「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

「4-2-3-1のほうがスムーズだね。いるメンバーの距離とキャラも合う」(中村俊輔) [練習試合ソニー仙台] +端戸インタビュー

 

【練習試合 ソニー仙台(JFL)戦 リザルト】

日時:2月23日(土) 11時~
形式:45分×2本
結果:1-0(0-0、1-0)
得点者:89分中澤佑二(マリノス)

【一本目】 【二本目】

 

まず残念なトピックからお伝えしなければならない。

Jリーグ開幕の一週間前といえば、昨年はマルキーニョスが腰痛で離脱したタイミングである。それまで練習試合でフル稼働していた助っ人ストライカーが患部を気にしながらピッチを後にした。その後、攻撃の核を失ったマリノスは開幕からリーグ戦7試合未勝利と苦しんだ。

そして今年の開幕一週間前、それと似た事態が起きてしまった。前半途中、富澤清太郎が右ひざを気にしながらピッチを退いたのである。右足で踏み込んだ際に痛みがあったようだ。試合後、早々に引き上げた富澤は厳しい表情でこう言った。

「けがをしていても100%に近いプレーができるなら問題ないけど、そうではない。ウチにはいい選手がたくさんいる。試合にはもちろん出たいけど、万全でないならピッチに立つ資格はない」

富澤の右ひざに異変が生じたのは、21日のジェフユナイテッド千葉との練習試合だった。ソニー仙台戦と同じように、右足で踏み込んだ際に違和感があった。一度はピッチを出たが、熱血漢の富澤はピッチへ戻り、最後まで練習試合に出場した。ソニー仙台戦も「全試合出たいから今日も出た」という強い気持ちでピッチに立ったが、わずか19分間の出場で自ら交代を名乗り出た。残り一週間の回復具合を見ての判断となるものの、開幕戦出場は難しいかもしれない。それでも短い出場時間にとどめて悪化させなかったのが“不幸中の幸い”である。

けがの箇所こそ違えど、左足首を痛めている齋藤学の起用に慎重になっているのも樋口靖洋監督なりの工夫と言える。ソニー仙台戦では2本目の途中からの出場で、時間にすると約20分にとどめた。患部の状態が万全ではないため、悪化するリスクを考えての出場である。それは齋藤自身も理解しており、試合に出たいという気持ちを抑えつつ、「コンディションを考えてくれているのだと思う」と慎重に話している。小野裕二が移籍したことでドリブルでボールを運べる選手は齋藤のみ。替えが利かない存在だからこそ、離脱期間を長引かせるわけにはいかない。つまり“大切”に扱っているというわけだ。

富澤はもちろん、齋藤も開幕戦はスタメンでピッチに立たない可能性がある。だが、それはあくまで長いシーズンを見据えた“やりくり”と考えるべきだろう。プレシーズンの段階で無理をするのはナンセンスで、シーズン34試合ある中で無理をして開幕戦に強行出場する必要もない。指揮官の判断はおそらく正しく、主力選手と控え選手の能力差を鑑みたときの妥当なマネジメントと言える。

スタメンの誰かが欠けた事態を想定しての采配こそが、藤田祥史を前線に組み込んだ[4-4-2]だ。ソニー仙台戦の前半は千葉戦と同じフィールドプレーヤー10人がまったく同じ布陣で並んだ。しかしながらチーム全体の低調だったせいもあり、この日の藤田はまったく存在感を発揮できなかった。シュート0本に終わり、マルキーニョスとのコンビネーションも皆無に等しい。千葉戦ではゴールという目に見える結果を残したが、この日はそういった類のアピールもなかった。

対照的に、ある一定のアピールに成功したのは1本目の38分から藤田に替わって出場した端戸仁である。1本目の残り数分は2トップの一角に入ったが、後半は[4-2-3-1]の右MFとして出場。マルキーニョスや中村俊輔、あるいは後から入った齋藤と良質なコンビネーションを見せた。得点こそならなかったがゴールの匂いを感じさせるプレーは多々あり、相手がJFLのチームであることを差し引かなければいけないとはいえ、持ち前のキープ力や攻撃センスを見せた。それを誰よりも喜んでいたのは樋口監督だった。

「(端戸は)キャンプではあのポジションで迷子になっていた。今日もう一度トライしてみて、一番の収穫だった。思った以上にあのポジションで機能した。(今後も)トライする価値はある」

チームとしても[4-2-3-1]の機能性は捨てがたいものがあった。この日の前後半だけを見てもそれは明らかで、システムに対する慣れや成熟度には明らかな差がある。[4-4-2]ではFWの運動量が少ないこともあり守備が機能しない。攻撃でも中村のポジションが下がりすぎる傾向があり、前線に人数をかけられない。逆に[4-2-3-1]では守備の役割が明確となり、攻撃では中村が高い位置でボールに絡み、決定的な仕事をする。ソニー仙台戦でのチャンスはすべて中村から生まれたといっても過言ではなく、マルキーニョスや端戸に良質なパスを供給しつつ、自身が相手GKと1対1になる場面もあった。

そんな中村の好パフォーマンスにつられるように中町公祐も見せ場を作った。「シュンさん(中村)が真ん中にいてくれると、ボールを出しやすいし、自分も上がりやすい」と歓迎するように、システム変更後は高い位置で攻撃にアクセントを加えた。中町が上がった際には富澤と代わった小椋祥平が全体のバランスを気にかけながらプレーし、ファーストボランチの代役にもどうにか目処が立った。本来は自らボールを奪いに出る積極性がウリなのだが、富澤不在で中町と組んだ場合は小椋が我慢するしかない。この小椋の立ち回りについても樋口監督は「ゲームの状況によってはバランスを見ることも必要。それを意識してプレーしてくれた」と及第点の評価を与えていた。

開幕前に主力組がプレーする対外試合はこのソニー仙台戦で最後となる。ここまでに明らかとなった素材と情報を総合して考えて浮かび上がってくるのは、昨シーズンのベースを元にして欠けたピースをどうにか埋めるのが最善策という事実である。中村は言う。「[4-2-3-1]のほうがスムーズ

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