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前線の都倉賢。そしてサイドの攻防がカギ……J2第02節・長崎戦プレビュー

 

■今節の相手:V・ファーレン長崎

▼基本情報

11位/勝点1/0勝1分0敗/得点1/失点1
主な得点者:カイオ・セザール(1)
昨季の成績:J2で4位

 

▼前節の長崎は……

ホームで東京Vと1-1の引き分け。序盤から東京Vの前線からのプレスに苦しみ、高い位置でボールを奪われる場面が目立った、守備でも東京Vの巧みなパス回しを制限しきれず、苦しい展開に。しかし右サイドのクリスティアーノが起点となり、サイドから都倉賢へのクロスに活路を見出すと、CKから先制。最初に競った都倉、こぼれ球に反応したカイオ・セザールと、フィジカルの優位でもぎ取った。しかし東京VもCKから追いつく。ファーに流れたボールから、シュート性のクロスにうまく中で合わされた。後半途中までは東京Vが優勢に進めたが、強度が落ちた終盤は個の力で勝る長崎が猛攻。しかし東京Vの必死の守りに勝ち越しゴールは奪えなかった。

クレーべと山下諒也を投入して勝ち切った前節の横浜FC同様、終盤にエジガル・ジュニオや山崎亮平が出てくる選手層の厚さはやはり昇格候補。そういえばビクトル・イバルボはどうしてる?

 

 

 

■前線の都倉。そしてサイドの攻防がカギ

▼予想フォーメーション

▼最終ラインの人選に注目

とにかくまず脅威は都倉へのロングボール。前節も東京Vの最終ラインをかなり苦しめていた。東京Vの前線からのプレスにハメられていた長崎だが、プレスにハマりそうならロングボールを蹴ることはリスク回避としても上策。横浜FCの最終ラインは、攻撃時の能力優先で跳ね返す力はそれほど高くない。もしロングボールを前線に収められてしまった場合は、マンツーマンで前からプレスをかけているぶん、後ろは同数に近い状況のため一発でピンチになってしまう。自分たちのストロングを生かし、ウイークポイントをも隠せる手段を、長崎の松田浩監督が見逃すかどうか。

前節の大宮戦でも、2点リードされた大宮がロングボールを増やすと横浜FCは「明らかに嫌がっていた」(南雄太)のは事実で、2点を奪われあわや逆転されるところだった。横浜FCにとっては、割り切ってロングボール戦術に出られると、こちらのマンツーマン・プレスのストロングが出せずウイークポイントが浮き彫りになる。大宮の霜田正浩監督はロマンティストだから「相手が嫌がること」よりも「自分たちがやりたいこと」を優先したが、松田監督はもっと合理的なイメージがある。

それに対して四方田修平監督の出方はどうか。「(都倉の強さは)分かっていても抑えられない部分があるので、できるだけ自分たちがボールを持つ時間を増やすことでそういう機会を減らすことができれば」と、コメントはいかにもロマンティストだが、回数を絶対にゼロにはできない以上、そのリスクをどれくらい重大に見るかで対応は変わってくる。

最終ラインに高さのある高橋秀人を加え、岩武克弥を右CBに回す選択はあり得るだろう。高橋秀人もフィジカルが売りの選手ではないが、そうした相手への対処は豊富な経験からよく知っているはずだ。そしてハン・ホガンに出番があるならこういう相手だろう。果たしてベンチ入りはあるか。リスクを承知で前節と同じ最終ラインで臨むなら、四方田監督はロマン派であるのはもちろん、相当に肝の座った人物と見なければなるまい。

 

▼逆に長崎もCBは高さに乏しい

また長崎の右サイドハーフに入るクリスティアーノと、ボランチのカイオ・セザールも当然ながら脅威。クリスティアーノの突破力とクロス、193cmのカイオ・セザールの重戦車のようなフィジカルは、良い形でボールを持たせてしまえば1対1で止めるのは苦労するだろう。特にクリスティアーノといえば昨秋、アウェイ柏でものすごいミドルシュートをたたき込まれた記憶もあり、自由を与えると危険だ。できればこちらも攻撃でボールを持つ時間を増やし、高木友也が高い位置を取ることでクリスティアーノを押し込んでおきたいところだ。

しかし長崎が「クリスティアーノは高木に深くはついていかない」という選択をした場合、横浜FCは左サイドの攻撃は容易になるが、下手な奪われ方をするとカウンターでクリスティアーノが襲ってくることになる。それで高木の攻撃参加に迷いが生じては元も子もない。とはいえ長崎も高橋峻希が長谷川竜也と高木の二人を相手するのは避けたいはず。そこにボランチをもう一枚加勢させるのか、やはりクリスティアーノについていかせるのか……。この横浜FCの左サイド、長崎の右サイドの優位の取り合いが試合の重要なポイントになるはずだ。

ここまでさんざん「フィジカルでは分が悪い」と書いてきたが、逆に長崎もCBは高さに乏しい。東京V戦では171cmの村松航太と175cmの江川湧清がコンビを組んでいた。パスサッカーの東京Vがハイクロス勝負はしてこないと踏んだ選択だったのかもしれないが、ベンチに入っていた二見宏志でも179cmだ。こちらはフェリペ・ヴィゼウ185cm、小川航基186cm、そしてクレーべ187cm。キャンプから積み上げてきた、「ワイドを生かしたクロスからフィニッシュにつながるプレー」(四方田監督)という強みを出すには打ってつけだ。

長崎はエルゴラッソ記者による投票で今季のJ2優勝候補ナンバーワンに輝いた通り、[4-4-2]ゾーン守備戦術マスターとして知られる指揮官の指導力、選手の質ともにそれにふさわしいチームだ。しかし突け入る隙はある。自動昇格争いのライバルから勝点3を挙げて開幕ダッシュを決めたい。

(文/芥川和久)

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