「ザ・ヨコハマ・エクスプレス」藤井雅彦責任編集:ヨコハマ・フットボール・マガジン

勝つためのポイントを絞り、選手をローテーションさせる、その最適解が「4-1-4-1」 [2nd11節仙台戦レビュー]

 

5連戦の最後を見事な勝利で締めくくった。疲労困ぱいの中で勝ち点3をもぎ取ったことには大きな価値がある。

 今シーズンはここまでけが人続出という悩みを抱えず戦えていた。だが連戦を迎えるこのタイミングでアクシデントが相次いだ。以前から離脱している中村俊輔と下平匠に加え、ファビオと喜田拓也にレスキューマークが点灯した。レギュラークラスを4選手欠き、チーム編成が難しい状況に追い込まれてしまった。試合後、エリク・モンバエルツ監督が「フィールドプレーヤーは17人くらいしかいない。そのメンバーでこの連戦を戦い抜くことができた。だからあまり交代の選択肢はない」と話したのは言い訳ではなく、紛れもなく事実だ。

そんな状況下で指揮官が選択したのは、今シーズン初めての[4-1-4-1]システムである。試合前日の時点で「いかにボールを奪うか」とポイントを話していたが、中2日のトレーニングでその全容を知る術はなかった。中盤はパク・ジョンスをアンカーに配置し、その前に水曜日の天皇杯に出場しなかった兵藤慎剛と負傷明けながらフレッシュな中町公祐を並べた。右ウイングにはマルティノスではなく前田直輝を起用し、左SBは新井一耀を抜てきした。勝つためのポイントを絞り、選手をローテーションさせながら最適解を探す。いかなる状況でも勝利の可能性を追い求めるフランス人指揮官らしい大胆な采配だった。

モンバエルツ監督にとって、このシステムがぶっつけ本番になったことは大きな問題ではない。実はこの布陣、以前から採用する可能性があった。それは大宮と対戦したルヴァンカップ準々決勝第1戦でのこと。アウェイゲームということもあってか、この日のようにパクをアンカーに置き、その前に喜田拓也と天野純を並べる構想があった。しかし、パクは体調不良によって試合欠場を余儀なく、このプランもお蔵入りとなった。

 

 

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試合前にも述べたように、マリノスの強みは即興性にある。新システムが抜群の機能性を発揮したわけではないが、チームのリズムを大きく崩す心配もさほどなかった。何よりチームには経験と耐久力ある選手が数多くいる。GK榎本哲也に久しぶりにあまり仕事がやってこなかったのは、主に最終ラインの選手たちが最後まで体を張ってシュートコースを消したからである。今季から加入した新井やパクにも、マリノスのアイデンティティは確実に受け継がれていることがわかった。

攻撃の核となる齋藤学は「疲労があるのはわかっていて、その中で戦術的にはよく我慢して戦えたと思う」と振り返った。この我慢こそが最大の勝因で、前半をスコアレスドローで折り返すプランも明確にあった。それを迷いなく実行できたのは、指揮官がわかりやすいメッセージとして[4-1-4-1]を採用したことと無関係ではない。戦術的な成否よりも、90分間の戦略を伝えることも狙いの一つとしてシステム変更したのなら、大正解だった。

前半しっかり耐え、後半に入って少しずつ中盤に生まれたスペースを活用し、さらにカウンターでフィニッシュに持ち込む。そんな流れから兵藤がこぼれ球を豪快に叩き込んだのは決して偶然ではない。その1点を守りきり、マリノスは今季のベストゲームを完結させた。

 

 

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