「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

今年のチームは若い。初戦を勝利で飾ったことは自信となり、次へのモチベーションになる。[タイキャンプレポート(バンコク戦レビュー)]

まずは2017年の船出を勝利で飾ったことを喜びたい。始動から9日目と間もないためコンディションが整っているはずもない。個々のパフォーマンスだけでなく、チームとしての機能性にも期待するほうが難しい。そんな状況下でも、いまできる最高のパフォーマンスを発揮して勝利を目指す。それがプロとしての姿勢であり、チームだ。

 そして今年のチームは若い。練習風景を眺めているだけで分かることなので、キャンプ終了後やシーズン開幕後でも時間が許すのならば練習を見ていただきたい。もうすぐ39歳になる鉄人・中澤佑二こそ健在だが、30代の選手はそのほかに栗原勇蔵、中町公祐、そしてGK飯倉大樹の4選手のみ。彼らは経験と実績を兼ね備えているが、他の選手は違う。だからこそ初戦を勝利で飾ったことは少なからず自信となり、次へのモチベーションになる。

試合は相手があって初めて成り立つもので、マリノスだけの事情では成立しない。対戦したバンコク・ユナイテッドはお世辞にも強いチームではなかった。スタイルはとてもオーソドックスで、シンプルにボールをつないでくる戦い方。個々の能力が高くないため、同じシステムで同じようにボールをつなげば、当然マリノスのほうが実力上位である。スコアや内容はともかく、勝利は必然だった。

この試合で3ゴールはいずれも素晴らしい形だった。1点目は中島からのグラウンダーパスを「ゴールが決まるときはファーストタッチが上手くいく」と話していた富樫敬真が巧みなターンで前を向く、左足のフィニッシュも実に落ち着いていた。依然としてフィニッシュ以外には課題も多い選手ではあるが、少ない決定機を確実にゴールに結びつける決定力はチーム随一。プレータイムさえ確保できれば二桁得点も十分に狙える。

 

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2点目は新加入の扇原貴宏が鋭いくさびのパスを打ち込み、富樫が落としたところを中島賢星が力強く叩いて決めた。相手GKの虚をつくミドルレンジからのシュートとはいえ、あの距離をグラウンダーで決められるのはフィジカル能力が高くなければできない。中島は前半ボランチ、後半はトップ下でプレーした。前述したように相手のレベルには疑問符が付くが、自由にプレーできる環境なら力を発揮できる。プロ3年目で確実に伸びており、あとは公式戦で結果を出したい。この試合でのゴールが大きな一歩目になるだろう。

決勝点となった3点目を決めたのは、レンタルバックで復帰した仲川輝人である。扇原から出た相手ディフェンスライン裏を突くパスは、コースもタイミングも絶妙だった。「完璧なパスがきた」と仲川。DFを置き去りにするスピードは健在で、GKの位置を見極めたループシュートも技ありだ。それぞれの特徴が組み合わさったパーフェクトなゴールと言えるだろう。

リードしているにもかかわらず、不用意なファウルからの直接FKと、セットプレーからの流れでクロス対応を誤って失点したことは反省材料でしかない。若いチーム特有の勢いに任せたところも多分にあり、大人のサッカーとは言い難い。ただ、今の時点でそれを求めるのは酷というもの。徐々にチームとしての成熟度が増し、勝つことで自信をつけなければ大人の風格など醸し出せない。

中1日で行われるスパンブリー戦でも選手をローテーションさせながらゲームを進めるだろう。1試合目とはプレータイムが変わり、ポジションが異なる選手もいるはず。その中で選手個々が持っている能力を把握するのが目的だ。タイキャンプを締めくくる有意義な二歩目に期待したい。

 

 

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