4戦4敗とグループ最下位。すでにグループステージでの敗退は決定しており、横浜FCは“失うものは何もない”と言わんばかりのチャレンジングな布陣に振りきった。各ポジションに立つ選手たちを見て、「若手やいつもと違うポジションでの活躍が見られる!」とワクワクする一方で、「リーグ戦での良い波を保つためにも、どうか勝ってくれ!」という切なる願いが交錯した。

対するサンフレッチェ広島は、プライムステージ進出を決めるべく主力組が勢ぞろい。センターFWを務めるドウグラス・ヴィエイラとの因縁は深く、東京ヴェルディ在籍時代の2018年のJ1参入プレーオフでのアディショナルタイム決勝弾に始まり、J1に昇格した20年の最初の公式戦となったルヴァンカップ・グループステージ初戦、J1リーグ戦、昨季の天皇杯、そして今季4月のリーグ戦でもここ三ツ沢でゴールを奪われている、横浜FCにとってのトラウマ的存在……。

そんな一番の脅威である背番号9を相手に、今季ユースからトップ昇格したヴァンイヤーデン・ショーンは、公式戦初先発とは思えない堂々としたプレーを見せた。持ち前の193cmの体格を生かし、自分より10年以上プロキャリアを重ねる相手に物怖じせず対峙する、生え抜きの高卒ルーキーの頼もしさ。あのプレーオフを彼はスタンドから見ていたという。試合終了の笛が鳴り、膝立ちで力強くガッツポーズする姿は、彼がどれだけの思いで試合に臨んでいたかを物語っていた。

加えて、横浜FCゴールに幾度も迫ったエゼキエウと東俊希に対しては、本職ではないCBとして出場したユーリ・ララと右WBの近藤友喜が、正当なタックルやブロックも駆使しながらフィニッシュを制御した。

堅い守備を徹底した横浜FCは、火を見るより明らかな出場選手の経験値の差を乗り越え、ルヴァンカップ初勝利を勝ち取った。昨季の天皇杯での大敗から数えて“4度目の正直”に、指揮官からも「(直近のJ1リーグ戦の)川崎戦に勝ったときと同じくらい大きい勝利」と笑顔が見えた。

一方、広島にとっては必勝の態勢で臨みながら足元をすくわれた形。荒木隼人は「警戒していたセットプレーから得点を挙げられ、勢いを持って行かれた。押されている中でもセットプレーで得点を取れると非常に楽になる」と唇を噛んだ。

四方田修平監督の「全員が臆することなく果敢に戦ってくれた」という評価の前置きに、「リーグ戦でチャンスの少なかった選手が中心だったが」と話す通り、これまでのルヴァンカップでピッチに立ったメンバーは、何らかの理由でリーグ戦で控えに回った選手たち。いろいろな思いを抱えながらも、どうにか自身をアピールするために、全力のプレーを一人一人が体現してきた。そして、このグループステージ第5節に関しては、リーグ戦でチームが勝ちを積み上げ始めている中で“自分たちもやってやるんだ”という貪欲さがチームを一つにし、勝利をつかんだ。結果として価値のある“消化試合”となったと言えるだろう。

 

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